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臨床医学各論ノート04「運動器疾患」

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1.関節疾患
■1)化膿性関節炎(あまり重要でない)
・関節の細菌性炎症を起こす疾患。
・細菌の由来:血行性(扁桃等)、近隣の骨髄炎、外傷等
・起因菌:連鎖状球菌・ブドウ球菌が主となる。小児では股・肘関節に好発。
*・関節面の癒着強直防止のため救急治療を要する(重要)
抗生物質の投与、ドレナージ(排膿)、早期からの運動療法が必要。

■2)結核性関節炎(参考)
・結核性関節炎は二次性であって、主として肺病巣からの菌の血行性転移によって生じる
 滑膜型=滑膜に直接感染を惹起するもの。
 骨型=骨端あるいは骨幹端に初発した結核性骨髄が関節内へ波及するもの.こちらの方が多い。
・好発部位は ー 股、膝、足、仙腸、肩、手関節の順である。
90%は単関節炎型である。
・臨床的分類
水腫型=病状の初期で漿液性関節炎である。
肉芽型=滑膜が肥厚し、肉芽が関節軟骨を侵したもの。
膿瘍型=乾酪化、軟化が起こったもの。
・症状
主なものは関節の痛み、腫脹、可動制限、早期に筋萎縮をきたす。
関節破壊に応じて形態の変化をみるが、骨膜反応は軽微である。
・治療
保存療法 ー SM、PAS、INAHなどの三者併用療法
手術療法 ー 関節穿刺、排膿、洗浄、病巣郭清術、時には関節固定術も行われる。

■3)痛風
(1)概念(重要)
 急性あるいは慢性関節炎の形で関節障害を来す疾患で、コラーゲン・ムコ多糖類を多く含む組織に尿酸ナトリウムが沈着し発症する。
その原因は高尿酸血症である。
★血中尿酸値の正常値、男性=7mmg/dl、女性=6mmg/dl(覚える)
(2)誘因(重要)
高プリン食(肉汁・豆類・ほうれん草等)、アルコール、重症感染症、輸血、血液の破壊、放射線療法、薬剤(利尿薬・サリチル酸・インスリン)
中年以降の男性に多い。小児や閉経期前の女性には発症しない。
(3)症状
 第1期:無症状期、高尿酸血症の時期
 第2期:急性発作(痛風結節)の出現、発作は非常に強い痛みを多くの場合第1趾MP関節に、次に足関節に来たし発赤・腫脹を伴う。
まず、感冒様の発熱で始まり、白血球増加、核の左方移動、グロブリン増加を呈する。
CRP陽性、血沈亢進、食欲不振、多尿を来す。
発作は2~3日で緩解する。
痛風結節は、耳介軟骨・手指・肘頭部・アキレス腱部にも好発する。
第3期:痛風発作を繰り返し、その間隔は次第に短くなり、自然寛解に時間がかかる。
第4期:関節の変形・機能障害を呈する。
(4)合併症
腎障害、結石、高血圧、動脈硬化、糖尿病、心筋梗塞、時に尿毒症等
(5)治療
食事療法 ー 低プリン体食(臓物・肉エキス・いわし・数の子等は控える)
薬物療法 ー 副腎皮質ステロイド
 注)ピロリン酸カルシウムによる結晶性滑膜炎を偽痛風という。
老人の膝半月板・硝子軟骨・滑膜・腱・靱帯等にも沈着する。

2.骨系統疾患
■1)骨粗鬆症
(1)概念
正常の組成のまま、骨の絶対量が減少した状態。骨量と骨強度の減少した状態。
非外傷性の骨折を起こしたり、起こす危険性のある程度まで骨量が減少したものを骨粗鬆症と理解されている。
(2)病理
 皮質骨では皮質幅が薄くなり、海綿骨では骨梁の数と大きさが減少する。
骨梁の減少は、骨の形成と吸収が負の平衡のために起こる。
骨質の占める面積が正常の16%以下になると骨粗鬆症と言える。

(3)原因による分類
①内分泌性骨粗鬆症:上皮小体機能亢進症・甲状腺機能亢進症・性腺機能低下症・クッシング症候群等
②退行期骨粗鬆症:骨質量は30歳代を頂点として以後男女ともに減少する、
老年性骨粗鬆症=男子では70~80歳になると骨粗鬆症と言える。
閉経後骨粗鬆症=女性では閉経後急速に骨質量が低下してくる。
③栄養性骨粗鬆症:吸収不良症候群、胃切除、糖尿病等
④遺伝性疾患:骨形成不全症、ホモシスチン尿症等
⑤不動性骨粗鬆症:長期の臥床、神経麻痺等

(4)病態生理による分類
①低回天性骨粗鬆症:骨吸収も骨形成も共に減少しながら骨量が減少してくるもの。
老年性骨粗鬆症・閉経後骨粗鬆症
②高回転性骨粗鬆症:骨吸収も骨形成も共に増加しながら骨量が減少してくるもの。
甲状腺機能亢進症
(5)症状
脊椎の圧迫骨折・大腿骨頚部骨折等が多い。
楔状椎・偏平椎等を生じる。
腰背痛・脊柱後彎症・低身長・易疲労性・橈骨下端骨折(コレス骨折)が多い。
(6)治療
予防としてCa製剤・ビタミンD製剤・エストロゲン・蛋白同化ホルモン等が使用されている。

■2)くる病・骨軟化症
(1)概念
成長過程にある骨の石灰化障害にもとづいて発生する骨病変である。
骨端軟骨の閉鎖以後に生じた場合は、骨軟化症という。
(2)原因
ビタミンDの供給不足、日光曝露不足、ビタミンD吸収低下、リン欠乏、低ホスファターゼ、骨基質形成障害
(3)症状
不機嫌、不安、不眠、発汗、蒼白な皮膚、筋弛緩、易疲労。肝脾腫大、泉門閉鎖遅延、頭蓋癆をみる.
長期間持続すればX脚・O脚等の骨変形をきたす.
(4)検査
血中無機リンは減少し、アルカリホスファターゼ値が上昇する。
(5)治療
ビタミンD投与、日光浴を実施する。

■3)骨肉腫
(1)概念
腫瘍細胞が直接類骨あるいは幼若な骨を形成する能力を有する悪性腫瘍である。
原発性骨悪性腫瘍中もっとも発生頻度の高い腫瘍である。
(2)疫学
男女比=3:2
好発年齢は10歳代で、とくに15~19歳に好発する。
好発部位:大腿骨遠位骨幹端(約半数例)、脛骨近位側、上腕骨近位側、腓骨頭部等、その他骨盤・脊椎等。
(4)症状
最初、運動時痛であるが、次第に自発痛となり、局所の腫脹を伴うようになる。
隣接関節の可動性制限。下肢発生例では疼痛性跛行等を生ずる。
(5)検査
アルカリホスファターゼが高値を示す例が多い。
(6)治療
四肢発生例では切・離断術が適応とされていたが、腫瘍の大きさ、年齢、化学療法の効果など、条件によっては広範切除術が適応となる例が増加している。
全身的には肺転移や骨転移など遠隔転移の防止を目的として強力な補助化学療法を行う。
手術不可能な部位に対しては放射線療法を行う。
(7)予後
不良であるが、強力な補助化学療法の導入により、次第に生存率の向上がみられるようになった。

3.筋・腱の疾患
■1)腱鞘炎
(1)概念
腱鞘滑膜に反復して過剰な摩擦が加わることにより漿液性の炎症を起こしたもの。
(2)分類(重要)
ア、轢音性腱鞘炎:手をよく使う人で、長短母指伸筋・棟側手根伸筋の腱鞘に炎症がみられることが多い。
イ、狭搾性腱鞘炎
①ドゥケルバン病:長母指外転筋腱と短母指伸筋腱が手関節背側を通る部分に生ずる狭搾性腱鞘炎である。
タイピスト・銀行員・ピアニスト・大工・中年の女性に多い。
橈骨茎状突起部痛・母指手関節の運動困難、強く物を握れない等。
 フィンケルシュタインテスト陽性=母指を中にして手を握らせ、他動的に手関節を尺側に屈曲させると激痛を訴えるもの。雑巾絞り・ドアのノブをまわす等で痛みが出現する。
☆フィンケルシュタインテストは重要
②ばね指(弾撥指):指のIP関節の屈伸がスムーズでない状態。
(3)原因
指屈筋腱の近位端のMP関節レベルにおける狭搾性腱鞘炎である。母指・中指・薬指に多い。小児は母指が多い。
過労やリウマチ性疾患が原因となる。
(4)症状
IP関節で伸ばそうとすると弾発的に急に伸びたり曲げるときに急にぐっと曲がったり、曲がったまま伸びなくなったりする。

■2)筋膜炎(参考)
1)好酸球性筋膜炎
(1)概要
・1974年に報告され、1975年に命名された強皮症類似疾患である。
・急激な運動などを誘因として、四肢に対称性有痛性腫脹を生じた後、同部に表面凹凸不整のびまん性皮下硬化をきたし、近傍関節の屈曲拘縮を伴うようになるのが典型的経過である
(2)検査
末梢血好酸球増加および高γグロブリン血症がみられ、
筋膜・筋まで含めた皮膚生検により、特徴的な筋膜肥厚、好酸球浸潤を認めることで確定診断できる。
注)通常強皮症と異なり、食道、肺病変などの内臓病変はみられず、また副腎皮質ホルモン全身投与に対する反応は良好である。

2)壊死性筋膜炎(参考)
☆急に発生した恐ろしい病気として扱われた時期があった
(1)概要
急激かつ重篤な経過をたどる、皮下組織から浅筋膜における壊疽性の急性細菌感染症である。
(2)原因菌
溶血性レンサ球菌が多い、他に黄色ブドウ球菌、グラム陰性桿菌、嫌気性菌等。混合感染の場合も多い。
糖尿病・悪性腫瘍などの基礎疾患を有している患者に起こりやすく、宿主側の免疫能低下なども関係する。
感染経路は外傷などによるが不明なものも多い。
(3)症状
下肢に好発し、突然高度の発赤、腫脹を生じ、
次いで大水疱、壊死性変化をきたす.発熱などの全身症状を伴う。
15~30%の死亡率が報告されている。
(4)治療
できるだけ早期に強力な抗生物質(ペニシリンなど)全身投与と壊死組織除去手術を行うことが予後改善のために重要である。

4.形態異常
■1)先天性股関節脱臼(LCC)(重要)
(1)概念
出生時に大腿骨頭が関節包をつけたまま寛骨臼外へ脱臼しているものをいう。
女児が男児の5~9倍の発生率である。
注)発育性股関節脱臼と称する傾向にある。
(2)原因
遺伝的素因、母胎エストロゲン(関節靱帯弛緩ホルモン)分泌上昇、力学的因子(骨盤位分娩児=逆子 に多い、昆布巻きオムツ等、出産時の股関節・膝関節の急激な進展)
(3) 病理
寛骨臼は浅く、臼蓋の発達が悪く、急峻な傾斜をなす。大腿骨頭は後外側に脱臼し、体重負荷が加わる頃になると原臼より上部に偽寛骨臼が形成。
(4)症状(重要)
①乳児期
 ア、大腿内側皮膚溝の非対称
 イ、下肢の短縮
 ウ、開排制限:90゜股関節屈曲位で下肢の外転制限
 エ、クリックサイン(オルトラニー徴候):他動運動により、脱臼音や整復時のクリック音を触れるもの。
 オ、バローテスト:他動的に脱臼の整復や脱臼をさせれるもの。
カ、テレスコーピングサイン(デュピュイトラント徴候):下肢を引き下げたり引き上げたりすると、大腿上端の異常な上昇や下降が触知される。
キ、恥骨結合間異常開大の証明
ク.スカルパ三角の空虚
注)スカルパ三角 = 鼠径靱帯、縫工筋、長内転筋内縁により囲まれた三角、
ケ.大転子高位
②幼児期
ア、処女歩行の遅延及び跛行
 イ、トレンデレンブルグ徴候:患側肢で片脚起立をしたとき、対側の骨盤が沈下するのが、患者後面から観察される。両側性ではアヒル歩行となる。
ウ、腰椎前彎増強:両側股関節脱臼でみられる。
エ.開排制限 
オ.下肢短縮 
カ.大転子高位
(5)治療
ア、1歳未満: パブリック法といわれるリーメンビューゲル装具(あぶみ式つりバンド)の装着によりほとんどが治癒する。
牽引や徒手による整復の後短期間ギブス固定しリーメンビューゲル装具を用いる。
イ、1歳以上:リーメンビューゲル装具単独では整復が困難となることが多い。
牽引、麻酔下における徒手矯正、ギブス固定、観血的整復術、骨切り術、臼蓋形成術、関節形成術等が行われる。

■2)先天性筋性斜頚
・一側の胸鎖乳突筋の拘縮によって生ずる斜頚で、生後1~2週で胸鎖乳突筋の腫瘤と斜頚位に気づかれる。
・首は患側に側屈し健側に回旋する、
注)3大先天性奇形 = LCC・先天性内反足/先天性筋性斜頚
(2)原因
胎内の異常環境と出生後の頚部にかかる負荷のため一側の胸鎖乳突筋に過伸展損傷が起こり、ここに修復性肉芽組織が形成され拘縮が起こると考えられている。
骨盤位分娩児(俗に逆子)に多い。
わが国における頻度は0.3%程度である。
(3)治療
かつては矯正マッサージを継続することが必要と考えられていたが、現在ではそれは有害とされており、約86%の症例では放置しても自然治癒すると考えられている。
生後数ヶ月は斜頚枕・砂嚢等により頭部を矯正に保つ。
1年後に治癒しない症例に対しては腱切り術を行う。

■3)先天性内反足
・LCCに次いで多い先天性疾患。
・男子は女子の約2倍、両側性のことが多い。
・尖足、踵内反、凹足、前足内転の複合したもの。
(2)治療
生後出来るだけ早く開始する。徒手矯正御ギブス固定を行う。
再燃可能性が高いので学童期まで経過観察を行う。

■4)扁平足
・足の内側縦方向の足円蓋(主に踵骨・距骨・舟状骨楔状骨・第1中足骨から成るアーチ)が扁平したものをいう。多少とも踵外反変形を伴っている。
・足円蓋の低下でも主として横足弓が低下したものを横軸扁平足という。

■5)側弯症
(1)概念
脊柱が前頭面において異常に彎曲した状態をいう。
脊柱の側方への湾曲と捻れを示す変形。
(2) 分類
 ア、先天性側彎:椎体奇形による(半椎・楔状椎等)
イ、後天性側彎症
①原因の明かな後天性側彎症
原因:ポリオ罹患後・脊髄空洞症・クル病・脊椎カリエス・胸郭成形術後等
②特発性側彎症
構築性側弯・非可逆的な側弯。全側彎症の70%~80%を占める。思春期の女性に多い。
 注)神経性(麻痺性・痙攣性)、習慣性、疼痛性という分類もある。
症状
多くは、胸椎部で右凸の側彎と右への捻転を生じ、右背部が膨隆する、腰椎は代償性に左へ凸の側彎を呈する。
胸郭の変形により肺活量が低下し、心肺機能の低下をきたす例もある。
肋骨隆起・腰部隆起・肩胛骨の後方突出・肩の高さと腰部三角の非対称。背痛・易疲労性等。
(3)治療:軽症では固定と矯正、高度では手術療法

■6)外反母趾
(1)概念
母趾(第1足指)が中足趾節関節で外側(腓骨側)に屈曲するものである。
変形が高度になると、第1中足骨骨頭部の突出部に強い痛みを生ずる。
注)この変形は欧米人に多く日本人には少ないとされてきたが、近年日本人にも増加の傾向がみられる。
その理由は、日本人の生活が洋式化されて靴をはくようになったためと考えられている。
(2)発症要因
先端のせまい靴によって足の先端部が左右から圧迫されること、足の内在筋の弱化があげられている。
(3)症状
骨格変化:第1中足骨の内反、母趾趾節骨の外反が認められるとともに、足の横のアーチが減少する。
内側骨突出部の皮下にバニオン(腫脹した滑液包)が生じ、疼痛や発赤を生じてくる。
変形の進行により、母趾が第2趾の底側に入り込み第2趾の内・底側に胼胝を形成する。
(4)治療
軽症のものには、足袋(たび)や矯正装具が使用される。
進行したものに対しては、骨切り術や腱形成術などの手術が必要となる。

5.脊椎疾患
*■1)椎間板ヘルニア
(1)概念
 椎間板の退行変性のため、線維輪を破って髄核が外へ押し出されたもので、外側方へ隆起状に飛び出すために、神経根や脊髄を圧迫し、炎症浮腫を起こすために臨床症状を示すもの。
下部腰椎に最も多くついで頚椎に多く発生する、
 胸椎では殆ど見られない。

1)頚椎椎間板ヘルニア
 好発部位:C4以下の下部頚椎に多くみられる。C5・6、C6・7、C4・5間の順に多い。
(1)症状
ア.頚痛(咳等で増強)と運動制限がみられる。
 イ.根症状
肩から手に放散する上肢の痛み・しびれ・感覚鈍痲・脱力・筋萎縮がみられる。
ウ.脊髄圧迫症状(ミエロパチー)
痙性不全対麻痺・病変部以下の感覚障害膀胱直腸障害がみられる。
 エ.神経根伸展テスト(ジャクソンテスト、イートンテスト)が陽性となる。
(2)治療
カラー等の装着(局所の安静と固定の為)
薬物療法:鎮痛剤・筋弛緩剤の使用。
外科手術:疼痛の持続、麻痺の進行に対して椎弓切除術や前方固定術。

2)腰椎椎間板ヘルニア 
 好発部位:L4~5、L5~S1、L3~4間で発症。
 好発年齢:20~40歳代の男性に多い
(1))発生機序
椎間板変性による線維輪の亀裂・断裂・傍流の存在。
椎間板内の高い内圧の存在。
(2)症状
腰痛と坐骨神経痛が最も頻発する症状である。
 ア.腰痛
 咳くしゃみで増強、背筋の緊張増加、脊椎の前彎消失、疼痛性側彎の出現、
ヘルニア周辺部に圧痛がみられる。
腰痛と下肢痛は数周の間隔で増悪と寛解を繰り返し、漸次固定性となっていく。
棘突起の叩打痛の出現。
イ.坐骨神経痛
 坐骨神経の経路に沿って痛みが放散する。
感覚鈍痲・異常感覚・脱力を伴うことあり。
・L3~4間(L4神経根圧迫)ヘルニア
 膝蓋腱反射低下又は消失・大腿四頭筋筋力低下、下腿内側の知覚障害の出現。
・L5~S1間ヘルニア
 アキレス腱反射の低下又は消失、ラセーグテスト陽性、腓骨筋・下腿三頭筋筋力低下、足部外縁・足底の知覚障害。
・L2~3間やL4~5間のヘルニア
 大腿神経伸展テストが陽性となることがあり。また前脛骨筋・長母指伸筋の筋力低下、下腿外側・足背の知覚障害
 注)中心性ヘルニア(完全脱臼が起こり、馬尾を強く圧迫するようなもの)では、膀胱直腸障害・下肢筋群特にL5・S1神経根支配筋の完全弛緩性麻痺を招来することがある。
注)10代の椎間板ヘルニアでは、痛みは成人に比べて軽いが、SLRや下肢筋群の拘縮は強い。
(3)治療
急性期:安静(固めの布団に寝かせる)、鎮痛剤や筋弛緩剤の投与。
急性期後:コルセットの装着、温熱療法、牽引療法等、外科手術(ヘルニアの摘出術・椎弓切除術・脊椎固定術等)。

■2)後縦靭帯骨化症
(1)概念
後縦靭帯の異所性骨化が生じるため、脊柱管狭搾が生じ、脊髄の圧迫症状をみる疾患。
頚椎・胸椎・腰椎の順に好発する。日本を初めとしてアジア地方に多い。
頸椎部の発生では上肢の筋力低下が目立つ。
頚椎部の発生は男子に、胸椎部の発生は女子に多い。
発生年齢は50歳以上の高齢者の男性に多い。
(2)原因 
脊椎の骨増殖性疾患の一つ
糖代謝異常・成長ホルモンその他の内分泌系障害
HLA抗原・局所的因子等
(3)症状
頚椎の単純X線像で椎体後縁から1~2mm離れた後方に棒状または帯状の石灰化像が認められる。
 後縦靱帯は脊柱管腔内に存在するので、骨化・肥厚は脊椎管腔を狭小化し、脊髄圧迫となる。
 骨化が脊柱管腔の40%に至ると脊髄症を呈する、 あるいは神経根症を呈するようになる。
頚髄症 = 上肢のしびれ、頚肩部のこわばり・鈍痛、横断性脊髄障害症状(痙性不全四肢麻痺・感覚障害・膀胱直腸障害)、ブラウン・セカール型の脊髄症状を呈することもある。
胸髄症 = 感覚障害を伴った痙性対麻痺
(4)治療
 脊髄の圧迫に対して除圧手術が有効である。

■3)脊椎分離症
(1)概念
 椎弓の上関節突起と下関節突起の中間部の骨性連絡が断裂する疾患である。
 L4・L5などの下部腰椎に多く発症。
 前半部(椎体・上関節突起・椎弓根・横突起)と後半部(下関節突起・棘突起)に分離する。
本邦では健常成人の約8%内外に存在する。
(2)原因
 先天的素因を基盤に、過度のスポーツなどの外因が関与して発症する。
分離部は組織学的には線維組織が介在し骨折に於ける偽関節に似た所見を呈する。
(3)症状
 無症状のものも多い、腰痛・殿部痛・大腿部痛等を訴える。
 また腰部筋緊張・運動制限がみられる。
(4)治療
 安静、軟性コルセットの装着。薬物療法、手術療法等。

■4)脊椎分離すべり症
(1)概念
 脊椎分離症の存在する例で、分離脊椎の前部がその下部椎体に対して、前方へすべり出した状態である。
10歳頃より進行し、20歳以降はすべりの進行はみられないといわれている。
ほとんどがL5に発症する。
(2)分類
①無分離すべり症
 下位椎骨の椎体に対して上位椎骨の椎体が前方に滑るもの。
L4・L5間に多く、中年女性に多い。
②分離すべり症
その基盤に分離症が存在するもの、
腰部の不安定感。L4・L5間に多い。
(3)症状
腰痛・殿部痛・大腿前面への放散痛などを訴える、これらは起立・歩行などで増悪する
 坐骨神経痛の出るものもある。
 脊柱管狭搾症の症状呈するものもある。
 起立・歩行により下肢のしびれ、脱力を生じ、
 身体を前屈したり、腰をおろして休むと軽快する。
すべりの著明な例では、棘突起列が階段状変形をなしその上部は陥凹を呈してくる。
(4)治療
脊椎分離症に同じ。

■5)脊柱管狭搾症
(1)概念
脊柱管が先天性ないし発育性に狭小であったり、後天性に狭小化したもので、種々の疾患にみられる病態である。
 腰椎部,ついで頚椎部に多い。

1)頸部脊柱管狭窄症
(1)原因
発育的狭窄:先天的な狭窄に椎間板の後方隆起が加味。
動的狭窄:椎間板の変性(頸椎胃伸展時に、上位椎が後方へすべることにより狭窄が生じる)
40歳以降に多い。
(2)症状
圧迫性脊髄症 : 手指のしびれ、手指の巧緻運動障害、痙性歩行、下肢・体幹のしびれ、筋萎縮、膀胱・直腸障害等。

2)腰部脊柱管狭窄症
(1)原因
先天性発育不全狭搾症:椎弓根間距離短縮、椎弓・椎間突起の肥厚
後天性狭搾症:脊椎分離・すべり症、椎間板ヘルニア等による。
(2)症状
馬尾神経性の間欠性跛行:下肢痛・感覚異常・脱力を伴う。単に休止しただけでは回復せず、座位ないし臥位で腰椎前彎を減少させると回復するのが特徴的である、逆に腰椎前彎を増強させると症状は増悪する。
 会陰部の灼熱感、歩行時等の陰茎勃起が見られる。
神経根刺激症状としての腰痛・下肢放散痛の出現。
 膀胱直腸障害を見ることもある。
注)胸椎部に於ける脊柱管狭窄症では、圧迫を受けるのは脊髄であるために、歩行に よるしびれの出現よりも、下肢の脱力の方が顕著となる。
(3)治療
腰椎屈曲位をとらせるコルセットの着用、硬膜外ブロック、椎弓切除術。

■6)脊髄空洞症
(1)概念
 脊髄中心管近辺に空洞を生ずる疾患である。空洞周辺にはグリア細胞の増殖が著しい。
好発部位は下位頚髄から上部胸髄、時に延髄に広がることもある(延髄空洞症)。
(2)症状
①初期症状
頚部・肩の根性疼痛、一側上肢尺側の温・痛覚低下、同側小指筋の筋力低下と筋萎縮。
②特徴症状
・障害髄節に一致した解離性感覚障害である、これは、温痛覚は低下するが触覚は保たれているもの。
・空洞の拡大により前角が侵されると、上肢・肩帯筋などの萎縮・脱力などが出現してくる。
・中間側角の障害により自律神経症状も出現してくる。
発汗低下・皮膚萎縮・皮膚潰瘍・起立性低血圧・インポテンツ・排尿障害等
・空洞拡大により、錐体路・脊髄視床路・後索が傷害されるとそれ以下の痙性麻痺・全感覚低下などが現れる。  
 延髄腔銅症
顔面に玉ねぎようの温痛覚障害、難口蓋麻痺、咽頭や声帯の麻痺・眼振等。
(3)治療
後頭化減圧開頭術、椎弓切除術、空洞ーくも膜下腔短絡術等

6.脊髄損傷
1)概念
強力な外力が加わり、脊椎の脱臼骨折がみられると脊髄に圧迫や挫創が起こり。脊髄が損傷される.
*・好発部位
第5~6頸椎 : 交通事故、転倒、スポーツ外傷が原因となることが多い。
*・胸腰推移行部 : 高所からの転落事故が原因となることが多い。
2)病態(参考)
 脊髄実質に出血、浮腫を基盤とした脊髄の挫滅と圧迫病変である。
*3)症状
 障害レベル以下に,不全あるいは完全横断麻痺が出現する。
 頚髄損傷では、特有な合併症として呼吸麻痺と過高熱(または過低熱)がみられる。
(1)麻痺の出現様式
ア.完全麻痺
 損傷レベル以下の髄節支配領域の運動機能・感覚機能・深部反射が持続性に且つ完全に消失したもの。
イ.不全麻痺
損傷レベル以下の髄節支配領域の運動機能・感覚機能・深部反射が部分的に傷害されたもの。
ウ.四肢麻痺
頚髄損傷によって、運動機能・感覚機能が傷害され、四肢ならびに骨盤臓器に機能障害を認めるもの。
エ.対麻痺
胸髄以下の損傷により、下肢及び骨盤臓器に運動・感覚機能障害を認めるもの。
(2)随伴症状(参考)
ア.循環器障害
徐脈・血圧低下・循環血液量減少・静脈還流障害・全身浮腫・肺水腫等
イ.消化器障害
麻痺性イレウス・急性胃拡張・消化性潰瘍・膵炎・宿便・排便障害・ストレス潰瘍等
ウ.呼吸障害
C4以上の完全損傷では横隔(膜)神経麻痺により呼吸機能は停止する。
C5以下の頚髄損傷では完全呼吸停止はないが、種々の程度の呼吸停止が見られる。
エ.排尿障害
脊髄ショック期 : 膀胱は弛緩性麻痺により尿閉を呈する。
脊髄ショック回復期 : 核上性障害により排尿筋反射の亢進を見る。
以後、脊髄損傷のレベルに応じて固定化する。
*(3)損傷高位別症状
ア.上位頸椎部
 呼吸筋麻痺と四肢麻痺を呈する。救命処置を第1とする。
イ.中・下位頸椎部
四肢麻痺・胸郭運動障害を呈する。不全麻痺を呈することが多い。
障害状況により以下の症状を呈する。
①ブラウン・セカール症候群
②中心性頚髄損傷
上肢麻痺 > 下肢麻痺(回復も下肢が早い)。自排尿は可能である。
③前部頚髄損傷
解離性感覚障害(温度覚優位)を呈する。
ウ.上・中位胸椎部
肋間筋麻痺による呼吸障害を見る。損傷部以下の運動・感覚障害の出現。胸郭の存在のため発生頻度は低い。
エ.胸腰椎移行部
発生頻度が高く、完全麻痺の頻度も高い。不全麻痺の状態であることもある。
脊髄円錐部の損傷では、サドル型感覚障害(S3以下の障害により、会陰部、肛門周囲から殿下部の全感覚障害がみられる。この領域が鞍に乗ったときにあたる部位であるので鞍状,騎袴状,サドル状などと呼ばれる。) 膀胱直腸障害を見る。
オ.腰椎部
両下肢の不全麻痺を見る。
4)治療(参考)
・救命処置
頚髄損傷の場合要呼吸管理。麻痺性イレウスや急性胃拡張に対し胃管による持続的吸飲
尿閉に対する導尿。起立性低血圧に対する対応。
・損傷脊髄への対処
骨傷の整復固定により,脊髄保護をはかることが最重要である。
受傷急性期の脊髄浮腫に対してステロイドの大量療法が行われる.
・慢性期治療
食事,書字,衣服着脱などのADLの確立、車椅子移動や歩行動作の基本訓練を行い、社会復帰への本格的なリハビリテーションに移行する。

7.整形外科外傷等
■1)骨折
(1)概念
外力により骨の構造上の連続性がたたれた状態。
*(2)原因
ア、外傷性骨折
 骨自体は正常であるが、その抵抗性以上の外力が作用するために起こる骨折。
イ、病的骨折
 骨に腫瘍や炎症などの病的状態が存在するために、軽微な外力でも起こる骨折をいう。
例:骨腫瘍、骨梅毒、骨結核、骨髄炎、くる病、骨軟化症等 
ウ、疲労骨折
 骨の同一部位に小さな外力が連続的に作用する場合に骨の連続性がしだいに途絶して発生する骨折をいう。
*好発部位 脛骨、腓骨、第2・3中足骨
(3)分類
ア、部位による分類(参考)
 骨幹部骨折、骨幹端骨折、骨端部骨折、脱臼骨折等
イ、程度による分類(参考)
完全骨折 : 骨連続性が完全に断たれたもの。
不完全骨折 : 骨の連絡が部分的に保たれているもの。亀裂骨折はこの中に含まれる。
ウ、骨折線の走行による分類(参考)
横骨折、斜骨折、螺旋骨折、粉砕骨折等
エ、骨折片相互の位置関係による分類(参考)
側方転移、長軸転移(短縮と離解がある)、屈曲転移、周転移(長軸を軸として互いに反対方向へ回旋するもの)、嵌入骨折等
*オ、骨折部と外界の交通による分類
皮下(単純)骨折:骨折部と外界との間に交通がないもの。
開放(複雑)骨折:骨折部と外界との間に交通があるもの。
カ、骨折数による分類(参考)
単発骨折、重複骨折、多発骨折等
*(4)症状
*①全身症状
 重篤な骨折では、疼痛と出血によりショック状態に陥ることがある
(四肢の単独皮下骨折ではショックに陥ることはない)
この様な場合は、内臓や大血管の損傷を考慮しなければならない。
②局所症状
*・疼痛
直達性局所圧痛(マルゲン疼痛):骨折部に現れる著明な痛み。
遠達性疼痛:衝撃痛・牽引痛・動揺性疼痛等で、不完全骨折に重要な症状である。
・機能障害
 骨折部の近接関節の機能障害が出現する、転移の程度の大きいほど機能障害は大きい。
・変形:腫張・転移等により変形がみられる。
・異常可動性と軋轢音
 管状骨の骨幹部に骨折が有れば異常な可動性がみられる。骨折端が互いに触れ合う音を軋轢音(轢音)という。
*(5)合併症
創傷感染、脂肪塞栓、重要臓器の副損傷、血管損傷、神経損傷等。
*(6)骨折の頻度
前腕骨、肋骨、下腿骨
鎖骨、手骨、上腕骨
大腿骨、頭蓋骨、足骨
膝蓋骨、胸骨、肩甲骨、脊椎骨盤の順である。
(上位のものを覚えておくぐらい)
*(7)各部位の骨折
ア.鎖骨骨折
 約8割が中央1/3、肘・手の動きは可能。
イ、肋骨骨折
好発部位は第5~8肋骨、心肺機能障害を起こすことがある
ゴルフによる疲労骨折も見られる。
ウ、上腕骨上端部骨折
 大部分が外科頚骨折である。高齢者や骨粗鬆症を有する女性に多い。
エ.上腕骨骨幹部骨折
投球や腕相撲等自分の筋力で起こすこともある。橈骨神経麻痺を起こしやすい。
オ、上腕骨顆上骨折
 血管の圧迫・損傷により、阻血性拘縮(フォルクマン拘縮)に陥り、前腕筋が壊死を起こし線維化することがある。橈骨神経・正中神経の麻痺を起こしやすい。
カ.上腕骨下端部骨折:小児に多い。(参考)
キ、モンテギア骨折
 尺骨骨幹部上1/3の骨折と橈骨小頭の脱臼を伴うもの。
☆名前を覚えておく
*ク、橈骨下端骨折(コレス骨折)
 高齢者に多く手をついて倒れた時に起こる。外見上フォーク様変形を呈する。
*ケ、大腿骨頚部骨折
 老人に多く発生する、多くは内側骨折である。最も骨性癒合の起こりにくい骨折の一つである。
・理由
老齢者に多い、関節内骨折なので骨折部に外骨膜がない、骨頭部の血液は頚部から供給されるので骨折により中枢部が虚血状態になりやすい、骨折片間に圧迫力が得られない等
コ.下腿骨骨幹部骨折
皮下の浅層にあるため開放骨折を起こしやすい。
サ.骨盤骨折
3種の骨が垂直に骨折するものをマルゲーヌ骨折という。
シ.脊椎骨折
頸椎の好発部位は5~7頸椎、頚髄圧迫により四肢麻痺を起こす。
第4頚髄以上の障害では横隔膜麻痺により死亡する。
胸腰椎部での好発部位:胸腰推移行部
(6) グルトによる骨折癒合日数
中手骨=2週、肋骨=3週 鎖骨=4週 前腕骨=5週 上腕骨骨幹部=6週 脛骨及び上腕骨頚部=7週 両下腿骨=8週 大腿骨=8週 大腿骨頚部=12週
(7)治療
①応急治療
骨折部に長い副え木を行い、包帯等での固定。医療機関では、全身状態のチェック、ショック等に対する治療。開放骨折では感染症に対する対策が重要。
②整復
ア.徒手整復
通常、上肢では伝達麻酔(神経ブロック)下で下肢では腰椎麻酔下で行う。
イ.牽引
介達牽引法:絆創膏等を使用して皮膚を介して行うもの。
直達牽引法:骨に鋼線を刺入して行うもの。
双鋼線牽引法:骨折部の中枢側骨と末梢側骨に鋼線を刺入し互いに離開するようにし牽引するもの。
ウ.観血的整復
③固定
ア.外固定:絆創膏固定、副子固定、ギブス固定
イ.内固定:軟鋼線締結、鋼線による串刺し、骨髄内固定
④リハビリテーション

■2)脱臼
(1)概念
関節包の損傷、または弛緩により関節面の相対関係が乱れ、関節面相互間に逸脱を生じた状態
・ 亜脱臼=関節面の一部がまだ接触を保っている。
1)分類
①外傷性脱臼
関節固有の可動域を越えた運動を強いられたとき関節を支持する関節包や靭帯に断裂が生じ、これらの組織の裂け目から骨頭が関節外へ逸脱した状態。肩関節・肘関節に好発する。関節包外脱臼である。
・症状
関節の疼痛・機能障害・関節端の異常位置・異常肢位・弾撥性固定(バネ様固定:強制肢位をとっている関節を他動的に動かすと、わずかに動くが、力を抜くとすぐにもとの肢位に戻ってしまうもの、外傷性脱臼に特有)。
・治療
できるだけ速い整復と固定および機能訓練。
②先天性脱臼
関節包が先天的に弛緩した状態となり、関節相互関係を保持できない状態。
③病的脱臼
関節の疾患による関節面の骨破壊、関節包の弛緩などにより相対面の乱れを来した状態
多くは関節包内脱臼である。
 注1)習慣性脱臼 :特定のある種の運動をするたびに脱臼する。病的脱臼はこれを起こしやすい。
 反復性脱臼:同一関節に僅かの外力で脱臼が頻発するもの。
注2)完全脱臼・不完全脱臼という分類もある。

■3)捻挫
(1)概念
関節固有の可動域を越えた運動を強いられたとき、関節包や靭帯などの関節支持組織に断裂などの損傷を生じ、瞬間的な亜脱臼が起こるが、自然整復された状態。
基本的には関節面の適合性は正常である。
足関節・膝関節・指関節(突き指)に好発。
(2) 症状
 疼痛・腫張・機能障害を示すが、脱臼より軽い。受傷外力と同一方向の外力を加えると疼痛の再現が可能である。
(3) 治療
整復以外は脱臼と同じ。

■4)変形性関節症
(1)概念
 関節の加齢現象、すなわち関節が退行変性によって関節構造の摩耗と増殖が混在して同時に起こり、関節の形態が変化する非炎症性、進行性疾患である。
(2)疫学
 X線学的、病理形態学的にみると成人人口の半分以上にいずれかの関節に変形性関節症の所見があるとの報告がある。また、65歳以上になるとX線検査で大部分の人に何らかの変形性関節症所見があるといわれている。
(3)分類
一次性変形性関節症:加齢に伴う関節軟骨の変性。脊椎・膝関節に多い。
二次性変形性関節症:他の疾患(外傷後・先天性股関節脱臼等)に続発するもの。 股関節に多い。
(4) 症状
・中年以後に多く、長期にわたって力学的負荷のかかった関節(膝関節・股関節)に好発
・RAと事なり、通常単発性である。手指では多発性の事もある。
・関節の疼痛:主に運動痛であり、運動始めに痛く動かしているうちに軽減する、疲れてくることによりまた痛みだす。
・しばしば関節腫張や水腫を見る、また関節の変形も出現してくる。

1)変形性股関節症
(1)概念
 股関節の軟骨の変性、摩耗によって関節の破壊が起こり、これに対応して骨硬化や骨棘形成などの骨増殖が起こり、股関節の変形と疼痛、運動制限を起こす進行性疾患である
(2)疫学
 一次性変形性股関節症:原疾患が明らかでないもの、本邦では約15%程度     
 二次性変形性股関節症:先天性股関節脱臼、同亜脱臼、臼蓋形成不全などの疾患に続発する。本邦では約80%程度。二次性の基礎疾患は女性に圧倒的に多いため、変形性股関節症もまた女性に多い。
(3)症状
 歩行や立ち座り、寝返りなどの股関節運動時の股関節部痛。跛行および可動域制限をきたす。歩容(歩く様)はトレンデレンブルグ徴候陽性である。
 注)トレンデレンブルグ徴候陽性:股関節外転筋力の低下のため、患側立脚時に骨盤は健側へ、肩は患側へ下がる。体が揺れて歩いているように見える。
(4)診断
 関節裂隙の狭小化、軟骨下骨の硬化像、骨嚢腫の出現、骨頭の変形、骨棘の形成、臼蓋形成不全、シェントン線の乱れなどが出現する。
 注)シェントン線:正常な股関節では恥骨内下縁(閉鎖孔の上縁)のカーブを延長すると大腿骨頸部内縁をスムーズになぞる。この線をシェラトン線といい、股関節脱臼ではこの2つの線が連続せず乱れる。
(5)治療
①保存的治療
ア,生活指導
 股関節への負担を減らすために体重減量、杖の使用、長時間立位・歩行の制限などを 指導する。
イ,補装具
 補装具を下肢短縮や内転拘縮例に用いることがある。
ウ,薬物
 基本的には外用薬を補助的に用い、原則として鎮痛薬の使用は控える。
②観血的治療
ア,原則
 関節裂隙が完全に消失している末期の変形性股関節症には関節を切除する人工関節全 置換術、または固定術(片側例に限る)を行う。関節裂隙が少なくとも一部に残存する場合(進行期まで)は関節を温存する骨切り術を考慮する。
イ,手術適応の判断
 50代まではなるべく関節温存を心がけ、保存的治療を行っても少しずつ症状およびX線所見が進行する場合、骨切り術の適応があれば早めに手術を考慮する。しかし人工関節全置換術の適応の場合には、なるべく保存的治療により手術時期を遅らせる努力をする。60代以降では日常生活に支障を及ぼす場合には、人工関節全置換術を行う。
(6)予後
 進行は緩徐であるので、保存的な療法でしばらく経過を観察して進行するようであれば、また、疼痛が強いようであれば観血的治療を考える。

2)変形性膝関節症
(1)概念
 関節の軟骨の変性、摩耗によって関節の破壊が起こり、これに対応して骨硬化や骨棘形成などの骨増殖が起こり、膝関節の変形と疼痛、運動制限を起こす進行性疾患である。
(2)疫学
 変形性股関節症とは異なり、膝関節では一次性が多い。40歳以上の太った女性に多い
(3)成因と病態生理
ア.一次性変形性膝関節症
 加齢による関節軟骨の退行変性と荷重と関節運動の機械的刺激が作用して摩耗による関節の変形と増殖性変化を起こすが、肥満、動脈硬化、関節軟骨破壊酵素の活性化、性ホルモンの影響もある。
イ.二次性膝関節症
 半月板損傷、靭帯損傷、骨折、化膿性関節炎、関節リウマチなどに続発する。
(4)症状
ア.疼痛
 椅子から立ち上がるなどの運動開始時に多い。温泉などの温熱効果で改善する傾向があるが、関節裂隙、ことに内側に圧痛を認めることが多い。
イ.関節腫脹
 病勢の進行により出現。膝蓋骨の輪郭が不明になる。また、関節液が貯留し膝蓋骨の浮動感を認める。
ウ.運動制限
 多くは疼痛のためであるが、やや進行すると屈曲拘縮をきたす。
エ.関節の変形
 内反変形でO脚を呈することが多いが、外反変形も散見する。
 オ.大腿四頭筋の萎縮、筋力低下
 本症に限らず膝関節疾患全般に当てはまるが必発である。そのため階段の下りに難渋する。
(5)診断
ア.X線撮影
 関節裂隙の狭小化、軟骨下骨の硬化像と骨萎縮像の混在、骨嚢腫の出現、骨棘の形成、関節内遊離体(関節ねずみ)、半月板の石灰化などが出現する。
イ.関節液検査:
 淡黄色透明で、粘稠性がある。ヒアルロン酸の濃度と分子量が低下している。
(6)治療
① 保存的治療
ア、生活指導
 膝関節への負担を減らすために体重減量、杖の使用、長時間立位・歩行の制限、正座 を避けることなどを指導する。
イ、理学療法
 仰臥位での下肢挙上訓練など、四頭筋強化トレーニングを指導する。また、水中歩行 は膝にかかる体重の負荷が少なくてすむので合理的である。
ウ、装具
 内反膝には外側を高くした、また、外販膝には内側を高くした楔状足底板を使用させる
エ、薬物
 基本的には外用薬を補助的に用い、原則として鎮痛薬の連用は控える。薬剤療法の1つとして除痛と関節水腫の改善を目標に漢方の防已黄耆湯を使ってみる価値はある。
オ、関節内注入療法
 関節内注入療法としては、ヒアルロン酸ナトリウム、キシロカイン、ステロイド薬を用いるがステロイド薬についてはその頻用は不適当である。
② 観血的治療
 観血的治療法には、関節鏡視下デブリドマン郭清術)、脛骨高位骨切り術、人工膝関節置換術がある。末期変形性膝関節症には人工膝関節置換術が行われる。

3)変形性足関節症
(1)概念
 足関節は距骨と脛骨・腓骨の遠位端にある関節面よりなる。この部における進行性の退行性変性疾患が変形性足関節症である。
 足関節は可動域も比較的少なく、構築学的に強固な関節であり、ほかの荷重関節に比べ一次性関節症の頻度は少ない。大部分は、足関節部の脱臼・骨折や靭帯損傷などの外傷、感染や麻痺などに続発する二次性のものである。
(2)症状
 足関節部の変形、腫脹、可動域制限があり、局所熱感や圧痛、軋轢音を認める。
(3)治療
① 保存的治療 
他の変形性関節症とほぼ同じ。足底板を装具として重宝する。
② 観血的治療
 ア、関節内デブリドマン
 骨棘や関節内遊離体、(関節ねずみ)を切除摘出し、関節面の衝突をなくし可動域の改善をはかる。
イ、靱帯再建術
 足関節外側靱帯損傷後の不安定性に起因する二次性関節症に適用する。
ウ、足関節固定術
 確実な除痛と安定性が得られる有用な治療法であり、今日においても広く適用されている。 関節鏡下に行うこともある。
エ、その他 : 骨切り術、人工関節置換術など。

4)変形性肘関節症
(1)概念
 肘関節軟骨の退行変性に反応性の増殖性変化が加わる疾患である。
(2)成因
 肘関節の骨折などの外傷、関節炎、離断性骨軟骨炎(関節ねずみ)、削岩機やチェーンソーのような振動工具の長時間の使用、野球選手における投球動作、相撲取りにおける「鉄砲」のやり過ぎなど、肘関節の過度の使用によって、関節軟骨が変性、摩耗し、骨棘が増殖する。
 ときに原因不明のものも散見する。
(3)症状
ア.疼痛
 ことに肘使用後に疼痛と可動域制限をきたしやすくなる。
イ.可動域の制限
 屈曲、伸展制限が多く前腕回旋運動は障害されない。ときに関節内遊離体(関節ねずみ)が嵌頓を起こして屈曲・伸展が急に制限される。また、軋轢音を認めることがある。
ウ.その他
 尺骨神経溝(上腕骨内側上顆の後面)に骨棘が形成され、尺骨神経の絞扼性障害である肘部管症候群を伴うこともある。
(4)診断
 関節裂隙の狭小化、骨の萎縮と硬化像、骨棘の形成、関節内遊離体(関節ねずみ)を認める。尺骨神経の運動神経・知覚神経伝導速度の測定によって尺骨神経の障害があれば遅延を認める。
(5)治療
① 保存的治療
 自覚症状が軽ければ保存療法だけで様子をみる。内容はほかの変形性関節症とほぼ同様である。
ア、局所の安静
イ、理学療法
ウ、薬物療法:鎮痛薬の内服頓用と外用
エ、注射療法:ステロイドあるいはヒアルロン酸ナトリウムの関節内注射、ステロイドの頻用は好ましくない。
頓用=痛みなどの症状がある時だけ臨時に使うこと。
②観血的治療
ア、関節形成術
 疼痛と可動域制限に対する手術、骨棘切除、癒着剥離、瘢痕切除、関節遊離体(関節ねずみ)の除去を行う。肘部管症候群があればその処置を行う。
イ、肘部管症候群に対する手術
 神経剥離術、神経を圧迫している上腕骨内側上顆の切除術、尺骨神経前方移行術。
(6)予後
 比較的良好。関節形成術の手術後は早期にCMP(持続他動関節運動)を行う。

5)手指の変形性関節症
(1)概念
ア.ヘバーデン結節:遠位指節間関節(DIP)に生ずる変形性関節症、
イ.ブシャール結節:近位指節間関節(PIP)に生ずる変形性関節症
 基本的には加齢に伴う退行変性であるが、遺伝性の証明される例もある。
(2)疫学
 40歳以上の女性に多い。男:女 = 1:10程度。ヘバーデン結節のほうがありふれていて、ブシャール結節はヘバーデン結節のある20%に合併するといわれている。
(3)症状
 両手の複数のDIP関節やPIP関節部に軽度の疼痛、こわばり感ともに徐々に出現する。最初は軽度の熱感と発赤を伴うことが多い。関節裂隙の狭小化と両側方への骨棘の形成によって関節部は節くれ立ってくる。ときに側方に脱臼して指が曲がることがあるほか、軽度屈曲位で拘縮を起こすことも稀ではない。運動は軽度障害される。
(4)診断
 関節裂隙の狭小化、骨の萎縮と硬化像、骨棘の形成を認める。
(5)治療
 保存的治療が中心で観血的治療は通常しない。自覚症状が軽ければ保存療法だけで様子をみる。治療内容はほかの変形性関節症とほぼ同じ。
①局所の安静
②薬物療法:鎮痛薬の内服頓用と外用。
③注射療法:ほかの変形性関節症と異なり、小関節なのでまず注射はしない。
(5)予後
 まず、変形が治ることはないが、一定のところで進行は止まり、疼痛も軽減ないし消失してくる。 

■5)大腿骨頭無腐性壊死
(1)概念
 成人の大腿骨頭に発生する無腐敗性・無血管性壊死である。
(2) 分類
ア、症候性大腿骨頭壊死
原疾患として、大腿骨頭頚部骨折・外傷性股関節脱臼・潜函病・鎌状赤血球症・放射線照射後骨移殖後・SLE等があげられる。
イ、特発性大腿骨頭壊死
原因不明、アルコール多飲・副腎皮質ステロイド剤等の関連性が指摘。
(3)発生機序
 脂肪塞栓・血管病変・血液凝固異常・骨梁の微小骨折による二次的血行障害等が挙げられている。
(4)症状
男性は女性の3~4倍の発症率。5割は両側性に発症する。股関節痛をみる。起立歩行により増悪し安静により軽減する。次第に運動制限を来す特に外転と内旋の制限著明。
(5) 治療
血管柄付骨移殖術、骨きり術、人工関節置換術等

■6)ペルテス病(若年性変形性骨軟骨炎
(1)概念
 大腿骨骨端核の虚血性壊死を見る疾患。骨端炎の代表的疾患。大腿骨頸部に及ぶこともある。
(2)原因:大腿骨頭支配動脈の血行障害。
(3)疫学
幼少年期(3~12)の男子に多い。女性の約4倍)
(4) 症状
疼痛、運動時痛(股関節から大腿内側部痛が主)。跛行、骨頭変形を残し変形性股関節症を呈することもある。

■7)オスグッドシュラッター(シュラッテル)病
(1)概念
 思春期(12~15)の男子に多く発症。脛骨結節が著しく隆起し痛みを訴える疾患。
(2)誘因
慢性機械的刺激
(3)症状
正座及び膝関節運動時の痛み、圧痛。疼痛は自然に消失するが、骨隆起は残る。

■8)五十肩(肩関節周囲炎・凍結肩・疼痛性肩関節硬着症)
(1)概念
 いわゆる五十肩といわれるものは、50代を中心として40代後半から60代前半にかけて発来する肩関節の痛みと関節拘縮を主な兆候とする症候群に与えられたやや通俗的な病名である。より医学的な名称としては肩関節周囲炎という。
(2)疫学
非常にありふれた疾患である。男女差はない。50代に多い。ついで60代、40代と続く。
(3)原因
①肩関節周囲の軟部組織の老人性退行性変化。
②老人性変化のある組織に外傷(打撲・過労など)が加わる。
③解剖学的構造の特殊性
棘上筋腱を中心とするローテータカフの烏口肩峰靱帯下での通過障害など。
注)ローテーターカフ(回旋腱板):上腕骨大・小結節、および外斜頚の一部につく肩甲下筋・棘上筋・棘下筋・小円筋の筋腱部の臨床的呼称。
(4)病理解剖
ア、肩関節周囲筋腱の慢性炎症と石灰沈着。(肩甲下筋・棘上筋・小円筋・棘下筋など)
イ、滑液包の慢性炎症と癒着・石灰沈着
ウ、結合組織炎その他
(5)主病変の頻度
腱板炎(石灰沈着性含)・腱板断裂(34%)、肩結合織炎(26%)。上腕二頭筋長頭筋腱炎(9%)、疼痛性関節制動症(いわゆる五十肩、18%)、滑液包炎(2%)
その他 : 烏口突起炎、肩関節拘縮(二次性のもの)、臼蓋上腕靱帯障害
(6)症状
主症状は肩甲部の疼痛と肩関節の運動制限である。発生様式 : 急性のものから慢性のものまで種々。
①疼痛
 肩関節部の不快な違和感・倦怠感のもののから、自発痛が頚部・上腕・前腕・手に放散するものまで種々。
に夜間の痛みが強く睡眠障害を招くことも
寒冷も痛みを増悪させる。
肩の局所の熱感や発赤・腫脹は顕著ではない
もしそうした症状があって、疼痛が激しい場合には五十肩よりも石灰沈着性腱板炎を疑う。
C4・5間のヘルニアでは五十肩と同じ様な部位に疼痛があるので鑑別が必要となる。
②運動制限による分類(疼痛の強弱に並行しない)
・制動型
五十肩の9割を占める。上腕の前方・側方挙上の可動制限、水平位までの挙上が精いっぱいである。
上腕の回旋運動の制限、上腕が前額面より前にあるときは外旋運動の障害がでる、それにより結髪が困難となる。
上腕が前額面より後ろにあるときは内旋運動の障害、それにより帯結びが困難となる。
・強直型
制動型がさらに進行して行くもので、関節の強直をおこし、可動制限が著しいもの。
・弾撥型
関節運動のある特定の場所で可動性が制限され、その部を越えればさらに運動が続けられるもの。
★棘上筋・棘下筋に廃用性萎縮出現のことあり。
③拘縮
発症の比較的早期の段階においても拘縮を認める。一方、拘縮がない場合には五十肩よりも腱板断裂や上腕二頭筋長頭腱障害を示唆する。
(7)検査法
①一般的検査
・発赤・腫脹・熱感の確認
・指椎間距離の測定
CMD=結髪動作における第7頸椎と中指の距離
CTD=結滞動作時における第7頚椎と拇指との距離
・三角筋・棘上筋・棘下筋の萎縮の有無及び弾力性の確認。
患者の上肢を下垂し検者は後ろに立ち、鎖骨の外端部で上腕骨頭の上に指をおいた方の反対の手で肘頭部を引き下ろす。このとき、肩峰と上腕骨頭との間に隙間ができると弾力性があるものとする。 
②理学的検査法
腱板損傷で陽性を示すもの:ペインフイル・アークサイン、ダウバーン徴候、アームドロップサイン、
上腕二頭筋長頭筋腱鞘炎に陽性を示すもの:ヤーガソンテスト、スピードテスト、
(8)治療
鎮痛薬投与・温熱療法・ステロイド剤や局痲剤の注入も行われる。
運動療法
 疼痛を恐れ、自主的に可動域を制限していると拘縮が出現するため、種々の器具(棒・荷重・輪転機・滑車など)を使い可動域の拡大を測る。
 他動運動・自動運動(アイロン体操・コッドマン体操・棒体操・壁対向運動・壁上向運動等)
(9)経過と予後
 狭義の五十肩(肩関節周囲炎)の場合:痙縮期 → 拘縮期 → 回復期と各期数ヶ月をかけて経過し、予後はおおむね良好で1年ないし1年半で日常生活に支障がなくなることが多い。

■9)いわゆる腰痛症
(1)概念
 原因のはっきりしている腰痛を除いたものをさし、他覚的所見に乏しいものである。
・筋・筋膜性など軟部組織由来のもの、姿勢不良による疲労性のもの、椎間関節性の関連痛などが考えられる。
・腰痛とは症状名で、最後までその原因が明らかにならないとき腰痛症と診断される。しかし両者はしばしば混乱して用いられている。
(2)原因
①腰椎の先天的異常などによる腰痛:脊椎分離症。脊椎辷り症、腰仙部の奇形等
②外傷に起因する腰痛:脊椎骨折、仙腸関節捻挫等
③椎間板の退行性変性による腰痛
椎間板ヘルニア。変形性脊椎症、加齢(40歳以上)による椎間板の変性が基盤となり骨棘の形成や椎骨の変形をきたし、靱帯の肥厚や過緊張と共に疼痛出現。
・症状
腰痛・下肢のしびれ・冷感・円背運動制限等、骨軟骨症、髄核の変性から始まり骨堤の形成を見る。
④骨の代謝異常による腰痛:骨粗鬆症、骨軟化症等
⑤軟部組織に起因する腰痛
ア.筋・筋膜性腰痛
 急激な伸展や捻転により筋・筋膜の炎症が起こり疼痛を起こすもの(脊髄神経後肢が、筋膜を貫く部位に刺激が加わるために発生する)。慢性になると循環障害と共に筋硬結を伴う。
好発部位は脊柱起立筋部である。
軽度の圧迫で疼痛を誘発することができるのが特徴である、前屈運動制限をみる。
神経伸展テストは陰性である。
イ.後方靱帯断裂症
 棘間靭帯・棘上靱帯が体を強く前屈したときに断裂するもので、痛みは腰仙部に限局されスプラングバックとも呼ばれる。椎間関節性腰痛との鑑別が必要である。
ウ.黄靱帯肥厚
⑥炎症に起因する腰痛:脊椎カリエス、化膿性脊椎炎、リウマチ性脊椎炎、脊髄癆性脊椎症等
⑦解剖学的構築に起因する腰痛
ア.姿勢性腰痛
 不良姿勢などにより胸部の後弯及び骨盤傾斜・股関節と膝関節の屈曲が起こり、頚部と腰部の前弯が増強すると、脛筋や腰筋の緊張を高めて、頚・肩のこりや腰痛の原因になる。腹筋・大殿筋が弱化している。
イ.側彎症
 神経性(麻痺性・痙性)・習慣性・疼痛性特発性(思春期の女子に多い)がある。
ウ.脊柱管狭窄症
 黄色靭帯・後縦靭帯の肥厚や椎間板の脊柱管内への突出などにより、脊柱管が狭窄され様々な症状を呈するもので、間歇性跛行を見る。
⑧腫瘍に起因する腰痛
⑨脊椎骨の異常可動性に起因する腰痛
ア.脊椎不安定症
無分離辷り症ともいわれる。
イ.椎間関節症
 椎間関節性腰痛と広くいわれ、その部の関節包の障害や関節軟骨の障害が原因である。急性のものは椎間関節捻挫によるものが多く、ギックリ腰の原因の 一つでもある。  慢性のものは加齢による変性を基盤として現れる。
⑩内臓疾患に起因する腰痛
⑪腰痛症
(3)姿勢による疼痛発現と疾患
・前屈痛--腰椎椎間板ヘルニア・軟部組織の損傷
・後屈痛--脊柱管狭窄症・軟部組織の損傷
・側屈痛--椎間関節性腰痛、軟部組織の損傷(関節軟骨の障害の場合は側屈側が痛み、関節包の障害では反対側が痛む)
・自発痛--急性期の軟部組織・骨の障害。感染症や腫瘍、内臓疾患の場合。

(4)運動療法
 代表的なものにウイリアムズの腰痛体操がある。この体操は腰背筋・腹筋・殿筋などの筋力強化と、腰背筋・ハムストリングス・腸腰筋などの引き伸ばしあるいは柔軟性の獲得を目的としている。炎症性・腫瘍性・外傷性の腰痛は適用外である。
1)ウイリアムズの腰痛体操
①膝屈曲臥位からの起き上がり(腹筋強化)
②腰を上げないで殿部だけをベットから持ち上げる。(大殿筋強化)
③仰臥位で両膝を抱え込む(腰背筋伸張)
④長坐位で上体を前屈する。(腰背筋とハムストリングスの伸張)
⑤両脚を前後に大きく開いてしゃがみ、両手を床について殿部を床に向かって押しつける(腸腰筋と下腿三頭筋の伸張)
⑥立ったり、しゃがんだりする。(腰背筋伸長)

■10)頚腕症候群
(1)概念
・頚部・肩・上肢にかけて、疼痛を主として、しびれや冷感、こわば り等を伴う症候群につけられた総括的な名称。
・頚から肩・腕・手指にかけての諸々の症状を伴う症候群をいい、頚椎及び周囲の軟部組織の退行変性・解剖生理学的弱点を基盤として現れるものである。
(2)病理
 頚髄神経根、腕神経叢、上肢末梢神経領域の連鎖的疼痛状態で、これに血管運動神経の関与、鎖骨下動・静脈の関与する末梢循環障害が加わり、さらに心因的要素も関与している
(3)原因による分類
1)先天的な形態異常によるもの
 ①頚肋症候群:余分な肋骨が第6または第7頚椎(これが主)に付着するもの。
 ②頚椎骨欠損
 ③頚椎骨融合

2)頚椎および椎間板の退行性変性(頚椎椎間板症)
①変形性脊椎症:椎間板の変性萎縮のため骨棘が形成され、それにより痛覚受容器が刺激されたり、椎間孔が狭くなり神経根の圧迫が起こる。
脊柱のいずれの部位にも生じ得るが、腰椎、頚椎、胸椎の順に多い。40歳以上の男性に多い。
②椎間板ヘルニア:椎間板の変性により内容物である髄核が、主に後外方に脱出し神経根を圧迫する。
好発部位は、C5・6、C6・7、C4・5間の順である。20~40歳代の男性に多い
3))胸郭出口症候群
(1)概念
鎖骨下動脈及びその後方を並行して通る腕神経叢は、斜角筋隙 → 肋鎖間隙(鎖骨と第1肋骨との間) → 小胸筋直下 → 腋窩という経路を通る。これらの解剖学的部位を胸郭出口と総称する。
 胸郭出口における神経血管束の圧迫症候を胸郭出口症候群という。
(2)分類
①斜角筋症候群
 斜角筋三角を通る鎖骨下動脈・腕神経叢の枝がこの部位で圧迫され種々の症状を呈する。(鎖骨下静脈は通らないことに注意)なで肩の若い女性に多い。
②肋鎖症候群
 鎖骨と第1肋骨の間に腕神経叢の枝・鎖骨下動脈・鎖骨下静脈が圧迫され種々の症状を出すもの。
胸を張り肩を下げるような動作で肋鎖間隙は一層狭小化する。リュックサックを長時間使用することにより起こるいわゆるリュックサック麻痺はこの部位で起こる。
③小胸筋症候群(過外転症候群)
 小胸筋の下を腕神経叢の枝・鎖骨下動脈・鎖骨下静脈が通り、上腕を過外転した場合、小胸筋と肋骨の間で圧迫され種々の症状を出す。上肢を挙上して仕事する人に多い。
④頚肋症候群
 第7頚椎にはしばしば不完全な肋骨が存在する、これを頚肋といい、これに起因する症候群を頚肋症候群という。
頚肋は根跡的なものから正常な肋骨に近い形のものまで種々のものがあり両側に認めることが多い。
X線像上の頚肋の存在は比較的高頻度に認められるが、多くはこれによる特別の症状を伴わず、治療の対象とはならない。
一部のものでは頚肋が直接胸郭出口において腕神経叢や、鎖骨下動脈を圧迫して種々の症状を呈するものがある。時には小さな頚肋から異常な線維性索状物が胸郭出口にのびて同様の症状を起こすこともある。
(3)症状
何れの場合でも症状は極めて類似しているので、厳密に区別することは困難である。
10歳~20歳代の女性に多く、いわゆるなで肩の人に多い。
上肢のしびれ、だるさ、尺側領域の知覚障害、手指の冷感、チアノーゼ、発汗異常等をみる。

4)職業的強制姿勢の持続による筋の過労
 キーパンチャー病・VDT症候群などがあり、肩甲挙筋・菱形筋・僧帽筋などが過緊張を起こし疼痛の原因となる。
①キーパンチャー病
・キーパンチャーやタイピストなど、手指を反復使用するような職種に多い疾患である。 ・手指の腱鞘炎や肩こり、腕のしびれなどを呈する。 ・痩せ型の神経質な女性に多く、心因も関与している。
② VDT病 (video displayterminals disease)
・キーパンチャー様の症状に加えて視覚機能障害、不快感、全身倦怠感等を伴ってくる

5)むち打ち損傷
(1)病態の違いによる症状の分類
①軟部組織の障害によるもの
 筋緊張性頭痛・肩こり・頚のこり・肩甲間部への関連痛など。
②根障害型
 前根の障害のときは筋力の低下・循環不全による皮膚温の低下や脱力感を呈する。後根の障害によるときは異常知覚・知覚異常などがデルマトームに従って現れる。
③椎骨動脈の循環障害によるもの:耳鳴(感音性)・幻暈の出現。
④頚部交感神経の刺激症状 (バレーリュウ症候群)
 頚椎のズレなどが原因とされ交感神経の過緊張による症状のうち、頭部・頚部に現れるものをバレー・リュウ症候群と呼んでいる。
⑤頚髄圧迫型
頚部の脊柱管の狭窄や正中部への椎間板ヘルニアにより脊髄を圧迫するもので腱反射の亢進や病的反射の出現、巧緻運動障害、膀胱直腸障害などが現れる。
(2)頚腕症候群の理学的検査法
ア.一般的検査
 ①触診・アライメント:筋の触診、前・後・側彎・棘突起の階段変形等
 ②疼痛:前屈・後屈・側屈・回旋痛、圧痛、叩打痛、
 ③反射:腱反射(上腕二頭筋反射・上腕三頭筋反射・腕橈骨筋反射)、病的反射(バビンスキー・ホフマン反射)
 ④筋力検査・知覚検査・握力検査等
イ.徒手検査法
 ①頚椎・頚髄疾患の検査
ジャクソン(椎間孔圧迫)テスト、スパーリング(過伸展圧迫)テスト)、肩押し下げ(ジャクソン肩圧迫)テスト、イートン(神経伸展)テスト
 ②胸郭出口症候群の検査
斜角筋緊張位検査・ハルステッドテスト ー 斜角筋症候群で陽性
モーリーテスト ー 斜角筋・肋鎖症候群で陽性
アドソンテスト ー 頚肋・斜角筋症候群で陽性
アレンテスト ー 斜角筋・過外転・頚肋症候群椎間孔狭小で陽性
エデンテスト ー 肋鎖・頚肋症候群で陽性
ライト(過伸展)テスト ー 過外転・肋鎖症候群で陽性
(3)治療
ア.保存的療法
 正しい姿勢の指導、肩・頚の筋力増強、温熱療法、マッサージ等
・運動療法
 頚肩腕部の軟部組織の柔軟性を回復させるためラジオ体操などの様々な運動をさせたり、または他動的に頚肩腕部の伸張運動を行う。ただし頚部の伸展よりも屈曲、肩甲骨の挙上よりも下制、内転よりも外転を重視するのが原則である。
イ.観血的治療
斜角筋切断術、第1肋骨の部分切断術、小胸筋切除術等

8.スポーツ外傷・スポーツ障害
■1)スポーツ障害とスポーツ外傷の種類と病態
(1)スポーツ外傷
 スポーツ中に外傷が加わって発生する外傷。
RICEの処置を行うのが基本である。
(R=レスト・安静、I=アイス・冷却、C=コンプレッション・圧迫、E=エレーベーション・挙上)
 例:骨折・脱臼・捻挫・挫傷・肉離れ・腱断裂等
(2)スポーツ障害
 スポーツ外傷に対する言葉で、主にオーバーユースシンドローム(使いすぎ症候群)に属し、オーバーユース・小外傷症が原因となり、慢性的なものをさす。

■2)スポーツ障害の発生機序
ア.オーバーユース
イ.小外傷
ウ.解剖学的特性
 例 : 膝蓋靭帯炎=脛骨の外旋、
膝蓋骨圧迫症候群、膝蓋大腿関節の軽度の不適合・膝蓋滑活動性の欠如
エ.衝突症候群(インピンジメントシンドローム))
解剖学的構造上、スポーツ使用上衝撃を受けることにより疼痛を訴えてくるもの。
例 : 水泳肩・サッカーによる足関節障害等
オ.絞扼性症候群(エントラップメントシンドローム)、注)エントラップ = 罠にかける
圧迫性神経障害ともいい、神経が靱帯などのエントラップにかかって障害されたものをいう。
物理的原因による圧迫性の単神経障害であるが解剖学的に特定の部位に発生するものであり、円回内筋症候群・手根管症候群・肘管症候群・足根管症候群等が挙げられる。
カ.その他
場所、靴、フォーム等による問題。

  3.種目別スポーツ外傷・障害を記す。 
  ア、陸上競技
 下腿の疲労骨折・脛骨疲労性骨膜炎・アキレス腱の疼痛・踵骨痛・足底筋膜炎・肉ばなれ・膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)等
 イ、体操
 膝靭帯損傷・半月板損傷・足関節捻挫・アキレス腱断裂・ジャンパー膝等
 ウ、野球
 野球肩 = 肩前面の障害・肩後面の障害・脱臼神経血管の障害・筋の障害等)
野球肘 = 野球により生ずる肘の疼痛性疾患の総称である。
 外側:上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎
 内側:上腕骨尺側上顆の骨端線離開
 エ、バスケットボール
膝前十字靭帯損傷・膝内側側副靭帯損傷・膝半月板損傷等
 オ、バレーボール
 肩関節障害・ジャンパー膝・アキレス腱障害等
 カ、水泳
 水泳肩 = 棘上筋腱や上腕二頭筋長頭筋腱の反復使用により腱炎をこし肥厚するる。これが烏口肩峰靭帯の外側や肩峰前方に衝撃を加えて疼痛を生ずるもの。
 キ、テニス :
バックハンドテニス肘 = 上腕骨外上顆炎、テニス肘の大半を占める
フォアハンドテニス肘 = 上腕骨内上顆炎

  4.各部位における疾患

  (1)テニス肘(上腕骨外側上顆炎または内側上顆炎)
  ア.外側上顆炎の特徴
 前腕の浅層にある伸筋の大部分は、共通の起始腱を持って外側上顆から起こる。オーバーユースにより外側上顆の骨膜に、骨膜炎を生じ、痛みが出る。
 短橈側手根伸筋が特異的に犯されやすい。
  イ.内側上顆炎の特徴
 テニスでは特にバックハンドの際に外側上顆炎を起こしやすく、ゴルフではインパクトの瞬間に内側上顆炎を起こしやすい。

(2)絞扼神経症
 圧迫性神経障害ともいい、神経が靱帯などのエントラップにかかって障害されたものをいう。
 物理的原因による圧迫性の単神経障害であるが、解剖学的に特定の部位に発生するものであり、
 円回内筋症候群、手根管症候群、肘管症候群、足根管症候群等がある。
 ア.円回内筋症候群
 前腕前面上部で円回内筋の上腕頭と尺骨頭の間を通る正中神経が両頭の間で圧迫を受け支配領域に症状が出るもの。
  イ.手根管症候群
 手関節部の骨と横手根靱帯によって構成されている空間、すなわち手根管内で正中神経がなんらかの原因によって圧迫障害され、末梢部の神経障害を起こすものをいう。
 中年女性に比較的よくみられ、手関節を反復して動かす職業、例えばマッサージ、研磨、床磨きなどに従事している人に起こりやすい。
 一側または両側性に手掌部がピリピリする疼痛が特徴的で、夜間に著しい。
 ウ.肘部管症候群
 肘管症候群、遅発性尺骨神経麻痺ともいう。
 尺骨神経が肘トンネルを通過する過程において、    絞扼あるいは圧迫によって引き起こされる神経障    害。
 エ.尺骨神経管症候群
尺骨神経管(Guyon管)は、掌側手根靱帯(掌側)豆状骨・尺側手根屈筋腱様線維(尺側)、屈筋腱膜・豆鉤靱帯(背側)、有鉤骨鉤(橈側)で構成され、この管内を尺骨神経・尺骨動脈が通る。尺骨神経はここで浅枝と深枝に分岐する。この部分で尺骨神経の慢性圧迫または絞扼により麻痺を生ずるものを尺骨管症候群という。
(3)神経麻痺
 ア.橈骨神経麻痺
 イ.正中神経麻痺
 ウ.尺骨神経麻痺
(4)狭窄性腱鞘炎
 腱鞘滑膜に反復して過剰摩擦が加わり、漿液性の炎症を起こしたものを腱鞘炎といい、靱帯性腱鞘が肥厚して狭窄をきたしたものを狭窄性腱鞘炎という.
deQuervain腱鞘炎、ばね指などが代表的である。
  ア.ばね指(弾撥指)
 指のIP関節の屈伸運動が円滑にできないで、伸展時あるいは屈曲時に途中でひっかかる。時に曲がったまま伸びなくなる。
 指屈筋腱の靱帯性腱鞘近位端のMP関節レベルにおける狭窄性腱鞘炎が原因。
  イ.ドゥケルバン病
長母指外転筋腱と短母指伸筋腱が通る手関節第1背側区画での狭窄性腱鞘炎。
(5)動脈閉塞
(6)肘内障
 脱臼の一つで肘を伸展し前腕を回内したときに牽引力がかかると輪状靱帯から骨頭がはずれる。
(7)上腕骨顆上骨折
 介達骨折の一つ。骨折ではヒューター三角(肘屈曲位で内側上顆と外側上顆及び肘頭によって出来る三角)が存在するが脱臼では消失する。
(8)半月板損傷
 壮年の男子に多く、労働者、スポーツマンなどでしばしば見られる。
 ほとんどが内側半月板の損傷である。その理由は外側半月板に比べ内側半月板は脛骨面状の固定が強固なことが挙げられる。
 初期の症例では外傷と共に膝に疼痛を覚え、歩行は困難である。(押しアップレイ・マックマレー)
(9)靱帯損傷
  ア.側副靭帯損傷
 内側側副靭帯損傷が多い。圧痛点は内側靱帯の大腿付着部。他動的に外反すればこの部に痛みが起こる。(ストレステスト)
  イ.十字靭帯損傷
 急激な疼痛と腫脹がある、
前十字靭帯では引き出し現象が見られる。
後十字靭帯の損傷では下腿は後ろへ滑り出す。(引き出しテスト・押し込みテスト)
(10)ランナー膝(膝蓋軟骨軟化症)
 ランニングなどによる膝の屈伸に伴い、下腿が大腿骨に対して内旋外旋を繰り返すことにより、膝蓋大腿関節部で摩擦が起こり関節面がなめらかでなくなる為に発症する。(膝蓋骨引き下げテスト)
(11)腸脛靱帯炎
 中距離ランナーに多く見られ、腸脛靱帯と大腿骨外側上顆との間で起こるインピンジメントである。(グラスピングサイン)
(12)鵞足炎
 内側裂隙より下方5センチあたりで生じる機械的炎症によるものである。
(13)ジャンパー膝(膝蓋靭帯炎)
 ジャンプを繰り返すことにより膝蓋骨の下端と膝蓋靭帯との間で摩擦が起きるもの。痛みは膝蓋骨の下端に生じるのが特徴。
(14)オスグッドシュラッテル病
 小学校高学年から中学校にかけて比較的激しいスポーツを行うものに見られる。
 膝蓋靭帯の付着部である脛骨粗面から骨片が剥離するものである。これは骨の成長に筋の成長が追いつかないため腱に牽引力が働くためと考えられる。
(15)脛骨の疲労骨折
 オーバーユースによるもの。ジャンプ型では脛骨の中央部に多く、疾走型では近位部または遠位部1/3部分に起こる。
(16)ンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)
 下肢の疲労骨折や阻血性障害を除いた筋腱の炎症。
(17)環椎破裂骨折(ジェファーソン骨折)
後頭部痛・環椎回旋障害が出現してくる。

■5)圧痛と疾患の関係について
 ①後十字靭帯損傷 : 膝窩部
 ②内側側副靭帯 : 内側側副靭帯に沿って陥凹と共に圧痛がある
 ③半月板損傷 : 関節裂隙部
 ④ジャンパー膝 : 膝蓋骨下部、膝蓋靭帯、脛骨結節部、
 ⑤オスグッド病 : 脛骨結節骨隆起に伴う圧痛あり
 ⑥大腿四頭筋炎 : 膝蓋骨付着部に圧痛を見る
 ⑦腸脛靱帯炎 : 大腿骨外側顆の上方3㎝あたりの部。
 ⑧膝蓋軟骨軟化症 : 膝蓋骨周辺部

(付記)留意する症状
 ①膝関節部に強い自発痛や夜間痛を訴え、経過が進行性の場合は悪性腫瘍を考える。
 ②関節部に著明な腫脹・発赤・熱感がある場合は化膿性膝関節炎を考える。
 ③嵌頓症状を繰り返す場合は半月板損傷・離断性骨軟骨炎を考える。
 ④受傷後15分から1時間で著明な腫脹が現れた場合は関節内骨折・靱帯損傷を考える
 ⑤関節の動揺が強い場合を膝周囲の靱帯の断裂を考える。

■6)スポーツ障害の治療
(1)スポーツ外傷に対しては安静を目的にRICEを行う。膝部に損傷があるときは関節内への連絡の有無をチェックする。
(2)スポーツ障害に対しては運動量を減らすと共に疼痛の緩和、筋疲労の回復を目的にアイシング・マッサージ・鍼を行う。

9.呼吸器系疾患
◎第1説 乾癬性呼吸器疾患
■1)慢性気管支炎
(1)概念
気管支系の過量の粘液分泌を特徴とする異常状態で
慢性あるいは反復性に痰を伴う咳をみる
これらの症状が少なくとも一年間に3ヶ月以上あり、少なくとも2年以上みられるものをいう
(2)疫学
ヘビースモーカーあるいは大気汚染地域の居住者、鉱山、重化学工業労務者に発生しやすい
・男女比は2:1
(3)病理
気管支腺の肥大と増生、杯細胞の増生
閉塞性呼吸器疾患
(4)症状
・痰と咳
冬季、急性気管支炎の続発時に増悪
☆慢性気管支炎の人が風邪あどで急性気管支炎になった時という意味
痰は粘性。増悪事には膿性、さらには血性となる
・増悪時には呼吸困難、喘鳴がみられる
低酸素血症(チアノーゼ)、太鼓ばち指、浮腫、頚動脈の怒張になることも
(5)検査所見
・気管支造影
気管支壁の不整の拡張、気管支腺の拡張
☆気管支壁が肥厚する
・肺機能検査
肺活量の1秒率の低下
・喀痰検査
痰は粘液性
膿性の痰(好中球、扁平上皮などを多く含む)
(6)経過と予後
・痰、咳のわりには肺機能の障害は少ない
・慢性に経過
・死の転帰をとることはない
(7)治療
・痰の産生をうながす刺激因子の除去
・十分な量の水分摂取
・体位ドレナージ
・薬剤
去痰薬、気管支拡張薬、消炎酵素薬、ネプライザー

■2)肺炎
(1)概念
微生物の感染による肺実質の急性炎症製疾患
物理化学的要因によっても発症する
☆物理化学的要因による肺炎の例:放射線性肺炎、ルポイド肺炎(膠原病敵)
(2)分類
1)病原微生物による分類
①細菌性肺炎
肺炎球菌、ブドウ球菌、インフルエンザ菌、大腸菌、緑膿菌
②ウィルス性肺炎
インフルエンザウィルス、アデノウィルス
③マイコプラズマ肺炎
④真菌性肺炎
クラミジアが多い
(カリニ肺炎なども)
2)病理象による分類
①大葉性肺炎
葉全体がおかされるもの
肺炎球菌性肺炎が多い
☆さび色痰、稽留熱
②気管支肺炎
細気管支から肺胞を含んだ領域がおかされるもの
小葉間に限局
嚥下性肺炎に多い

(3)疫学
・すべての年齢層に発症する
・抗生物質などの発達により細菌性肺炎は減少した
・抗生物質、ステロイド剤等の長期使用や免疫抑制薬等の使用により、真菌や原虫などによる肺炎は増加傾向にある

(4)病理
・感染局所の肺血管が拡張
・白血球や赤血球、フィブリン、マクロファージ等を含む滲出液が肺胞壁や抹消細気管支を満たす
→肺胞は無気的となる

(5)症状
・急性に発症
・全身の違和感、発熱、意識障害
①注意
・肺炎球菌性肺炎
1~2日で解熱する
肺実質に後遺症を残さない
・黄色ブドウ球菌、連鎖状球菌、緑膿菌性肺炎
気管支肺炎、肺化膿症、膿胸
・マイコプラズマ性肺炎
15~20歳に多く発症
4年ごとに散発する傾向がある
原発性異型肺炎の大半をしめる
頑固な咳が続くのが特徴
②胸部局所所見
患側胸壁の運動性の低下が見られる
☆肺胞などが十分に空気を入れられなくなるので狭角を広げようとしても広げにくい
病変側の打診音が濁音となる
呼吸音は減弱
声音振盪が亢進
捻髪音が聴取されることもある
☆繰り返し同じ部位で肺炎や気管支炎を起こすとき、悪性腫瘍の化膿性もある
☆免疫機能の低下によって肺炎を繰り返し発症する

(6)検査所見
・赤沈の亢進、CRP陽性、白血球増加
→細菌性肺炎の可能性が高い
(7)合併症
胸膜炎の頻度が高い
高齢者や糖尿病患者は肺膿瘻や膿胸を起こしやすい
(8)系かと予後
心肺疾患を持つものや、高齢者以外では、抗生物質等の使用で治癒する
(9)治療
・薬物
抗生物質の投与
その他、喀痰融解薬、消炎酵素薬、気管支拡張薬
・呼吸管理
☆酸素吸入など

■3)肺結核
(1)概念
結核菌による感染症
飛沫感染する
1970年から寒邪数が増加傾向にある
(2)病理
・初期変化群
滲出性反応
→結核性の肉芽腫形成(乾酪巣)
→乾酪巣の周囲にリンパ球と正常組織を境する線維化部分が生じる
☆ツベルクリン反応陽性の状態。症状は出現せず、抗体が作られ、この状態から進行しない人が多い
(3)結核の進行
・初期変化群のまま病変は石灰化し、病態が停止する
・結核性胸膜炎
炎症が胸膜に波及したもの
膿胸をていすることもある
・粟粒結核
結核菌がリンパ行性にリンパ節を経て上大静脈を経由して、肺に散布され発症するもの
・結核性肺炎
肺門リンパ節が壊死に陥り、気管支に穿孔が起こる
経気管支性に結核菌の散布が起こる
★初期変化群より先に進むのは、5歳以下の子供に多い
・既感染結核(慢性肺結核)
初感染から10年から40年経過して発病するもの
再燃を促進する因子には、他の疾病、栄養状態、高齢、ステロイド剤、抗がん剤、免疫抑制剤などがある
☆老人に多い
(4)症状
・初期
自覚症状を示さないのがほとんど
集団検診で発見されることが多い
・症状が伸展すると
肺炎、気管支炎、肺の空洞形成、葉胃組織の線維化、胸膜の肥厚
・高度進展期
低酸素性・低肺胞喚起性の呼吸不全、肺性心などが起こる
易疲労感、血痰、喀血、胸痛、盗汗、食欲不振、発熱
☆夕方ごろから熱が上がりやすい
肝脾腫、、蛋白尿、血尿、髄膜炎
(5)検査所見
①ツベルクリン反応
☆体内に結核菌が侵入すると数週間で免疫が獲得される
陰性であればBCGを摂取する
②胸部X線検査
陰影像をていする
陰影は肺の後上方に多くみられる
直接撮影が主流
③結核菌検査
痰、喉頭粘液、胃液のいずれかを用いる
例としてPCR法
☆確定診断に用いられる
④その他
血沈の促進
(6)経過と予後
限局性のものであれば自然治癒することが多い
発症しても抗生物質の大量投与で治癒することが多い
高齢者では耐性化例、慢性化例がしばしば診られる
(7)治療
・化学療法が主
初回の治療で確実に治癒させるのが基本
リファンプシン、イソニアジッド、ストレプトマイシン(SM)の併用療法が主流
・上記の化学療法には副作用が現れることが多い
ストレプトマイシンやカナマイシン
→聴力障害
エタンプトール
→視力障害
イソニアジッド
→末梢神経障害、肝障害
りふぁんぷしん
→肝障害、血小板減少

◎第2説 閉塞性呼吸器疾患
■1)肺気腫
(1)概念
呼吸細気管支または肺胞壁の破壊により、呼吸細気管支より抹消の気腔が異常に拡張した状態
★肺気腫患者は一般に慢性気管支炎や気管支喘息を高率に合併する
それによって閉塞状態がさらに高度化することが多い
(2)易学
高齢弾性に圧倒的に多い
近年、増加傾向にある
発症寒邪の大部分が重喫煙者
既往歴に慢性気管支炎や喘息を持つ人に発症しやすい
大気汚染地域の居住者に多く発症する
α1アンチトリプシンの遺伝的欠損者に発症しやすい
☆この家系は日本人には少ない
(3)症状
労作時の息切れが特徴的
慢性気管支炎を合併している場合には咳や痰を伴う
冬や夏に呼吸困難が増悪する傾向にある
進行例では、樽状胸、口すぼめ呼吸
橋核前後径の拡大、肋間の開大→樽状胸
打診音は鼓音
呼気の延長や呼吸音の減弱
横隔膜の低位
心濁音界の減少または消失
補助呼吸筋を使った努力呼吸
消化性潰瘍が起こることもある
(4)検査所見
・胸部X線所見
拡大した胸郭
平坦化または低位化した横隔膜
肺紋理の不鮮明化
垂直化した心臓
・肺機能検査
残気量、機能的残気量、肺胞気量の増大
☆残気量:最大呼気時に肺に残っている空気
機能的残気量:安静呼気時に肺に残っている空気
肺胞気量:肺胞に入っている空気
1秒率の低下
動脈家悦O2分圧低下、CO2分圧上昇
・その他
肺血流シンチグラフィー
心電図では肺性P、時計回りの軸回転が診られる
☆肺性P:異常P波
(5)経過と予後
経過はきわめて干満
気導や肺の感染症の合併は状態を悪化させる
(6)治療
・基本方針
残存肺の機能を活用すること
常に気道の浄化に留意すること
腹式呼吸の指導、胎位ドレナージ
気道を刺激する因子の除去
十分な水分摂取
感染の機械を減らす
・薬物療法
喀痰融解薬
気管支拡張薬
感染時には抗生物質の使用
酸素療法

■2)気管支喘息
(1)概念
各種の刺激に対して気管支の反応性が亢進し、気道が競作しやすい状態で、気道の狭窄は治療によってはもちろん、自発的にも寛解しうることで特色づけられる疾患
慢性炎症性疾患である
(2)病因
①アレルギー説
・抗原因子
ハウスダスト、花粉、ダニ、そば、鶏卵、牛乳
②感染説
③自律神経失調説
④精神身体要因説
⑤内分泌異常説
⑥β受容体遮断説
(3)分類
①アトピー型(外因型)
外来性の各種の刺激に対し、過敏性を示す
小児期より湿疹、食事アレルギー、アレルギー性鼻炎薬剤科敏捷、などのアレルギー性の既往がある
家族内に同様の発症者が多い
10歳以下で多く発症し、自然治癒することが多い
②非アトピー型(内因型、感染型)
外来性の各種刺激に対して特に反応は示さない
精神神経的因子の他に気道の感染が誘引となっている
皮膚反応に特異性がなく、アトピー性の既往もない
40歳以上の発症が多く、難治性
(3)疫学(重要でない)
人種的、地域的差はない
男女差もない
全人口の1%程度離間していると言われる
(4)症状
夜中から明け方の喘鳴、痰、息切れがみられる
呼吸困難、呼気の延長、笛声、クラックルなど
乾性ラ音の聴取
打診では鼓音、肺野の拡大
☆クラックル:捻髪音などの異常呼吸音
・重症の症状
補助呼吸筋を使ったあえぎ呼吸
起坐呼吸、チアノーゼ
喘息重積状態
☆喘息重積状態:薬物などで発作をコントロールできなくなった状態
・発作の好発時期
秋、春、冬、夏の順に多い
(5)検査所見
①喀痰検査
痰量は少ない
発作の寛解とともにゼリーさまとなり喀出される
痰の中には好酸球が多く含まれ、シャルコー・ライデン結晶、クルシュマン螺旋体、ラエンネック真珠が含まれている
☆クルシュマン螺旋体:粘液状の物質がねじれたもの
☆ラエンネック真珠:ゼリー状の物質
②胸部X線写真
肺の過膨張が見られる
③肺機能検査
肺活量の1秒率の低下
発作時には動脈血酸素分圧低下
④気道過敏性テスト
ヒスタミンやアセチルコリンを吸入させて気道収縮誘発試験を行う
⑤アレルギー検査
皮膚反応、血清IgE抗体測定、吸入試験
(6)経過と予後
・小児期に発症した患者は思春期までに治癒することが多い
・思春期以後に発症した喘息は比較的治癒しにくい
(6)治療
①対症療法
気管支拡張薬、β22刺激薬、デオフェリン、アドレナリン、ステロイド剤など
補液、酸素吸入
②減感作療法

◎第1節 拘束性呼吸器疾患
■1)特発性間質性肺炎(肺線維症)
(1)概念
原因不明の炎症が肺胞隔壁を中心にび漫性、進行性に起こり、しだいに肺胞隔壁に膠原線維を主とする線維化が進み、肺胞壁画肥厚する。
肺が硬くなり伸縮性が落ちる
(2)病院
肺胞マクロファージが線維化の主因である
(2)疫学
・性差はない
・中年以後に発症することが多い
・症例数は増加傾向にある
(3)症状
・乾性の咳嗽
☆痰を伴わない咳
・息切れ
・課呼吸、太鼓撥指、頻脈、関節痛、発熱
・ベルクロラ音
…病変部に一致した捻髪音や摩擦音
・肺野の縮小
(4)検査所見
%肺活量、残気量の低下
動脈血O2分圧の低下
赤沈、CRP、白血球数、GOT、LDHの上昇
高ガンマグロブリン血症、リウマトイド因子陽性のことが多い
(5)経過と予後
3~4年で高度の低酸素血症を起こし、呼吸不全に陥り死の転帰をとる
10年以上経過するものもあるが、肺がんを好発する
蜂窩肺の状態になると6ヶ月程度で死の転帰をとることがある

■2)肺がん
(1)概念
気管支粘膜上皮および肺胞上皮の細胞から発声する悪性腫瘍である
(2)原因
・誘引物質
喫煙、クロム、アスベスト、排気ガス、ラドン
・基礎疾患
基礎疾患に併発することが多い
肺線維症、珪肺、石綿肺、サルコイドーシス、膠原病
(3)疫学
肺がんは増加傾向にある
40歳から増加し始め、60歳代がピーク
男女比は4:1(若年者では2:1程度)
転移性肺がんの原発巣で多いのは、乳がん、胃がん子宮癌の順
(4)分類
①組織型分類
・扁平上皮癌
40%程度を閉める
・腺癌
40%程度を占める
・大細胞癌、小細胞癌
②発生部位
・中心癌
区域気管支から中枢側の気管支に発生するもの
肺門型とも言われる
扁平上皮癌や小細胞癌が多い
・抹消癌
区域気管支より抹消で発生するもの
肺野癌ともいわれる
腺癌が多い
③病期分類
・TNM分類によって肺がんを4期に分類
・3期を超えると外科手術による根治は困難
☆TNM分類
T:腫瘍の大きさと周囲への浸潤の程度を7段階に区分
N:リンパ節への広がりによって5段階に区分
M:遠隔転移の有無によって3段階に区分

(5)症状
①原発巣による症状
咳、痰(時に血痰)、胸部痛、喘鳴、呼吸困難、発熱
☆抹消癌よりも中心癌の法が血痰が出やすい
②隣接臓器への浸潤による症状
反回神経麻痺による嗄声
食道圧迫による嚥下障害
胸膜への浸潤による血清胸水の貯溜、胸背痛
心外膜への浸潤による心膜液の貯溜、動機
上大静脈症候群(上大静脈の圧迫)による顔面の浮腫、頸静脈の怒張、上腕神経叢、頚部交感神経の刺激
上腕神経叢、頚部交感神経の刺激によって上肢の感覚障害や運動障害、ホルネル症候群などが現れる(パンコスト症候群という)
③遠隔転移による症状
リンパ節の腫脹、脳転移による各種脳神経症状
骨転移による頑固な痛み
④随伴症状
・小細胞癌の場合、異所性ホルモン産生腫瘍になることがある
ACTH産生腫瘍:クッシング症候群
ADH産生腫瘍:ADH分泌過剰症候群(SLADH)(浮腫や血圧上衝)
・末梢神経障害
・小脳障害
・筋障害
・皮膚障害
黒色表皮症、強皮症(皮膚が硬くなる)
手掌・足底角化症
・骨、間接症状
上下肢の腫脹や疼痛、ばち指
(骨による転移というより、栄養や酸素の不足による)

(6)検査と診断
・腫瘍組織およびその産生物の確認によって確定診断が行われる
・胸部X線、喀痰検査、気管支鏡検査、経気管支肺生検、開胸肺生検
・腫瘍マーカー(参考)
CEA、SCC、NSEなど
(6)経過と予後
外科的処置で根治できるものは少ない
・肺がんの5年生存率
1期:35%
2期:13%
3期:6%
4期:1%
(7)治療
肺がんの根治は想起発見による切除以外にない
・小細胞癌
化学療法を主に用い、放射線療法とも併用する
・非訟細胞癌
外科手術、化学療法、放射線療法

■3)気胸
(1)概念
胸腔内に空気または気体が存在する状態
(2)原因
臓側胸膜の穿孔、胸壁、横隔膜、縦隔、食道などの胸腔への穿孔
(3)分類
①自然気胸
主として肺尖胸膜下の気腫性嚢胞(プレブ)の破裂や、索状癒着の起始部の破綻、肺胸膜の断裂
・一次性自然気胸
・二次性自然気胸:肺結核や肺がん、気管支喘息などが基礎疾患にあるもの
②外傷性気胸
交通事故による外傷が最も多い
③医原性気胸
鍼穿刺、針生検によって起こる
④月経随伴性気胸
月経時に反復して気胸を起こす

(4)疫学
・好発年代
20~30歳代、ついで50~60歳代
・細身の男子に多い
・50、60代の気胸は二次性気胸が多い
・好発部位
右側の一側性のものが多い

(5)症状
・胸痛、刺激性咳、労作性呼吸困難
・緊張性気胸など重症気胸の症状
縦隔の健側への圧迫、鼓音、声音振盪の減弱、呼吸音の減弱
血圧低下、チアノーゼの出現

(6)治療
・肺の脱気度が25%以下で、進行性でなければ安静にするだけでい
・肺の脱気度が50%以上の時、または基礎疾患がある時は、持続的脱気を行う

悪性中皮腫
・胸膜、心膜、腹膜の表面を覆っている中皮から発声した
 発生した腫瘍である。
・良性中皮腫、悪性中皮腫がある。
原因
・アスベストが原因となる。
・肺癌全体の約1%以下の発生率である。
症状
・主なものとしては大量の胸水貯溜、呼吸困難、胸痛がある。
診断
・胸部X線写真、CT、生検などで診断される。
治療
・外科手術、放射線療法、化学療法などが行われる。
経過と予後
・基本的には予後不良である。

気管支拡張症
・気管支は分枝回数を重ねるとともに、本来は内腔が狭くなるが、
 中枢部より末梢の内腔が拡大していくもの。
病理
・気管支壁の支持組織や軟骨の破壊があり、
 気管支動脈が拡張している。
原因
・先天性の異常としてはカルタゲナー症候群がある。
・特発性のものは、百日咳や麻疹の既往があるものに多い。
・その他、気管支結核、肺門型気管支癌、誤嚥などからの続発。
症状
・湿性の咳嗽、多量の膿性痰(数百ml)、血清の痰がある。
・その他、喀血、バチ指、チアノーゼなどがある。
・慢性副鼻腔炎を合併しやすい。
治療
・去痰剤、ネプライザー、体位ドレナージなどの対症療法。

第5章 腎尿路疾患
急性糸球体腎炎
・溶連菌感染症の罹患後、1~3週間後に急性腎炎症候群を呈して
 発症する疾患であるである。
原因
・A群β溶血性連鎖状球菌が中心となる。
・肺炎双球菌、ブドウ球菌、マイコプラズマ、インフルエンザ菌、
 麻疹ウイルス、水痘ウイルス、HBVなどがある。
急性糸球体腎炎に先行する疾患
・扁桃炎、咽頭喉頭炎、中耳炎、肺炎、皮膚の膿痂疹などが起こる。
・晩秋から冬季にかけて多発する。
・急性糸球体腎炎は小児に好発する。
病理
・溶連菌抗原とその抗体による免疫複合体腎炎である。
症状
・先行疾患の罹患後、1~3週間して急速に乏尿、浮腫、高血圧、
 血尿(稀に肉眼で確認可能)、蛋白尿、全身倦怠、食欲不振、
 頭痛、咽頭痛、悪心嘔吐、下痢、便秘、GFR低下、
 Naの貯溜により高血圧脳症、急性左心不全、肺水腫など。
検査所見
①尿検さ
・蛋白の出現(0.5~3g/日)、GFR低下、尿沈渣で赤血球円柱、
 血沈促進、白血球数増加、CRP陽性、ASO値上昇、
※正常でのGFRは100~150ml/分。
※血沈促進、白血球増加、CRP陽性は炎症の持続を意味する。
治療
・基本的には安静を心がけ、食事療法、薬物療法などを行う。
・治癒しても1年ぐらいは妊娠や過激な運動は避ける。
※食事療法
・低カロリー1800kCal、減塩3g、蛋白質25g、水分尿量+500ml
※薬物療法
・利尿剤、降圧剤、抗生物質()ペニシリン系)。
経過と予後
・90%以上は発症後1~2ヶ月で治癒する。
・一部は数十年の経過の後、慢性腎不全まで進行することもある。

急性進行性糸球体腎炎
・急性糸球体腎炎に引き続いて起こるか、または特発性に発症し、
 数ヶ月以内に末期腎不全となる疾患である。
症状と所見
・血尿、蛋白尿、乏尿、浮腫、高血圧、腎機能低下、高窒素血症、
 半月体の出現(ボウマン嚢上皮細胞が増殖した状態)など。

慢性糸球体腎炎
・発症時期が明らかでない、続発性糸球体障害を否定できる、
 慢性に経過する、持続性蛋白尿と尿沈渣の異常を呈する、
 この4つの条件を満たすものを慢性糸球体腎炎とする。
病理
・子宮体基底膜の二重化、滲出性病変、半月体の形成、
 メサンギウム(葉間結合組織)の増加が起こる。
症状
①潜在型
・蛋白尿、無症候性血尿は出現するが、他の腎機能は正常。
②進行型
・蛋白尿、血尿、GFR低下、浮腫、高血圧、
 血中クレアチニンや尿素窒素の上昇など。
・全身倦怠、易疲労感食欲不振、進行すると腎不全など。
診断
・確定診断は生検しかない。
治療
・潜在型は基本的には安静を図るだけで、
・進行型は食事療法、対症療法などを行う。
食塩、蛋白質の制限
降圧剤、利尿剤、免疫抑制薬、副腎皮質ステロイド剤。抗血小板薬
経過と予後
・潜在型の15年生存率は70%であり、進行型は予後不良といわれる。
・GFRが50%以下になると15年生存率は0%となる。

ネフローゼ症候群
・種々の病的機序によって子宮体基底膜の蛋白透過性が異常に亢進し、大量の血清蛋白が尿中に失われるため、低蛋白血症を生じ、高度の浮腫を呈する症候群。
分類
①一次性ネフローゼ
・原発性糸球体腎炎から発声するもので全体の80%を占める。
②二次性ネフローゼ
・SLE、糖尿病、アミロイドーシスから起こるものが多い。
疫学
・小児から若年者では男性が多く、中年以後は性差なし。
病理と症状
①大量蛋白尿
・3.5g/日以上に増加する。
②低蛋白血症
・血清総蛋白量が6.0g/dl以下に低下する。
 アルブミン3.0g/dl以下、γグロブリン低下、αグロブリン増加。
③浮腫
・血漿膠質滲透圧の低下の為に起こる。
・レニンアンギオテンシン―アルドステロン系や
 心房Nナトリウム利尿ホルモンの反応が関与する。
④高脂血症
・血清コレステロール、リン脂質が増加する。
⑤その他
・血液凝固能促進、急性腎不全、易感染性など。
治療
・浮腫や低蛋白血症に対してはループ利尿剤の投与。
・食事療法として、高カロリー食、食塩制限、蛋白の調整を行う。
経過と予後
・90%は寛解と増悪の経過をとるが、ステロイド剤の適応となる。
・ステロイド剤が不適応ナ場合には慢性腎不全に移行する。

腎不全
・腎機能が進行性に低下し、生体のホメオスタシスを
 維持できなくなった状態をいう。

急性腎不全
・それまで正常な機能を営んでいた腎臓に突然障害が起こり、
 腎機能が急激に低下し、高窒素血症を呈する症候群である。
分類
①尿量による分類
・乏尿性急性腎不全、非乏尿性急性腎不全に分けられる。
②成因による分類
・腎前性急性腎不全(腎血流量の不足によるもの)には、
 心筋梗塞、心不全、脱水、出血、嘔吐、下痢、火傷、敗血漿、
 アナフィラキシーなどがあり、腎臓の虚血状態が24時間続くと
 腎実質に異常が起きてくる。
・腎後性急性腎不全(腎盂以下の尿路閉塞による尿細管内圧上昇で、
 GFR減少によるもの)には、尿路結石、前立腺疾患、
 骨盤内腫瘍などがある。
症状(特に腎前性)
①発症期
・原因が加わってから、乏尿や高窒素血症が出現するまでの時期。
・この時期は数日間続く。
②乏尿期
・尿量が400ml/日以下の状態の時期。
・この時期は1~3週間続く。
・意識障害、痙攣、悪心嘔吐、肺水腫、うっ血性心不全、
 高血圧、肺炎などがみられる。
③利尿期
・2l/日以上の多尿を呈する時期で腎機能は正常ではない。。
・この時期は1週間続く。
④回復期
・腎機能が完全に回復する時期。
・3ヶ月~1年以上かけて
治療
・急性腎不全の原因の除去。
・乏尿期移行は利尿剤の投与、水分制限(尿量+500ml)、
 高カロリー食(2000kcal)、低蛋白食(20~40g)、
 減塩(0~3g)、尿毒症状の出現では透析療法を行う。
経過と予後
・死亡率は50%である。
・死因は高カリウム血症による心不全や感染症が多い。

慢性腎不全
・不可逆性の腎機能低下が数ヶ月以上持続し、
 体液のホメオスタシスが不可能となった状態。
・末期腎不全とは、透析療法を導入しない限り、致死的な
 慢性腎不全となるものをいう(GFRが5~10ml/分)。
原因
・慢性に経過する糸球体疾患が最も多い。
・慢性腎盂腎炎、嚢胞腎、糖尿病、SLE、痛風、
 腎硬化症からの続発もある。
症状
・自覚症状のないものもある。
・GFRの低下(30%以下で診断)、高窒素血症、高血圧、
 浮腫、心不全、高カリウム血症、低カルシウム血症、
 ビタミンDの活性化の低下、骨の脱灰、貧血、尿毒症など。
・尿毒症による、食欲不振、悪心嘔吐、消化器出血、意識障害、
 はばたき振戦、尿毒性ニューロパチー、心不全、肺水腫など。
治療
①食事療法
 蛋白質、食塩、カリウムなどの制限。
②薬物療法
・降圧剤、利尿剤、ジギタリスなどの投与。
③その他
・透析療法、腎移植など。
経過と予後
・透析療法では5年生存率は50%。
・腎移植では5年生存率は70%。

腎盂腎炎
・一般細菌の感染により、腎実質、腎盂腎杯系に起こる
 非特異的な炎症である。
疫学
・20~40歳代に多く、男女比は1:3

急性腎盂腎炎
・原因菌としては大腸菌が最も多い。
症状
・悪寒、戦慄、発熱、腰痛、腰部の叩打痛、
 頻尿、排尿痛、悪心嘔吐など。
検査所見
・尿検査では、好中球、細菌の検出がみられる。
・血液検査では、好中球増加、赤沈やCRPの上昇など。
治療
・安静臥床、水分補給、薬物療法など。

慢性腎盂腎炎
・原因菌は大腸菌、緑膿菌、クレブシエラなどがある。
病態
・慢性の細菌感染による炎症の持続や反覆がみられる。
・腎実質の破壊や瘢痕化が起こってくる。
検査
①尿検査
・間欠的に膿尿や細菌尿がみられる。
・尿細管に障害があれば尿濃縮力が低下してくる。
症状
・特異的な症状はない。
・微熱、倦怠感、腰痛などがみられる。
治療
・日頃の水分補給を十分にし、尿量を増やす。
・急性増悪期には急性腎盂腎炎と同じ治療を行う。

腎の腫瘍
1.腎細胞癌(グラヴィッツ腫瘍)
・尿細管上皮から発生する癌である。
・腎の悪性腫瘍全体の80%%を占める。
・40歳以降に好発し、男女比は2:1である。
3大症状
・3大症状には、血尿、腫瘤、疼痛がある。
・血尿は顕微鏡的なものから肉眼的なものまである。
・腫瘤は腰部ではなく腹部腫瘤として触知される。
・疼痛は腎被膜の緊張やによって生じてくる。
その他の症状
・内分泌活性、副甲状腺ホルモン(パラソルモン)、
 エリスロポイエチン、ACTHの分泌が亢進してくる。
転移
・肺や骨に転移しやすい。

2.腎芽細胞癌(ウイルムス腫瘍)
・胎生期の腎組織に由来する癌である。
・腎の悪性腫瘍全体の6%程度を占める。
症状
・巨大な腹部腫瘤を形成してくる。
・全体の60%に高血圧、虹彩欠損、泌尿器奇経、色素母斑の併発。
・血尿、疼痛の頻度が低い。

腎尿路結石症
・結石成分の中心となるのは硝酸カルシウム、燐酸カルシウム、
 尿酸、燐酸アンモニウム、燐酸マグネシウムなどであるが、
 80%は硝酸カルシウムである。
原因
①特発性
・特発性のものが最も多い。
②続発性
・高カルシウム血症をきたす疾患によるものが多く、それには、
 上皮小体機能亢進(パラソルモン)、ビタミンD・Aの過剰摂取、
 腫瘍の骨転移などがある。
・その他、尿細管アシドーシス、高尿酸血症、尿路感染症、
 シスチン尿症などもある。
症状
①上部尿路結石症(腎、尿管)
・側腹部から尿管の走行に走る疝痛発作、悪心嘔吐、顔面蒼白、
 冷や汗、血尿、無尿、腎盂腎炎、水腎症など
・80%以上に結石の自然排出がある。
②下部尿路結石(膀胱、尿道
・疝痛発作は余り診られない、頻尿、排尿痛、残尿感、血尿、
 膀胱粘膜の刺激症状、排尿異常、尿閉などがある。
検査
・短順X線では尿酸結石は移らない
治療
①疝痛発作
・鎮痙剤、鎮痛剤の投与などを行う。
②食事や予防
・水分摂取をよくし尿量を増やす、尿pHを7.0以上にするために
 肉を減らして野菜を多くする。
③手術
・疝痛発作を繰り返すときや結石が大きくなりすぎたときに行う。

膀胱癌
・泌尿器科領域では最も多い腫瘍である。
・男女比は3:1である。
・組織学的には移行上皮癌(90%)、扁平上皮癌、腺癌と続く。
原因
・ベンシジン、ラフチルアミン、ジクロルベンシジンなどを
 扱う人(染物職人)に多く発症する。
・喫煙によるものもあるといわれている。
・その他、ウイルス感染、慢性機械的刺激などがある。
症状
・血尿(鮮血尿)、全血尿、排尿困難、尿閉、頻尿、排尿痛など。
検査
・生検により確定診断される。
治療
・基本的には外科手術を行う。
経過と予後
・膀胱内再発が多いが、再発防止にBCG注入が有鉤である。

膀胱炎
・感染経路は通常では尿道からの逆行性感染が多い。
・起因菌としては、急性は大腸菌、慢性はグラム陰影桿菌が多い。
・性的活動期の女性に好発する。
・症状としては、頻尿、排尿痛、尿混濁が3大徴候となる。
・その他の症状には、残尿感などがある。
・治療としては、十分な水分摂取と化学療法を行う。





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