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東洋医学概論ノート00「東洋医学概論ノート」

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東洋医学概論ノート全文

第1章 基礎理論
1.東洋医学の起源と発展
■1)東洋医学の特徴
・東洋医学は、患者の心身を全体的に捕らえる立場から診察し、
 総合的に分析、病証を立て治療する。
・西洋医学と東洋医学の特徴を比較すると次のようになる
西洋医学:自然科学思想に基づき、実験実証によって客観的にものごとをとらえる
測定値、レ線像などの絶対的評価に基づき病名を決める
治療の目的は主に病巣を取り除くこと(外科的処置、化学合成薬)
東洋医学:自然哲学思想に基づき、経験の蓄積を重視し主観的にものごとをとらえる
陰陽、表裏、寒熱、虚実などの相対的評価に基づき、病証を決める
治療の目的は自然治癒力を高め病状を回復させること(あん摩鍼灸、湯液など)
☆西洋医学でいう病名=東洋医学における病証

(2)東洋医学を生み出した思想的な特徴
①エネルギーとして働く気の存在
自然界に気が存在し、生き物はその気を取り入れ、生命活動を維持する
体にある気は生命力や活動力の源として働いている
②天人合一思想
天の法則を人にあてはめて考え、天を大自然(大宇宙)、人を小自然(小宇宙)としてとらえる思想
人体の形と機能とが天地自然と相応しているとみる思想
・霊枢…人と天地は相い応ずるなり」
・素問…天は人をやしなうに五気をもってし、地は人をやしなうに五味をもってす
③天地人三才思想
天の陽気と地の陰気とが調和することによって、人の気が生成されるとする思想
天:上部、浅い位置…天の陽気と感応する
地:下部、深い位置…地の陰気と感応する
人:中部、中位の深さ…天地陰陽の中和の気と感応する
・天地人三才思想は人体の三焦理論の考え方や診断における三部九候診法に関係している
④未病治(未病を治す)
病気を未然に防ぎ、健康を維持するための治療
⑤心身一如
心と身体は一体のものとして影響しあうということ

■2)東洋医学の起源
(1)原始的医術
・中国における原始時代の医術は、本能的な医術である
★本能的医術
*傷口をなめる
*痛いところを撫で、さする(手当て)
*薬になる食物を接種
・中国の医術が他の文化圏と違っている点は、痛むところに石を用いて治療したこと
石(石針)や骨針(魚の骨など)を用いた
・シャーマンによる宗教的医療が行われるようになった
・撫でるさするなどの医療行為は導引按に発展した
・薬になる食物を摂取する行為から湯液療法が発展した
・湯液の起源
伝説上の人物である神農が「草根木皮」嘗めて「神農本草経」を著した

(2)気の思想による生理病理観
(3)鍼灸、湯液、気功、導引の起源
省略

■3)東洋医学の発展
(1)黄帝内経の成立
・東洋医学の最古で体系的な医学書
黄帝内経」
・黄帝内経の著者とされる人物
伝説上の人物とされる黄帝
・黄帝内経:「素問(9巻)」と「霊枢(9巻)」からなる
・黄帝内経には解剖、生理や、気の思想、天人合一思想、陰陽五行論、臓腑論、経絡論、診断論、及び鍼灸や導引按などの治療について記載されており、鍼灸医学の基礎を築いた
・難経
黄帝内経の診断や治療に関する部分を開設した、鍼による臨床実践の手引き
著者:秦越人(扁鵲)
難経は秦越人(扁鵲)によりあらわされ、黄帝内経の診断と治療に関連在る内容について解説した
・張仲景は湯液の「傷寒雑病論」、後世の傷寒論と「金匱要略」を著した

2.陰陽五行論
■1)陰陽学説
(1)期の思想
天地万物の生成では宇宙の始まりで、
まだ形もなく天地が分かれていない混沌とした状態を太極(太易という)
その中に気が生じて分化し、清軽な気(天の陽気)と重濁な気(地の陰気)とになった
清軽な気は上がって天となり、重濁な気は下って地となる
天の陽気と地の陰気が交わり、万物が創られる
万物は陰陽からなるため、陰や陽の性質を持つ
また陰陽の二気の相互の関係によって、自然現象に変化を引き起こしている
・中国で言われる「気」日本のものと比べて実態を伴ったもの
・人の生命のはじまり
両親から陰(母)、陽(父)の精機を受けて、これらが合して一つの生命が始まる
生後の活動は天の陽気(空気中の活力源)と、地の陰気(飲食物中の活力源)を取り入れて、生命活動を維持する
体内の陰陽の気が調和していれば健康であり、陰陽の気が不調和になると疾病になり、気が散逸すると死ぬ
(2)陰陽概念の発声
陰都陽の性質について見ると、一般には積極的に動くもの、外向的、上昇的、温熱的、明瞭なものなどはすべて陽に属する
他方、静止したもの、内向的、下降的、寒冷的、暗いものなどはみな陰に属する

(3)陰陽論の特徴
陰陽の特徴を4つあげる
①陰陽の対立と制約
陰陽は相互に対立する関係にあり、相対する陰陽という
陰陽は相互に制約し合うことによって、相手の活動を妨げ、統一を保つ
・対立し制約し合う陰陽の例
方向性では陽は上、外、末端、出、昇、浮、凸であり、
陰は下、右、内、中心、入、降、沈、凹
自然界では陽は昼(朝)、夏、春、南、東、熱(温)、日、明であり
陰は夜(夕)、冬、秋、北、西、寒(涼)、水、暗である
*方向性
陽:上(左) 外 末端 出 昇 浮 凸
陰:下(右) 内 中心 入 降 沈 凹
☆東を背に立ったとき左が南にあたるので陽
*自然界
陽:昼(朝) 夏 春 南 東 熱(温) 日 明
陰:夜(夕) 冬 秋 北 西 寒(涼) 水 暗
*人間、人体
陽:男 幼 外側 脊背 上部 六腑 衛 気
陰:女 老 内側 胸腹 下部 五臓 営 血

②相互に依存する
陰陽は相互に相手の存在を必要とし、支えあい、協力し合う関係にある
陽である男と陰である女は相互に相手の存在を必要としている
一方だけで単独には存在し得ない
気(機能)は陽に属し、血(物質)は陰に属している
気は血の帥であり、血は気の舎
依存する関係を素問では、
「陰は内にありて、陽の守りなり、陽は外にありて陰の使いなり」
と述べている
☆血は気の入れ物、血から気が作れる
③陰陽の消長平衡
陰と陽は常に一方に偏らないように、量的な変化を起こし平衡を維持している
陰が減ればそれに応じて陽が増える
=陰消陽長
陽が減ればそれに応じて陰が増える
=陽消陰長
冬から春、春から夏になるにつれ、陰が減り洋画増える、これは陰消陽長の過程である
夏から秋、秋から冬になるにつれ、陰が増え陽が減る、これは陽消陰長の過程である
④陰陽の相互転化
陰と陽は極限に達すると陰から陽へ、陽から陰へと質的に相互に転化する
陰極まれば陽となり、陽極まれば陰となる
例えば「寒極まれば熱を生じ、熱極まれば寒を生ず」、これは自然界だけでなく、疾病の発展過程においても当てはまる
★消長平衡は量的な変化
相互転化は量的な変化による質的変化
⑤その他
この他に、陰陽の特徴として陰陽の可分がある
陰陽の可分は、陰陽をさらに陰陽で分けることで、陰中に陰陽があり、陽中に陰陽がある
例えば昼は陽であり、、明け方から日中に至るは、陽中の陽、日中から夕方にいたるは陽中の陰である

■2)陰陽論の医学上の具体的な応用
(1)人体の組織構成
人体内部は陰陽の対立と統一の関係で成り立っている
人の陰陽を言えば、外は陽をなし内は陰をなす、背は陽となし腹は陰となす、臓は陰となし腑は陽となす
・五臓間の陰陽
さらに五臓間の陰陽では、心と肺は胸中(陽)にあるため、
心は陽中の陽
肺は陽中の陰にあたる
脾、肝、腎は腹中(陰)にあるため、
脾は陰中の至陰、肝は陰中の陽、腎は陰中の陰
☆至陰とは宝という異味で、脾は中央にあたる

(2)生理機能の陰陽
人体の生理活動は物質が基礎である
人体機能の運営はすべて「気」の働きによっている
食べ物が消化されて作り出される陽の気は「衛気」とも言われ
外部から侵入するものに対する防衛を行う
・食べ物から産生される陰の気は「営気」といい
体の栄養や実質的な運動のエネルギーになる

(3)病理変化の陰陽
・体の内外、表裏、、上下、臓腑などの陰陽が平衡を保っているときが健康であり、
疾病の発生は陰陽が協調を失ったことを意味している
・陰陽の失調とは、陰陽の偏盛や偏衰ということである
<偏盛>
・陰陽の偏盛には陰盛と陽盛がある
陰陽のいずれかの一方が正常な水準よりも高くなっている病変である
・陽盛で陽勝つと熱し
陰盛で陰勝つと寒える
・陽盛を「陽実」、陰盛を「陰実」ともいう
<偏衰>
・陰陽の偏衰には、殷墟と陽虚がある
陰陽のいずれかの一方が正常な水準よりも低くなっている病変である
・陽虚するときは外こごえ、陰虚するときは内熱する

(4)診断と治療での陰陽
・診断は体表面に現れる変化をとらえて、陰陽の失調を判断する
・治療では陰陽の失調を調整することで
治療原則はその不足を補い、その猶予を瀉し
陰陽の平衡をかいふくさせる
これを虚すれば補い、実すれば瀉する

(5)三陰三陽について
鍼灸医学の三陰三陽は体表部の経絡区分が陽分で3面、陰分で3面あることから来ている

■3)五行学説
五行とは木、火、土、金、水の五種の物質で、五材ともいう
万物は五行によって構成され、そのいずれかの特性を持つ
大宇宙である自然や、小宇宙である人は、すべてこの五行に分けられ、その特性に属する
五行学説は類似するものを五つに分ける分類の基準
(2)初期の頃の素朴な五行
水:潤下
火:炎上
木:曲直
金:従革
土:ここに稼(「しょく」はのぎへんが正しい)
(3)五行と気の思想
物質を構成する元素としてではなく、五種の気の有形化したものととらえる
(4)五行の相互関係
後述
(5)五行説の効用と限界
後述
(6)五行学説の特徴
A.事物の五行特性
・木:曲直
木は曲直をいう
成長、昇発の作用を持つ
・火:炎上
温熱、上昇の特性を持つ
・土:ここに稼す
生化、継承、受納の作用を持つ
土は五行の中でも重要
★:取り入れるという異味
☆生化:生成変化
・金:従革
粛降、収斂、清潔の作用を持つ
★粛降:ゆっくりとおろす
・水:潤下
寒涼、滋潤、向下性、

<分類表>
自然界と人体を五行の特性に基づき、分類する
木 火 土 金 水
自然 五季 春 夏 長夏 秋 冬
五能 生 長 化 収 蔵
五気 風 暑 湿 燥 寒
五色 青 赤 黄 白 黒
五味 酸 苦 甘 辛 鹹
五方 東 南 中央 西 北
時間 平旦 日中 日西 日入 夜半
五音 角 徴 宮 商 羽
人体 五臓 肝 心 脾 肺 腎
五腑 胆 小腸 胃 大腸 膀胱
五官 目(眼) 舌 口唇 鼻 耳
五主 筋 血脈 肌肉 皮毛 骨髄
五志 怒 喜 思 憂 恐
五声 呼 笑 歌 哭 呻
五変 握 憂 えつ がい 慄
☆長夏:夏の終わり、別名土用
⑧五音は人の声の音階を示す
角:角のぶつかりあう音(ミ)
徴:特徴のある高い声(ソ)
宮:説教する時の音(ド)
商:商売人のしゃべる音(レ)
羽:短く高い弱弱しい音(ラ)
⑪五官とは五臓のつかさどる器官のこと
肝は目をつかさどる
心は舌をつかさどる
脾は口唇をつかさどる
肺は鼻をつかさどる
腎は耳をつかさどる
☆二つある腎臓の内、一つは排泄にかかわり、一つは両親からの生命力を受け継いでいる
★五官は五根とも言われる(五臓の根という意味)
⑫五臓は五主を養い、その機能をつかさどる
筋:間接について身体を動かすもの
血脈:血管にあたる
肌肉:筋腹のこと、皮下脂肪を含む、栄養や水分を蓄える
☆筋腹とは肉の盛り上がった部分のことで、東洋医学では筋腹部分と骨につく部分とで筋肉を分けて考える
皮毛:皮膚のこと。外邪を防ぎ、理を開いて汗を出す
呼吸器の弱いヒトは皮膚が弱い
☆外邪::気候、環境の変化など
☆理:毛穴
骨髄:骨の形成に関係する
☆骨の強さは遺伝の影響が強い。腎は親から受け継ぐ生命力なので、そこでつながる。
※肌肉:キニク
⑬五志は五情ともいわれ、情動変化をいう
各感情は五臓から発する
怒は肝より起こり、怒が過ぎると肝を傷る(やぶる)
喜は心より起こり、喜び過ぎると心を傷る
思は脾より起こり、思い過ぎると脾を傷る
憂は肺より起こり、憂い過ぎると肺を傷る
恐は腎より起こり、恐れ過ぎると腎を傷る
⑭五声は人の発声の特徴をいう
肝を病むと人をむやみに呼び、大声を出す
心を病むとよく笑い、言語がはなはだ多くなる
脾を病むと鼻歌を歌い、歌うように話しかける
肺を病むと単純なことに哭きやすく、泣き言を言うようになる
腎を病むとうなり声を出す
⑭五変は参考程度
五臓を病むことによって身体に現れる変化のこと
※えつ=口へんに歳、しゃっくりの意
※がい=亥へんに欠、せきの意

■人体の生理病理の五行分類
五行 木 火 土 金 水
五臓 肝 心 脾 肺 腎
五神 魂 神 意智 魄(気) 精志
五液 涙 汗 涎 涕(ヨダレ)唾(つば)
五臭 せん()焦 香 せい 腐
五有余 怒 笑 喝息 満 (省略)
五不足 恐 憂・悲 四肢不容息利少気厥・逆 (省略)
五畜 鶏 羊 牛 犬 豚 (省略)
五穀 麦 黍(ショ) あわ 稲 豆 (省略)
五果 李 杏 棗 桃 栗 (省略)
五菜 韮(キュウ) カイ 葵(キ) 葱(ソウ) 霍(カク) (省略)
五役 色 臭 味 声 液 (省略)
五華 爪 面・色 唇 毛 髪
五労 久行 久視 久坐 久臥 久立

①五神は五精とも言われ、五臓の中に収まっている
・魂=霊魂
肝は魂を蔵す。
魂は判断力や計画性などの精神活動を支配する
肝兪→魂門
・心は神を蔵す。
神は五神の中の最上位にあり、知覚・記憶・思考・意識など、すべての精神活動を支配する
心兪→神堂、神道
☆神=精神活動のこと
・脾は意智を蔵す
思考して深く思いをめぐらせる
脾兪→意舎
・肺は魄を蔵す
冷静に注意深く観察する
肺兪→魄戸
・腎は精志を蔵す
先々の目的に向かって、思いを持続させる
腎兪→志室
②五液
五臓が作り出す体液をいう
・肝の液は涙である
☆肝は目をつかさどるので
・心の液は汗である
心は火に属する
・脾の液は涎
☆脾は口をつかさどるので
・肺の液は涕である
☆肺は鼻をつかさどる
・腎の液は唾である
※涕:鼻汁
③五臭は五香とも言われ、体臭をいう
・せん
油くさいこと
・焦
焦げ臭い
・香
芳しくさい(甘い香り)
・せい
生臭い
・腐
くされ臭い
※五臭:あぶらくさい、こげくさい、かんばしい、なまぐさい、くされくさし
※せん:羊へんに壇のつくり
※せい:月へんに星
※あわ:のぎへんに田の下に殳
※カイ:韮の左側に夕、らっきょうの意
葵:ふゆあおいの意
霍:大豆の葉の意
④五華
臓腑の気が半影されている
・爪:筋の余りである
・面色:メンシキ、顔色。心臓の影響は顔色に出やすい
・毛:体毛
・髪:頭髪、加齢によって腎の力が抜けると黒色が抜けていく

⑤五労(p114)
偏った労働によって臓腑を損なう
・久行:行動しすぎる(筋を使いすぎる)と肝をおかす
・久視:精神活動が強い人は眼を使う
・久坐:座りっぱなしの人は胃腸が弱い
・久臥:寝たきりだと呼吸器を損なう
・久立:たち仕事の人は腰痛持ちが多い

B.五行の生克と乗侮(五行の相互関係)
・相生・相克関係を理解することが重要
相生:促進、助長、養成の関係
相克:成長と機能に対して抑制と制約の関係
・五行の相生と相克の関係は自然界の正常で法則的な現象と考え
また人体で言えば正常な生理現象と見る

①五行の相生関係(母子関係)
・相生関係とは、五行の一つが特定の相手を生ずる(育成・保護、援助)の関係で循環を繰り返す
・五行相生の順序
木生火、火生土、土生金、金生水、水生木
・木生火の母子関係では木は火の母であり、火は木の子である
②五行の相剋関係
相剋関係とは五行の一つが特定の相手を克する(勝つ、抑える、支配する)の関係で循環を繰り返す
・五行相克の順序
木克土、土克水、水克火、火克金、金克木

③五行のその他の関係
五行の相乗関係と、相侮関係は、自然界の異常で人体で言えば、病的現象とみる
・相乗関係
正常な制約の限度を越えて、強くなりすぎたために、相克にあるものを襲う関係である
木が盛んになりすぎて、木が土の働きを失わせること=木乗土
・相侮関係は相克の反克関係。相手にいつでも勝てると侮っていると、極度に弱ったときに逆にやられてしまう
水はいつでも火を克することができると侮っていると、水が衰えたとき逆に火が水を弱める=火侮水

4)五行学説の医学への応用
(1)五臓の生理機能を説明する
教科書参照
(2)五臓間の相互関係
五臓の機能や活動は、孤立したものではなく、相互に関連を持っている
・相互援助の関係でいえば、
肝生心、木生火であり、肝が血を貯蔵して心を助けることである
・五臓の相互制約の関係でいえば
心の火は腎の水に制約されている
これを腎は心の主である

(3)疾病の伝変を説明する
・相生関係により、疾病の伝変では、腎に関連した疾病は、往々にして肝の疾病を引き起こす
子が母の気を使いすぎることによって、子の疾病が母に影響を及ぼすこともある
・相剋関係による伝変は、相乗と相侮がある
相乗関係:肝が強すぎて脾を抑えすぎる
脾が弱すぎて肝に抑えられすぎる
相侮関係:肝が弱すぎて脾に侮られる
脾が強すぎて肝を侮る
(4)診断と治療に用いる
A)診断
B)治療
相生関係を治療に応用する時は、難経六十九難を用いる
虚するときはその母を補い、実するときはその子を瀉する
例)
肝虚証…腎経の合水穴(陰谷)、肝経の合水穴(曲泉)を用いて治療する
肝実証…心敬の栄火穴(少府)、肝経の栄火穴(行間)

===============================
第2章 東洋医学の人体の考え方
===============================
・東洋医学の人体の仕組みは、気の類と形の類、経絡類からなっている
・気の類は、活力として働くもので、これには精、気、神があり三宝と呼ぶ
・形の類とは、身体の構造を形作るもので、臓腑、五主、五華、五根などがある
・経絡類とは、気血の通路のことで、内に臓腑と結びつき、外に頭・体幹・四肢・体表部と連絡している

1.気血津液
■1)気の生成と種類
・気、血、津液は臓腑、器官、経絡などの整理活動を営む源となるもの
・気は活力があり、休むことなく活動する、精微な物質である
・血は血液をさす、津液は体内の正常な水分の総称である
・気、血、津液は精が生成変化したものである
・両親より受け継いだ先天の精と、水穀から得た後天の精から原気がつくられる
・天の陽気(呼吸)、地の陰気(水穀)からは、宗気、営気、衛気、血、津液が作られる

■2)精と神
(1)精
精には先天の精と、後天の精がある
A.先天の精
・先天の精とは、両親より受けついた精
・先天の精は人が誕生した後、五臓の腎にしまわれ(特に右腎)、発育、成熟、生殖という基本的な生命活動を起動させる
・右の腎は命門であり、精を宿す
・先天の精は後天の精によって補給され、生きている間は枯渇することはない

B.後天の精
・後天の精とは、飲食物より得られる精をいい、脾胃で造られる
・後天の精からは、営気、衛気、宗気、津液、血が造られる
・後天の精は先天の精を補給し、生命活動を支える

(2)神(神気)
・神とは五臓の中に収まって、生命活動を支配、統制している気である
B)神の分類
・神を分類すれば、神、魂、魄、意、志があげられる
・五臓の蔵するところ、心は神を蔵す、肺は魄を蔵す、肝は魂を蔵す、脾は意を蔵す、腎は志を蔵す
①神
神は神気の中で最上位にあり、生命現象そのものであり、生体のあらゆる活動を主宰している
・神は心拍動や呼吸を適切に行わせる
・知覚活動や精神活動を主宰する言語表現を正しく行わせる
・神は情動を統制する
②魂
・神が意識的活動を支配するのに対して、魂と魄は無意識的、本能的活動を支配し、人格に深く関わる
・魂は陽性の霊を指す
・人の本性を支える神気である
☆本性:普段は隠れていてわからないが、生まれつき持っているその人の性質。自己への信頼、自信につながるもの
③魄
・魄は陰性の霊を指す
・本能的行動や、痛みやかゆみなどの感覚をもたらす
④意
単純な記憶や思想を含んだ心をさす
⑤志
目的をもって思ったり、思いを持続させる心をさす

■3)気
・気の名称はその主な活動部位と働き方によって異なる
(1)原気(元気)
原気とは両親から受け継いだ先天の精が変化生成したもので、生命活動の原動力となる
食欲、性欲、そのほか生きようとする欲求をもたらす
原気は臍下丹田に集まる
(2)宗気
肺において後天の精と天の気が交わって作られる
宗気は胸中に集まる
宗気は五臓の心と肺と三焦のうちの上焦の活動を支える
心拍動、呼吸、発声を行わせる
(3)営気(栄気)
営気は後天の精から得られる陰性の気(水穀の精気)をいう
営気は津液を血に変化させ、血とともに脈中を行く
臓腑や諸器官を栄養しそれらの活動を支える

(4)衛気
・衛気とは後天の精から得られる陽性の気で、水穀の悍気ともいう
・衛気は脈外をめぐる
・特に体表近くで活動し、皮膚を温め、理を開闔し、皮膚を潤す
・外邪に対する防衛的な役割をする
☆理:肌のきめ
☆開闔:開いたり閉じたりすること
☆理の開闔:毛穴の開け閉め

(5)その他の気の概念
A.真気(正気)
・真気とは先天の気と後天の気からなるもので、人体の正常な活動を支える気を総称したものである
☆先天の気:原気
・その働きを要約すると次の5つがある
①推動作用
人の成長、発育やすべての生理的活動および新陳代謝を推し進める働き
②温く作用
臓腑、器官など、すべての組織を暖め体温を保持する働き
☆く:日の右に句、下にれんが
③防御作用
体表において外邪の侵入を防御する働き
④固摂作用
血、津液、精液などをつなぎとどめる働き
血が脈外にもれないようにしたり、汗や尿がむやみにもれ出るのを防いだりする
⑤気化作用
精が気に、気が津液や血に変化したり、津液が汗や尿となって体外に出る働き

B.臓気
五臓におさまり、それぞれの活動を支えている気
例)脾気は脾の働きを支える、

C.経気
経絡中を行き、全身をめぐり、それぞれの経絡の活動を支えている気をいう

D.胃気
胃を働かせる気、および胃の働きによって得られた後天の気のことをいう
胃気の有無は予後に重大な影響を及ぼす
脈診の中脈で胃気をうかがう

■4)血
血とは脈中を流れる赤色の液成仏をいう
A.血の生成
血は精から作られる
精血同源
★精血同源:精から血を、血から精を互いに作り出すことができるということ
脾は水穀の精微から得た営気と津液を合成して血を作る
★精微:エキス
肺が取り入れた気が血の生成に関与する

B.血の働き
血は営気とともに脈中を流れ、四肢や臓腑を潤し、その働きを支える
これを血の滋養作用という

C.血と五臓の関係
血は心肝脾と関係が深い
心は脈を介して血を全身に送り出し、血の循環や拍動に関与する
肝は血を貯蔵し、また昼夜の別や活動する部位、器官に応じて血量を調節している
脾は血の生成に関与し、また営気を介して血が脈外に漏れないようにしている
・脾の働きをまとめて何作用というか
統血作用

■5)津液
津液とは津と液のことで、体内の水分を総称したものである
津液の源は飲食物である
津液の潤す働きを滋潤作用という
A.津
津とは陽性の水分をい、澄んで粘り気がなく主として体表部を潤す
体温調節にも関与する
また汗や尿となって体外に排泄される
B.液
液とは陰性の水分をいい、粘り気があり、体内をゆっくりと流れるもので、骨や髄を潤す
体表部では目鼻口などの粘膜や皮膚に潤いを与える
C.津液と臓腑の関係
津液は脾胃(中焦)、肺(上焦)、腎、膀胱(下焦)と関係が深い
脾胃は水穀から津液を分離し、脾の働きによってこれを上部の肺へ送る
肺は脾胃から送られた津液を全身に散布する
これを肺の宣発粛降作用という
腎は津液を管理し不用のものを膀胱に貯めて尿として排泄する

2.五臓六腑(蔵象)
A.東洋医学の内臓観
東洋医学では、内臓についてこれを単なる体の構成部分ではなく、経脈とならぶ人体の生理、病理現象や精神活動の中心となるものとしてとらえる
臓腑が精神や体の各部に影響を及ぼすのは、精(血、津液を含む)と気と神を介してである

■1)臓腑概説
(1)臓腑とは
臓腑とは五臓(肝心脾肺腎)、六腑(胆、象徴、胃、大腸、膀胱)、および奇恒の腑(骨、髄、脳、脈、胆、女子胞)を指す
五臓の共通の特性は主として神気を内に蔵している実質器官である
生命活動の中心となって働く
六腑は中空器官で飲食物を受け入れ、これを消化して次の器官に送るとともに、水分の吸収、配布、排泄に関与する
奇恒の腑とは、形体は腑に似ているが、性質や働きは臓に似ているものである
臓腑間には表裏の関係があり、一対となって五行の内の一行に属している
肝と胆は木に、心と小腸は君火、心包と三焦は相火に、肺と大腸は金に、腎と膀胱は水に属する

■2)五臓の機能
(1)心
①心は神を蔵し五臓六腑を統括する
神は人間の生命にとって最も重要である
心は生の本
心は君主の官
神明これより出づ
☆神明出づ:精神活動を発揮すること
心は五臓六腑の大主といわれている
①心は血脈を主る(つかさどる)
心は脈を介して血液を全身にくまなく運行させる
③心の状態は顔面の色艶に反映する
④心は舌に開竅する
心は舌の運動を支配し、味覚をつかさどる
⑤心の液は汗である

(付録)心包(心包経)と中
心包とは心を包んで保護し、心に代わって邪を受ける
心包は心包絡、あるいは中ともいわれる
中は臣使の官、喜楽これより出づ

(2)肝
①肝は魂を蔵し、判断力や計画性などの精神活動を支配する
また、身体の活動を円滑に行わせる
肝は将軍の官、謀慮これより出づ
☆計画を立てる、はかりごとをする
☆肝は罷極の本
②肝は血を蔵する
肝は血液の貯蔵庫となり、身体各部の血流量を、活動状況に応じて調整する
③肝は筋を主る
肝は筋の運動を支配する
④肝の状態は爪に反映する
爪は筋の余りであるとされ、筋とともに肝の状態をよく反映する
⑤肝は目に開竅する
⑥肝の液は涙である
⑦肝は疏泄を主る
☆疏泄:円滑に流す
「肝は疏泄を主る」とは、肝には気(神を含む)や、血の流れを円滑に、かつのびやかにする働きがある
☆神:五神、つまり精神活動のこと

(3)脾
①脾は営を蔵し、後天の本となる
脾は胃と一体となって働き、飲食物の消化や吸収をつかさどり、後天の精を取り出す
脾胃は倉廩の官、五味これより出づ
②脾は肌肉をつかさどる
③脾は口に開竅し、その状態は唇に反映する
④脾は津液を作り出す
脾は水穀から津液を吸収し肺に送る
⑤脾の液は涎
⑥脾には
運化作用、昇清作用、統血作用
☆運化:消化、吸収、運搬
☆昇清:☆清いものを上らせる
☆統血:血に統一性をもたせる
・運化とは、水穀を消化して、後天の精や津液、血、営衛などを吸収して全身に送り出す元である
・昇清とは、運化に際して吸収したものを、胃から上の肺へ送ることをさす
また、臓腑、器官が下がらぬようにする
・統血とは
営気を脈中に送ることにより、血が脈外へ漏れずに順調にめぐるようにする働きを指す

(4)肺
①肺は気を主る
・肺は呼吸を通して天の陽気を体内に取り入れる
・肺は気の本
・肺は相ふの(扶でも可)官
☆にんべんに甫の下に寸
そうふ:相談相手になる。心の相談相手
・治節これより出づ
☆節度をもって治療する
②肺は皮毛をつかさどる
衛気と津液を巡らせることにより、皮毛に潤いを与えこれを養う
③肺は鼻に開竅し、その液は涕である
④肺は宣発・粛降をつかさどり水の上源となる
・宣発とは津液と気と全身に散布し行き渡らせたり、理を調節することをさす
理が開くと汗が出る
・粛降とは津液を腎や膀胱に輸送する作用
・肺には水道通調作用がある

(5)腎
①腎は精を蔵し、生命力の根源である原気をもたらす
腎は作強の官、伎巧これより出づ
②腎は津液を主り、全身の水分代謝を調節する
津液が不要となったあと、腎がこれを集めて処理する
③腎は骨をつかさどり、その状態は髪に反映する
④腎は耳と二陰に開竅する
二陰の前陰は小便口、後陰は大便口である
⑤腎の液は唾である
⑥腎は納気をつかさどる。これは深い呼吸に関わるもので、吸気を臍下丹田まで取り入れて精を元気に化し、これを活性化する

(付録)命門
腎精の数ある働きのうち、基礎活力をもたらす元気と、子孫を残す生殖について、これを命門の働きとした

■3)六腑の機能
(1)胆
①胆は決断や勇気を主る
胆は中正の官、決断出づ
☆裁判官のような役割
②胆は精汁(胆汁)を蔵する
精汁を流すことで脾胃の消化機能を助けている
③胆は奇恒の腑の一つである

(2)胃
噴門部を上、幽門部を下、胃の中央部を中と呼ぶ
胃は脾とともに飲食物を消化吸収する
脾胃は倉廩の官、五味出づ
胃を働かせる気、および脾胃の働きによって得た後天の気を総称して胃気と呼ぶ
・胃気の有無は病人の予後を判断する上で重要である

(3)小腸
小腸と大腸の連なるところをらん門という
☆らん:門がまえに東
・小腸は胃から送られてきた糟粕(飲食物のかす)を受け取り、それを水分と子経分にわける
水分は前の膀胱へ、固型分は後ろの大腸に送られる
小腸は受盛の官、化物出づ

(4)大腸
大腸は小腸から送られてきた糟粕を転送しながら変化させ、糞便として肛門から排泄する
これを糟粕の伝化作用という
大腸は伝導の官、変化出づ

(5)膀胱
人体内に取り入れられた水分は、全身をめぐった後、器化作用によって膀胱に集め蓄えられ、やがて尿となって排泄される
州都の官、津液ここに蔵し、気化すときはすなわちよく出づ

(6)三焦
三焦の働きは、体温調節作用
気、血、津液の調整作用、水分代謝を円滑に行わせる作用
三焦は決涜の官、水道出づ
☆涜は溝という意味。決涜とは溝の流れを円滑にするという意味
・三焦は上焦、中焦、下焦に分けたとき、その働きがそれぞれ異なる
上焦は霧の如し、中焦はおうの如し、下焦は涜の如し
☆おう:さんずいへんに謳のつくり

■4)奇恒の腑
(1)骨、髄、脳
①骨
体表から最深部にあり、 硬く、中に髄を入れる
骨は髄の府、
②髄
髄は骨の中にあり、骨格を滋養する
③脳
脳は髄の大きなもので、下は脊髄に連なる
脳は髄の海
脳は肢体の運動を円滑にし、耳・眼を聡明にし長寿を保つ
(2)脈
脈は営気と血液を中に通し、もれないようにして、全身に行き渡らせる
脈は血の府
(3)女子胞
女子胞とは女性生殖器の働きを持つもので、腎気(精)の影響を受けて機能する
女子胞からは奇経の任脈と衝脈が起こる

3.臓腑経絡論
■1)経絡概説
経絡とは気血の運行する通路のことである
人体を縦方向に走る経脈と、経脈から分枝して身体各部に広く分布する絡脈を総称する
(2)経絡の構成
経絡は体内で臓腑と連なる経脈を中心に、そこから枝分かれしている絡脈とさらにそこから細かく分かれる孫脈(孫絡)とからなる
経脈には十二経脈(正経)と奇経八脈と十二経別がある
☆十二経別:正経の流注で本筋から離れている部分
広義の絡脈には十五別絡と狭義の絡脈と孫脈
経絡の関連機関として十二臓腑、十二経筋、十二皮部がある
★経絡系統図
・経脈 十二経脈(正経)…
奇経八脈
十二経別
・絡脈 十五別絡(大絡)
(広義) 絡脈(狭義)
孫脈
(3)経絡の機能
経絡の働きを要約すると次の3点がある
①生理特性
経絡は循行上の臓腑、皮肉筋骨などに気血をめぐらせ、健全な生理活動を維持する
②病理特性
経絡は気血の過不足や外邪の侵入などに応じて疾病の生ずるところとなる
③診断、治療特性
経絡は病態に応じて診断するところでもあり、治療を施すところでもある

(4)十二経脈について
(A)十二経脈の相互関係
十二経脈の相互関係では、三陰三陽の表裏関係にあるもの(太陰と陽明、少陰と太陽、厥陰と少陽)は親和性が強い
同陰、同陽同士は(手の陽明と足の陽明など)も緊密な関係にある
(B)十二経脈の走行
十二経脈を気血のめぐる順は、中焦に始まり、肺から手の太陰肺経→陽明大腸経と順次各経脈をめぐって再び中焦から肺へという循環を繰り返す

(C)経脈の長さ
省略
(D)脈気循行の速度
脈気循行の速度は1呼吸の間に6寸行き、270回呼吸すると人体の経脈の1循となる
一日では人体を50周する
(F)経脈の気血の量
経脈により気血の量の違いがある
(F)経脈の気血の量
経脈により気血の量の違いがある
太陽は常に血多く気少なし
少陽は常に血少なく気多し
陽明は常に血多く気多し
少陰は常に血少なく気多し
厥陰は常に血多く気少なし
太陰は常に血少なく気多し

(5)奇経八脈
奇経八脈とは、督脈、任脈、陰脈、陽脈、陰維脈、陽維脈、衝脈、帯脈をいう
十二経脈が臓腑と内属し、かつ表裏関係を有するのに対して
奇経八脈はそのような関係を持っていない
奇経の働きは正経を通常の河川に奇経を臨時の水脈にたとえている
十二経脈を流れる気血が盛んになりすぎて溢れそうなとき、奇経が余分な気血を引き入れる

(6)その他の経絡系
(A)十二経別
十二経別とは、正経の一部位より分かれて人体(臓腑や頭頂など)をめぐり再びある部位で自経や表裏関係にある経脈と合する
(B)十五別絡(大絡)
十五別絡とは正経の一部位(絡穴の存在するところ)から分かれてめぐる支脈のことをいう
その特徴は表裏関係の経脈を連絡する
例外的な別絡として、任脈の別、督脈の別、脾の大絡の別があり、正系の十二と合わせて十五別絡となる
(C) 十二経筋
十二経脈の走行上にある筋群をいう
(D)十二皮部
十二経楽の体表部における分布領域をいう

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第3章 東洋医学の疾病観
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天候の変化過度の精神感動、飲食の不敵、過労などの内界外界のさまざまな変化が要因となり生体内に陰陽、気血、臓腑、経絡などの不調和が引き起こされ、それによりさまざまな病的状態を表す
内界の変化(内因、不内外因)により、生体の機能に障害を生じた場合を内傷と呼び、外界の変化(外因)による場合を外感と呼ぶ

1.病因論
■1)概要
病因には外因(六淫ら)、内因(七情)、不内外因(飲食、労倦、房事、外傷など)
☆六淫:りくいん
■2)外因
外因とは自然界の気候の変化により人体を外部から発病させる原因となるものをさす
六気である風寒暑湿燥火には過常や不足、あるいは季節に反して出現するなどの異常がおき、一方人体の正常な適応力や抵抗力が衰えているとこれが発病因子となって疾病を生じさせる
邪気に転じた六気を六淫または外邪と呼び、これらによって起こる病を外感病という
六淫のうち、陽性の外邪は風暑火燥で、身体の上部より襲う
陰性の外邪は湿寒で身体の下部より襲う

(1)風
外感病の中では風によるものが最も多い
★風邪の性質と病状
①風は陽の邪気で上部を侵しやすい
頭痛、鼻づまり、咽喉痛、顔面の浮腫などがその病状である
②風は衛気を侵す
発熱、悪風、汗が出る
③風邪による病は変化しやすい
風邪により発病すると経過が急で変化が速い
このような特徴を遊走性という
風は百病の長
風邪は六淫中で最も重要な発病因子であり、そのほかの外邪(寒、湿、燥、火など)と一緒に人体に侵入して病を引き起こす
風、寒、湿の3邪が共に襲う時はひ(痛み、しびれ)という病を引き起こす
(2)寒
①寒は陰の邪気であり、陽気を損傷しやすい
陽気が損なわれると体を温める働きや、体表の防御機能が失われ、悪寒が現れる
②寒は気血を渋滞させ、痛みを引き起こす、これを凝滞性という
経脈の流注部位に痛みが起こる
③寒は収縮、収斂の作用を持つ、これを収引性という
筋肉は収縮し、痙攣(ひきつれ)が起こる
寒邪が血脈にあると、頭痛、脈緊などの症状が現れる
④寒は臓腑を直接侵すことがある
寒邪が脾胃を侵すと、腹が冷えて痛み、嘔吐や下痢が現れる
腎や膀胱を冒すと頻尿になる
(3)暑(熱)
①暑は火の邪気である
高熱が出たり、顔が赤くなり、大汗、煩渇が現れる
②暑は陽の邪気で、上昇し発散する「炎上性、開泄性」
発熱、多汗、口渇、脱力感が現れる
③暑邪は湿邪を伴うことが多い
湿邪を伴うと四肢の倦怠感、下痢が現れる
(4)湿
①湿は陰性の邪気で、人体の下部を侵しやすい(下注性)
水腫、帯下、脚気、下痢など下半身の症状が現れやすい
②湿は重く停滞する(重濁性、粘滞性)
頭や体が重く、四肢がだるくなり、関節が痛みはれる
これを体重節痛
(4)燥
燥邪は陽の邪気であり、口や鼻から侵入し肺をおかす
燥邪の性質と病状には次のものがある
①燥は乾燥させる働きがあり、津液を損傷しやすい(乾燥性)
口や鼻が乾き、皮膚が乾燥してかさかさする
②燥は肺を傷つけやすい
粘り気のある少量の痰をともなう咳が起こる
喘息を起こすこともある

(6)火
火邪は外因性のものと内因性のものがある
内因性の火邪は体内の熱がさかんになりすぎたものをいう
肥甘厚味の食生活は異調の熱がさかんになる
火邪の性質と病状には次のものがある
①火は陽性の邪気で、上昇しやすい(炎上性)
高熱、煩渇、顔面紅潮、目の充血などの症状が現れやすい
心に影響すると意識障害、うわごとなどの症状が現れる
②気や津液を損傷しやすい
③生風、動血しやすい
四指の痙攣、頚項部の強直、角弓反張などの症状が現れる
☆生風:火事の吐気に上昇気流が起こるように、体内で火が発生すると体内でも動きがあって痙攣などが起こる
☆角弓反張:背や頚をそらせて痙攣を起こす様
また、鼻出欠、血尿、血便などの異常出血が起こる
④腫瘍を形成しやすい
癰腫がみられる
☆ 癰はできもの、腫ははれものを意味する

(7)六淫以外の外陰
六淫意外の外因としては疫癩があげられる
疫癩は強力な伝染性を持つ外邪で、疫気、癩気、疫毒、疫邪、毒気などとも呼ばれる

■3)内因(七情)
内因とは内から生じる病因のことで、過度の感情をさす
七情には「怒喜思憂悲恐驚」がある
激しい感情の変化や長期に及ぶものは、直接五臓の機能を失調させる
怒りすぎれば肝を傷り(やぶり)
喜びすぎれば心を傷り
思いすぎれば脾を傷り
憂い悲しみすぎれば肺を傷り
恐れ驚きすぎれば腎を傷る
①怒
怒りすぎると肝気が上がりすぎて(上逆して)、血を伴って頭部に急激に上昇する
怒りの感情を長く抑えつけていると肝気がうっ滞して短気となり、胸脇苦満がみられる
②喜
喜びすぎると心気が緩みすぎて失調し精神が集中できなくなる
③思
思い悩みすぎると脾気が結ばれて、運化作用が低下し食欲不振となる
④憂悲
憂い悲しみすぎると肺気が消耗して気力が薄れる
⑤恐驚
恐れすぎると腎気が下り、固摂作用が失調し大小便の失禁となる
驚きすぎると腎気乱れ精神錯乱となる

■4)不内外因(飲食労倦)
内因とも外因とも決めがたく、時によっては内因として働き、時によっては外因として働くもの
不内外因には飲食物の量と質の不適、労働や休養の過不足、房事の不摂生、外傷などが含まれる
(1)飲食
①量の過不足
飲食物の摂取が不足すれば営衛の気が不足して病気に対する抵抗力が失われて、さまざまな病気を引き起こす
反対に多飲や華燭をすれば脾胃に負担をかける
②質の偏り
五味の偏食は対応する五臓の働きを悪くする。
たとえば酸味をとりすぎると肝が失調する
夏の野菜や生もの、冷たい飲食物は体を冷やす働きがあるので、体が冷えすぎないように注意する

(2)労倦
①労働と休養
休養を十分とらないと病気を引き起こす
長時間体を動かさないと気血のめぐりが悪くなり脾胃の働きが衰える
②偏った労働
特定の姿勢や動作を長く続けると、特定の器官や五臓に影響を与える
久行は肝をやぶる
久視は心、久坐は脾、久臥は肺、久立は腎をやぶる
③房事
房事の不摂生は腎に蔵されている精を消耗する
(3)外傷
外傷により出血、痛み、変形、機能障害などが現れる
さらに体内に生じた血が後に疾病を引き起こすことがある

2.病理と病証
病証は病の本質を示し、治療の指針となる
病証には八綱病証、気血津液病証、臓腑病証、経絡病証、六経病証などが
病証を立てることを弁証という
病証にしたがって治療することを弁証論治

■1)八綱病証
病位の深浅を表すものに表証と裏証がある
疾病の性質(病情)をあらわすものに寒証と熱証がある
正邪の盛衰(病勢)をあらわすものに虚証と実証がある
陰陽は八綱を統括する総綱
陽は表、熱、実であり、陰は裏、寒、虚である
(1)病位の違いでとらえる
病位の違いにより、表証、裏証、半表半裏賞
①表
表証とは六淫の邪が皮毛や鼻から人体に進入し病が体表の浅い部分にある。
外感病の初期にみられる
代表的な症候は悪寒、発熱、頭痛、項強、腰背痛、四肢関節痛、脈浮である
②裏
裏証とは病が体の深部にある
外感病が深く進行した時や内傷にみられ、臓腑の機能失調を起こす
代表的な症候は悪熱、口渇、便秘、腹部膨満、腹痛、下痢、舌苔厚、脈沈である
③半表半裏賞
半表半裏とは表と裏の中間位をいい、横隔膜に隣接する臓器類に病が存在する
多くは病が表位を過ぎてまだ裏位に達していない時に現れる
代表的な症候は往来寒熱(悪寒と発熱が交互に出現)、胸脇苦満、口苦、眩暈、脈弦
☆肝胆の病でも動揺の症状が出る

(2)病情によってとらえる
病情は病性(性質)ともい、寒証と熱証に分類される
寒と熱は体内の陰陽気が偏盛したり、偏衰することによって生じる病情である
実熱は陽盛により生じ、実寒は陰盛により生じる
また、虚熱は陰虚により生じ、虚寒は陽虚によって生じる
①寒証
寒とは自覚的には冷える感じ、他覚的には冷たく感じるものを言う
代表的な症候は悪寒、手足の冷え、顔面蒼白、寒性の下痢、小便がすんで量が多い、舌苔は白、遅脈である
②熱
熱とは自覚的には熱感がある、他覚的には熱い感じのものをいう
その代表的な症候は、発熱、煩躁、顔は赤くほてる、大便秘結
小便は赤濁し量が少ない、口渇、
舌苔黄、脈数
☆煩躁:熱っぽくてもだえる様子
大便秘結:便秘
赤濁とは血尿という意味ではなく色が濃い状帯

(3)病勢によってとらえる
病の勢いを虚証と実証に分類する
①虚証
虚というのは正気の不足を主とする
邪気に対する正気の抵抗力は低下しているため、正邪の間に闘争はみられない
疾病の後期や多くの慢性疾患にみられる
代表的な症候は、
呼吸や語勢が弱い、自汗
下痢、小便頻数、筋肉に弾力がない
痛部を按じると軽快し喜ぶ(喜按)
脈虚などである
☆自汗:しきりと汗がでる
②実
実は邪気の旺盛さを主とする
正邪の闘争は激しくなる
代表的な症候は、呼吸や語声が荒く強い。無汗、便秘、小便の回数が少ない
筋肉に弾力性がある。
痛部を按じると拒む(拒按)
脈実である

(4)陰陽
全体の反応によってとらえると、陰証と陽証に分類される
陰とは生体の反応が沈滞、減弱している状態をいう
陽証は生体反応が発揚(亢進)、増強している状態をいう

(5)病証の名前
・八綱病証においてはまず表裏を弁別し、次に寒熱や虚実を弁別して病証を決定する
・八綱弁証8種類
表熱実証
表熱虚証
表寒実証
表寒虚証
裏熱実証
裏熱虚証
裏寒実証
裏寒虚証

■2)気血津液病証
八綱病証で実証と判断できると、気滞や血、痰飲といった病理産物を鑑別するために、気血津液病証が行われる
虚証と判断できていると、気虚、血虚、津液不足の鑑別をするために気血津液病証が行われる
(1)気の病証
①気の不足(気虚)
気虚は気の生成不足と消耗過多に寄って気の機能減退を起こす病的状態をいう
気が不足すると精神の萎縮、停滞、倦怠感、手足の無力感、めまい、自汗、風を患いやすい、症状が治りにくいなどが現れやすい
②気の停滞(気滞)
局所あるいは臓腑、経絡の気の運行が滞ることによって生じる病的状態をいう
気滞は情緒の乱れや六淫を感受したとき、飲食の不節により起こる
気が停滞すると体表での発汗が抑制され、発熱、煩悶、脹痛が現れる
★脹痛:張って痛み、精神状態に左右され、疼痛部位は一定していない

(2)血の病証
①血虚
血の生成不足と消耗過度による血虚
血虚は飲食物の摂取不足や脾胃の機能低下により起こる
全身の血が不足すると筋の萎縮や痙攣、顔色が悪く蒼白あるいは萎黄、手足がしびれる、精神が不安になりやすく、心悸、不眠、多夢、健忘、視力減退など
②血の停滞(血)
血は血の運行が緩慢になって、血が経絡に停滞したり、経脈から離れ出た血がいつまでも滞る病的状態をいう
血は寒邪が血を凝滞させたり、外傷、気滞からの移行などにより起こる
血が停滞すると、皮膚、爪、粘膜の暗紫赤色化、腫瘤(硬結)の形成、固定性の頑固な刺痛などの症状がみられる

(3)津液の病証
①津液の不足
☆津傷ということもある
津液の不足は飲食物の摂取不足、脾胃の機能低下、発汗過多、大小便の排泄過多などにより起こる
眼、鼻、口唇の乾燥や、毛髪のつやがなくなる、皮膚にはりがない
尿量の減少、便秘などが起こる
②津液の停滞(痰飲、内湿、痰濁、水湿)
☆症状のひどい順に:水湿、痰飲、痰濁
津液の代謝に関与する、脾、肺、腎、膀胱、三焦の機能失調により起こる
津液が皮膚と肌肉との間に停滞して水腫を発生させる
腹中であれば鼓脹(副膵の一種)、
痰を多く含む咳、関節の屈伸困難などの症状が見られる
☆関節に水がたまったりする

■3)臓腑病証
臓腑病証とは臓腑を構成している気、血、津液および精の失調により、臓腑の機能に異常が生じた病態をいう
構成する陽の部分は気で陰の部分は血、津液、精のいずれかひとつである
気の温く作用を強調した場合陽液または単純に陽と呼び、血、津液、精の冷却作用を考慮した場合、陰液または単純に陰と呼ぶ

(1)五臓の病証
A.心の病証
心が病むと精神活動と血液の循環に異常が現れやすい
また、心は顔、舌と生理的関係があるので心が病むとこれらに異常が現れる
・心の代表的な病証をあげる
①心気虚
心気の不足による虚弱病証である
主な症状は心悸、息切れ、胸悶
②心陽虚
心気虚がさらに進み、心の陽気が不足して起こる虚寒証である
主な症状は心悸、胸悶、息切れに加えて、虚寒による畏寒、四肢の冷えがある
③心血虚
血が不足し、そのために心が血の栄養を受けられないために起こる
主な症状は心悸、不眠、、眩暈、健忘、多夢
④心陰虚
心の陰液が不足して起こる虚熱証である
主な症状は心悸、不眠、五心煩熱
☆五心=手の平、足の裏、胸
⑤心火の亢進
火邪が心を侵し、心火の亢進を起こした実熱証である
主な症状は心悸、胸部の煩熱感、不眠、尿石である
⑥心脈の阻滞
心脈の流れが悪くなりおこる
血が形成される
主な症状は心悸、背部に放散する胸痛、胸悶である
☆心脈阻滞

B.肝の病証
肝が病んで疏泄が悪くなり、情動の調節に障害が現れる
蔵血が悪くなると眼や筋に異常が現れる
①肝気のうっ滞
肝の疏泄機能が失調して気滞を起こした実証である
精神的なストレスを受けたり、長期に渡って気分がふさいでいると起こる
主な症状は精神抑うつまたは怒りっぽい、胸悶、胸脇苦満、脈弦である
②肝火の亢進(肝火上炎)
肝気のうっ滞が進行して化火し、この火が経に沿って上逆して起こる実熱証である
主な症状は頭痛、眼の充血、いらいら、怒りっぽいである
③肝陰虚
肝の陰液が不足して起こる虚熱証である
腎陰の不足を伴って起こることもある
主な症状は眼が乾燥し異物が入ったような痛みがある、脇痛、手足のひきつり、に加え、虚熱による五心煩熱、盗汗(寝汗)、口や咽頭の渇きを伴う
④肝陽の亢進(肝陽上亢)
肝の陰虚陽亢として現れるが、陽の亢進を主とする本虚標実証である
または肝腎陰虚により肝陽が亢進する
主な症状は、めまい、頭痛、耳鳴り、眼の充血、いらいらする、怒りっぽいおよび腰や膝がだるく力が入らないなど
⑤肝血虚
肝血が不足して起こる虚証である
主な症状は眼の乾き、かすみ、胸部の隠痛、顔色萎黄、唇や舌質の色は淡白、筋肉のひきつり、月経の経血量が少ないなどである
⑥肝風
肝腎の極度の陰虚により陽を制御できない場合、過度の肝陽の亢進を起こした内風証である
主な症状はめまい、しびれ、痙攣、拘急であり、半身不随となるものもある

C.脾の病証
脾の病証が失調すると飲食物の消化吸収、水分代謝、気血の生成、血の固摂作用に影響が現れる
①脾気虚
脾気や胃の虚により、運化機能の減退を起こした虚証である
主な症状は食欲不振、泥状便、食後の膨満感であり、からだがだるくなり、肌肉がやせる、浮腫、内臓の下膵、血便、血尿、崩漏を伴うことがある
☆崩漏:多量の月経外出血
②脾陽虚
脾気虚がさらに進み、脾の陽気が不足して起こる虚寒証である
主な症状は、腹痛、喜温、喜按、畏寒、腹部や四肢の冷えである
③脾陰虚
脾の陰液が不足した虚熱証である
主な症状は食欲不振、食後の腹部膨満間、やせ、無力感である
虚熱の所見として、舌質紅、舌上の津液が少ない、剥落苔
④脾胃湿熱
長期に渡って脾胃に質が滞って化熱して起こる虚実挟雑証であり、実証を主とする
主な症状は腹部のつかえ、腹部膨満感、胃部灼痛、腹部隠痛、食欲不振である
☆湿:陰液のこと
☆甘いものの食べすぎや鮭の飲みすぎで内生の火邪が起こる
⑤脾胃の昇降失調
脾の昇清作用、胃の降濁作用の失調により起こる
主な症状は心下痞、悪心、嘔吐、気(げっぷ)、腹鳴、下痢である

D.肺の病証
肺が病むと呼吸、気の生成、津液の代謝に障害が現れる
①肺の宣発粛降作用の失調(痰湿阻肺)
外邪や湿の停滞により、肺の機能失調を起こした病証
主な症状は咳嗽、痰鼻の異常である
外邪によるものは悪寒、悪風、発熱などの表証の症状を伴う
②肺気虚
肺の機能が減退した虚証である
主な症状は無力な咳嗽、喘息、少気、自汗、感冒を患いやすい
③肺陽虚
肺気虚がさらに進み、肺の陽気が不足して起こる虚寒少
主な症状は無力な咳嗽、
虚寒少上では、手足が冷て寒がる。痰が薄くさらさらしている
④肺陰虚
・肺の陰液が不足して起こる虚熱証である
・主な症状乾咳、むせかえるような咳、咽頭の乾き、痰はねばねばして量は少ない、潮熱

E.腎の病証
腎が病むと発育の遅れ、生殖機能の低下、呼吸困難などが起こる
①腎精の不足
腎精の不足による虚証である
主な症状は発育の遅れ(乳児期の五遅五軟、思春期の性器成熟の遅れ)、性欲の減退(不妊症、陽萎)、早老化(腰や膝の軟弱化、軟調)である
☆五遅:立ち上がり、歩行、頭髪のはえ、言葉などの遅れ
五軟:頭の骨が柔らかい、頸が座らずやわらかい、筋肉、口が柔らかいなど
☆陽萎:勃起不全
②腎陰虚
腎の陰液が不足した虚熱証である
主な症状は腰や膝の軟弱化、めまい、耳鳴り、五心煩熱
③腎陽虚
腎の陽気が不足した虚寒証で、命門火衰とも言われる
主な症状は腰や膝の軟弱化と冷え、四肢の冷え、寒がり、五更泄瀉(鶏鳴下痢)である
☆五更泄瀉:明け方の下痢
④腎気虚
腎の気の減退を起こした虚証で、腎気不固、腎不納気がある
腎気不固の症状は遺精、遺尿、早漏、帯下である
腎不納気の症状は喘息や呼吸困難が現れる

(2)六腑の病証
A.胆の病証
胆の病では悪心、嘔吐、口苦、黄疸、太息(ためいき)などがある
B.胃の病証
①胃寒
胃寒のうち胃実寒は上腹部の冷痛、腹部拒按がみられる
胃虚寒は上腹部の鈍痛、腹部の喜按摩
②胃熱
胃熱のうち、胃実熱は上腹部の灼熱痛、消穀善飢をみる
胃虚熱では雑、をみる
☆消穀善飢:いくら食べてもすぐにおなかがすく
☆雑: 空腹のようで空腹でなく痛むようで痛まない
③食滞
主な症状は、食を嫌う、胸や胃がつかえて苦しい、呑酸、腐、大便に酸臭がある
舌苔膩苔、腐苔
☆腐:腐ったようなにおいのするげっぷ
C.小腸の病証
小腸の虚寒では食後の腹脹、腹鳴泄瀉、腹部喜按をみる
小腸の実熱では小便が赤くなったり濁ったりする、口舌の瘡、舌尖紅をみる

D.大腸の病証
大腸の燥熱、津液の不足により便秘が起こる
寒湿や湿熱が下注すると泥状便や下痢が起こる

E.膀胱の病証
腎の陽気が不足すると排尿不利、あるいは尿閉が起こる
腎気不固により遺尿、尿失禁が起こる
湿熱が膀胱にたまると頻尿、尿意促迫、排尿痛、尿の混濁が起こる
湿熱が長期に渡ると結石を形成する

F.三焦の病証
上焦の機能が衰えると発汗障害を生じる
中焦の機能が衰えると消化不良、胃腸内の水分停滞を生じる
下焦の機能が衰えると尿閉、下腹部痛を生じる

■4)経絡の病証
外邪の進入を受けたり、臓腑の機能が失調すると、経絡の気血のめぐりに異常を生じ、経絡流注に沿った症状や関連機関に症状が現れる
経絡病証には正経十二脈病証と、奇経八脈病証とがある

(1)是動病と所生病
正経十二脈病証は是動病と所生病に分けられる
相違点をあげる
まず気が病むことによって起こるのが是動病で、後に血が病むことによって起こるのが所生病
邪が外にある病は是動病で、邪が内にある病は所生病
☆外から来る外邪によるのが是動病、内因による病は所生病
本経の病は是動病で、他経の病は所生病
☆最初に病んだ経絡が本経、そこから波及した経絡が他経
経絡の病は是動病、臓腑の病は所生病
☆病が臓腑まで侵したいえる場合は所生病
外因による病は是動病、内因による病は所生病

(2)十二経絡の病証
①手の太陰肺経
上肢前面外側の痛み、手掌のほてり、喘咳、息切れ、胸苦しさ、胸の熱感
②手の陽明大腸経
のどの腫れ痛み、上肢外側の痛み、示指の痛み、歯の痛み、鼻出血
③足の陽明胃経
顔面の麻痺、前頸部の腫れ、前胸部・腹部・鼠径部・下肢前面・足背の痛み、躁状態、鬱状態、鼻出血、消化吸収の異常
④足の太陰脾経
前胸部、心下部、脇下の圧迫感、下肢内側の腫れ痛み、母趾の麻痺、腹部膨満感、嘔吐、軟便、下痢、全身倦怠感
⑤手の少陰心経
心臓部痛、、上肢前面内側の痛み、手掌のほてりと痛み、喉の渇き、脇の痛み
⑥手の太陽小腸経
頚が晴れ後ろを振り返ることができない(寝ちがい)、肩・上腕の激しい痛み、頚肩・上肢後面内側の痛み、のど・顎の腫れ痛み、軟調
⑦足の太陽膀胱経
頭頂部・喉頭部痛、体幹・下肢後面の痛み、足の小指の麻痺
脊柱の痛み、眼の痛み、鼻出血、痔、のぼせ、精神異状(てんかん)
⑧足の少陰腎経
腰部・大腿内側の痛み、冷え、しびれ、足底のほてり
空腹感はあるが食欲がない、顔色が黒ずむ、呼吸が苦しく咳き込む、血痰、たちくらみ、寝ることを好んで起きたがらない、心配性でびくびくする
⑨手の厥陰心包経
心臓部痛み、腋の腫れ、上肢のひきつり、手掌のほてり、悸肋部のつかえ
胸苦しさ、顔色が赤い、精神不安定
⑩手の少陽三焦経
耳の後ろ~肩上部~上肢後面にかけての痛み、第4指の麻痺、目じりから頬の痛み、難聴
咽頭・喉頭の炎症、発汗
⑪足の少陽胆経
目尻から側頭部・体幹外側・下肢外側の痛み、足の第4指の麻痺、寝返りがうてない、足外反しほてる
口が苦い(胆汁)、よくため息をつく、頚部のリンパ節結核
⑫足の厥陰肝経
疝気(男)、下腹部膨満感(女)、遺尿、尿閉、うつむいたり仰向いたりできない、悸肋部の腫れ、嘔吐、ひどい下痢、顔面がすすけて青黒い
☆疝気:下腹部のひきつれ、さしこみ

(3)奇経八脈病証
奇経八脈の内、陰に属するものに任脈、陰脈、陰維脈、衝脈があり、陽に属するものに督脈、陽脈、陽維脈、帯脈がある
①督脈
背骨のこわばり、頭痛、足の冷え痛み、痔などの症状が現れる
②任脈
疝気(男)、帯下、月経異常、腹部の皮膚の痛みやかゆみ
☆帯下:広くは婦人病全体、狭くはおりもの
③衝脈
逆気(悪心、嘔吐、めまい頭痛)、下痢
☆任脈と衝脈は女子胞をめぐる
④帯脈
腹が張り腰が水中に座っている時のように冷えたりふわふわ座りが悪い
⑤陽脈
陰がゆるんで陽がひきつる(下肢内側の麻痺、前半身がゆるんで後半身がひきつる)
目が痛む
⑥陰脈
陽がゆるんで陰がひきつる(下肢外側の麻痺、後半身がゆるみ前半身がひきつる)
⑦陽維脈
寒熱に苦しむ
☆冷えと発熱の両方がある
足の少陽胆経とかかわりが深いので、同じように半表半裏の症状が現れる
⑧陰維脈
心臓部痛に苦しむ

■5)六経病証
六経病証は、外感病の進行を6つの病証に分けて捉える。
素問による六経病と傷寒雑病論による三陰三陽病とに大別される。
(1)六経病
☆鍼灸の方のとらえ方
経脈に照らし合わせて6つに分け、鍼灸治療の基準とした。
外邪はまず、太陽経病、陽明経病、少陽経病と陽谿を侵して進み、
さらに進行すると、太陰経病、少陰経病、厥陰経病と陰経を
侵して進行していく
①太陽経病(膀胱経、小腸経)
・頭頂部が痛み、腰背部がこわばる。
②陽明経病(胃経、大腸経)
・眼が痛み、鼻が乾き、安臥ができない。
③少陽経病(胆経、三焦経)
・胸脇痛、耳聾。
④太陰経病(肺経、脾経)
・腹中脹満、咽喉の乾き。
⑤少陰経病(腎経,心経)
・口が渇き、舌乾により渇きを訴える。
⑥厥陰経病(肝経、心包経)
・煩悶を起こして陰嚢が収縮する。

(2)三陰三陽病(傷寒論)
☆湯液の方のとらえ方
①太陽病
発病の初期で悪寒、発熱、頭痛、項強、脈浮の時期
②少陽病
発病後4~5日
口苦、咽乾、舌苔白、食欲不振
胸脇苦満、往来寒熱、眩暈、弦脈
③陽明病
発病後8以上経た陽病の極期
体温が高く全身くまなく熱感し、腹実満し、便秘、舌苔黄
④太陰病
体力衰え、身体冷え、腹虚満、下痢、嘔吐、胃腸症状を呈する
⑤少陰病
ますます元気がなくなり、臥床して、脈波微細でふれにくくなる
⑥厥陰病
上気して顔色は一見赤みがかっているが下半身は冷え、胸が熱く痛み、空腹だが飲食できない

■6)代表的な疾病
(A)熱病
(B)風病
(C)痛
(D)厥
(E)痺(やまいだれに田の下に元の上の一をとったもの)
風寒湿の三つの邪気がまじりあって人体を侵し営衛の気の循環ア悪くなり発症する病である
主な症状は痛みとしびれであるが、風寒湿の邪気の強弱によって分類される
・風ひ(行ひ)
痛みが郵送する
・寒ひ(痛ひ)
激しい痛みになる
・湿ひ(着ひ)
痛む場所が一定して長引く
(F)い(やまいだれに萎)
(G)咳嗽

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第4章 診 断 論
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1.四診
■1)診断の一般
(1)診断の目標
東洋医学の診断法を四診という
四診により得られた情報を総合的に分析して病証を決定する
病証が決まれば治療方針が定まり、治療原則に基づく治療を進めることができる
東洋医学では診断即ち治療となる

(3診断の種類
・望診(神技)は視覚を通して病態を診る
・聞診(聖技)は聴覚、嗅覚を通して病体を診る
・問診(工技)は問いかけた応答により病態を診る
・切診(巧技)は指頭、指腹、手掌の触覚を通して病態を診る
・見ただけで診断が下せる技術を神業として最高位に置く

■2)望診
望診は病人の顔色や形態(体の形、姿勢、動作など)の変化や舌を観察し、疾病の性質やその予後を判断する
A.神気
精神や生命力を東洋医学では神気(神)という
皮膚の色艶が良いということは、神気があり治療効果もよく、予後も良い
皮膚の色艶が悪ければ神気がなく治療も長引き、場合によっては治らない
B.色を見る(五色)
五色は五臓と関連し、生色と死色とがある
疾病の順は生色を示し、光沢があって明るく潤っている。予後は良い
疾病の逆は死色を示しつやがなくなっている。予後は不良
☆順:順調、逆:順調でない
C.形体を診る
形態を診るときに基本となるのは、五主や五官であり、五臓との肝経を診る
例えば骨の太さや大きさには腎の盛衰が見られる
D.動態を診る
特異な姿勢や動作があれば病んでいるとみる
悩み事があったりや目を使いすぎると頭が疲れて前へ傾く
失望すると肩をおとす
熱証では手足を伸ばし、寒証では手足をちじめる

E.皮膚の色の変化を診る
主に顔や尺膚(前腕前面内側)や病所の皮膚の色とつやを診る
色変と病状の関係では、青多ければ痛み、黒多ければ「ひ」、黄または赤ければ熱、白多ければ寒、

F.脈流注上の変化を診る
特定の経脈流注領域にしみそばかす、皮膚の粗利(めが粗いこと)、肌肉の栄養不良などが部分的に現れる

G.顔面の部分診
顔面の部分診では肝の熱病は左の頬がまず赤くなり、心の熱病は額がまず赤くなり、脾の熱病は鼻がまず赤くなり、肺の熱病は右の頬がまず赤くなり、腎の熱病はオトガイがまず赤くなる

H.舌を診る
舌の変化は気血津液、病邪の性質、病位の深さ、病状の進展状況を反映している
A)正常な舌の状態
舌全体の形態や、舌質の色と性質、舌苔などを観察する
舌質(体)とは、舌の肌肉、脈絡組織であり
舌苔は舌体の上に付着している苔状のものである
健康人の舌全体の形は、ほどよい厚さと大きさでやわらかい
舌質の色は淡紅色、舌苔は舌の中心部に薄い白苔があり、適度に潤いがある。
・舌の臓腑配当
舌根部は腎(下焦)、
舌中部は脾胃(中焦)
舌辺部は肝胆(中焦)
舌尖部は心肺(上焦)

(A)舌体の形態
①胖舌
舌全体が正常よりも大きい
陽虚や熱盛を示す
☆気が弱まるとまとまりがつかなくなり舌がふくらむ
②痩舌
舌全体が痩せて小さく薄い
陰虚、気血両虚
③裂紋舌
舌の表面に亀裂がある
陰虚、血虚
④歯跡舌
舌の縁に歯のあとがある
気虚
⑤ 硬舌や歪斜舌は中風の前頂でみられる
(B)舌質の色
淡紅舌は正常、または表証
舌質の色が淡白(淡舌)は寒証と虚証を示し
紅舌は熱証を示す
青紫色(紫舌)は血を示す
(C)舌苔
①色
舌苔は白くて薄い苔が正常または表証や寒証
黄苔と灰苔は裏熱証
黒苔は裏熱極で見られる
②舌苔の暑さと苔質
薄苔は正常または表証
厚苔に変化すると病邪が表から裏に進行した
潤苔は正常な状態
燥苔は津液の損傷を表す
滑苔は水質の停滞
膩苔は痰飲をあらわす
腐苔は食積をあらわす
剥落苔は気陰両虚を表す

付)虎口三関の脈
小児の望診法の一つ
手の第2指掌面の皮膚の色や皮下の細い血管を見る
色紋が基節の風関にあるときは病が軽く、中節の気関にあるときは病が重く、末節の命関にあると治しがたい
☆色紋:色の変化や血管の浮いた状態

■3)聞診
聞診は聴覚により呼吸音、発声、発語を聞き、嗅覚により体臭、口臭、排泄物の臭いを診る
A.呼吸と声音を聴く
健康な人の呼吸音はゆったりとして深く、雑音がない
短気は息切れのことで実証は急性に虚証は慢性にみられる
少気は呼吸が静かで浅い。慢性病で虚証に見られる
喘は呼吸困難のこと。実喘は発作が激しい。虚喘は呼吸が弱く音が低い
B.発声と発語
・実証では声高く、大きく、重く、濁る
・虚証は声低く、小さく、軽く、清い
・実証のうわごとを譫語(声は大きいが離しの筋が通らない)
・虚証のうわごとを鄭声(同じことを繰り返す)
・独り言を独語という
C.異常音を聞く
・腹中の音など
D.臭いを聞く
病人の体臭、口臭などの臭いを診る
・五香り
肝:せん()…あぶらくさい
☆せん:羊へんに壇のつくり
心:焦…こげくさい
脾:香…かんばしくさい
肺:せい…なまぐさい
☆せい:月へんに星
腎:腐…くされくさい
E.五声
・肝の病:呼…人をむやみに呼び大きな声を出す
・心の病:笑(言)…言語がはなはだ多くなり、よく笑いたがる
・脾の病:歌…鼻歌をふしをつけて歌うように喋る
・肺の病:哭…単純なことに泣きやすい、泣き言をいう
・腎の病:呻…うなり声を出す
F.五音
・角(ミ)…鋭く強い発音、カチカチ
・徴(ソ)…歯を合わせて出る激しい発音、シュッシュ
・宮(ド)…最も中庸の音階、落ち着いている
・商(レ)…清くさえて、被愛の情を含む発音
・羽(ラ)…弱弱しく力のない発音

■4)問診
西洋医学の問診に加えて、東洋医学で確認すべき項目として、寒熱を問う、汗を問う、食欲を問う、二便を問う、疼痛を問う、月経を問う、睡眠を問う、五臓と関連する五主、五官、五液、五労などを問う
A.寒熱を問う
①悪寒発熱
・悪寒と発熱がともにあるものを悪寒発熱という
外感病の初期(表証)でみられる
風寒による表証では悪寒が強く、発熱が軽い
風熱による表証では、発熱が強く、悪寒が軽くなる
②但寒不熱
・ただ寒く感じ、発熱のないものを但寒不熱という
これには寒邪が臓腑に直中しておこる(実寒証)と
陽虚のために温く作用が低下して起こる虚寒証がある
③但熱不寒
・発熱のみ起こり、悪寒しないものを但熱不寒という
これには壮熱(高熱)と、一定時刻に発熱を繰り返す潮熱とがある
裏熱証によく見られる
日哺潮熱は午後3時から5時に発熱が著名になる
…胃腸の燥熱によるため、陽明潮熱とも呼ばれる
夜間潮熱は夜間に発熱が著名になる
…五心煩熱や骨蒸発熱を伴う
陰虚による内熱を起こすため、陰虚潮熱ともいう
③寒熱往来
・悪寒と発熱が交互に出現するものを寒熱往来という
正気と邪気が半表半裏で戦っている
半表半裏証でみられる

B.汗を問う
表証の汗について、汗のないものを無汗といい、表実証にみられる。
また、表証で汗のあるものを有汗という。表虚証にみられる
自汗はいつも汗が出てとまらず、活動後にさらにひどくなる。これは気虚や陽虚にみられる
盗汗は眠ると汗が出、目覚めると汗が止まる、寝汗のこと。陰虚でみられる

C.飲食を問う
①食欲
・食欲不振は、脾胃の虚や気虚に多くみられる
また、湿が脾胃に影響して運化機能が低下しても起こる
・食欲が旺盛で食後しばらくすると空腹感が起こるものを消穀善饑という。これは胃熱や胃火により消化機能が亢進しているときにみられる
②五味
・五味偏食は五臓に影響する
五味とは酸苦甘辛鹹
③口渇
口渇して多く水を飲むものは、熱証。
口渇して飲みたいと思うが飲むとすぐに吐き出し、小便不利であるものは痰飲にみられる
口渇はあるが口を潤すと気持ちが良く、飲みたくないものは血にみられる
口渇してよく飲むが、それ以上に小便の量が多いものは消喝に見られる。消喝は現代でいう糖尿病にあたる

D.二便を問う
①大便
便秘に熱や口渇を伴うものは熱証、実証。特に胃腸に熱がある
便秘があるが、排便無力で、便が硬かったりやわらかかったりするものは気虚にみられる
大便が硬く兎糞状なのは血虚にみられる
便秘に四肢の冷え、夜間頻尿を伴うものは腎陽虚
②下痢
下痢を泄瀉ともいう
慢性の下痢で軽い腹痛を伴い、喜按のものは虚証
急性の下痢で腹部の膨満感や腹痛、拒按を伴うのは実証
便が水様であって悪臭のないものは寒証にみられる
便が黄褐色で悪臭のあるものは熱証でみられる
毎日夜明けごろに下痢をするものを五更泄瀉(腎泄)といい、、脾腎陽虚にみられる
②小便
尿の回数が増える頻尿で、尿量が多く、色が澄んでいるものは腎陽虚
頻尿で尿量が少なく、尿の色が濃く、急迫するものは下焦の湿熱でみられる
小便がでにくいものを小便閉という。実証では湿熱、血、結石。虚証では脾肺気虚でみられる
遺尿とは寝小便や尿失禁のことで、腎虚にみられる

疼痛を問う
①頭痛の部胃による分類
・太陽系頭痛は、後頭部から項背部にかけての頭痛。
・陽明経頭痛は、全額部から眉間にかけて痛む。
・少陽経頭痛は、側頭部が傷む。
・厥陰経頭痛は、頭頂部が痛む。
②痛みの性質による分類
・脹痛は気滞、刺痛は血、酸痛は虚証や湿証、重痛は湿証、
 灼痛は熱証、冷痛は寒証、絞痛は寒証、隠痛は虚証、
 制の下に手と痛(せいつう)は肝証、空痛は精髄不足である。
③痛みの喜悪による分類
・拒按は実証、喜按は虚証、喜温は寒証、喜冷は熱証。
月経を問う
・経血淡紅色で経質稀薄だと虚証、経血深紅色で経質濃いのは実証、
 経血が暗紫色や暗紅色で血塊のあるものは血である。
・月経前や月経中に小腹部に脹痛があると気滞と血、
 小腹に冷痛があると寒証である。
・月経中や月経後に小腹部に隠痛があり腰がだるく痛むのは
 気血両虚である。
睡眠を問う
・不眠は心、心包の変調で起こり、脾、腎、肝も影響を与える。
・嗜眠とはひどい眠気が襲ってくるもので、陽虚や痰飲でみられる。
五臓の障害状態を問う
・五主、五官、五液、五労を問う。

切診
・患者に直接触れ、脈診、腹診、切経の3つを行う。
脈診(切脈、候脈)
・脈の状態を診る脈状診と、脈の状態を比較する比較脈診とがある。
①脈状診
・手首の寸口(橈骨動脈拍動部)で脈の状態を診る。
・健康な人の脈状を平脈といい、平脈は四季に応じて少し変化する。
・春は弦、夏は洪(鉤)、長夏は緩(代)、秋は毛()、
 冬は石(滑)に傾く。
・祖脈とは、脈状のうちから基本となるものをいう。
・六祖脈には、浮沈、遅数、虚実がある。
・浮脈とは指を軽く按ずれば拍動が感じられ、
 重く按ずれば軽減するもので、表証にみられる。
・沈脈は軽く按じても感じられず、重く案ずれば得られる脈をいい、
 裏証でよくみられる。
・遅脈とは1呼吸に3拍以下の緩慢な脈をいい、寒証でみられる。
・数脈は1呼吸に6拍以上の速い脈をいい、
 熱傷でよくみられる。
・虚脈は拍動が細く、指を押し上げる力が弱いものをいい、
 虚証でよくみられる。
・実脈は拍動が大きく、指を力強く押し上げる力があるものをいい、
 実証でよくみられる。
※七情の脈
・怒るときは脈激し、喜ぶときは脈散じ、思うときは脈結し、
 憂うときは脈渋り、悲しむときは脈緊り、畏れるときは脈沈み、
 驚くときは脈動ずる。
※七表八裏九道の脈(二十四脈)
・七表の脈は陽証、八裏の脈は陰症、九道の脈は病の変動を現す。
・七表の脈には、浮、、滑、実、弦、緊、洪(フコウカツジツゲンキンコウ)
 がある。
・脈は出血による血虚、滑脈は痰飲食滞、弦脈は肝丹の実証、
 緊脈は実寒証、洪脈は熱傷を示す。
・八裏の脈には、沈、緩、、濡、遅、伏、微、弱がある。
・九道の脈には、短、長、細、虚、牢、動、結、促、代がある。
 (タンチョウサイキョウロウドウケッソクダイ)
・結脈、促脈、代脈は不整脈を示す。
比較脈診
・代表的な比較脈診には、素問の三部九候診、霊枢の人迎脈口診、
 難経の六重上位脈診3つがある。
六部定位脈診
・指をあてる位置には3部あり、寸口、関上、尺中という。
・前腕の長さを1尺として、そのうち手関節に近い2寸をとる。
・2寸のうち手関節に近いところの1分を取り除く。
・残りの1寸9分のうち、手関節から6分、6分、7分と分け、
 これを寸口、関上、尺中の位置とする。
・浮の部には六腑(陽経)、賃の部には六臓(陰経)が配当される。
・中の脈は全ての部で胃の気をうかがえる。
・中脈がしっかりしていれば生命力があり、予後は良好である。
・右手寸口は浮で大腸、沈で肺、右手関上は浮で胃、沈で脾
 右手尺中は浮で三焦、沈で心包、左手寸口は浮で小腸、沈で心、
 左手関上は浮で胆、沈で肝、左手尺中は浮で膀胱、沈で腎。
・反関の脈とは、脈が橈骨茎状突起の内側になく、手の背面すなわち
 大腸経に沿った脈をいう。

腹診
・胸部から腹部の皮膚や皮下の組織を軽く触れ、時には強く按じ、
 皮膚の温度や湿り気、潤いや艶、陥下や膨隆、圧痛や硬結や緊張、
 動悸などを診る。
・平人(無病)の腹とは、腹部全体が暖かく、適度な潤いがあり、
 硬からず軟らかからず、圧痛や硬結、陥下などがなく、
 上腹部が平らで臍下がふっくらして手ごたえのあるもの。
・五臓の腹診では、心病は心窩部、脾病は臍部、肝病は臍の左、
 肺病は臍の右、腎病は臍の下に動悸や圧痛、硬結が診られる。
・募穴診とは、募穴の反応をみて臓腑経絡の異常を探る。
・特定腹証は湯液で使用される腹診で、証の決定に重要である。
・心下痞硬、心窩部が自覚的につかえ、他覚的に抵抗感があるもの。
 鍼灸では、心心包の病変として捉える。
・胸脇苦満は、季肋下部に充満肝があり、肋骨弓の下縁に
 指を入れようとしても苦満感や圧痛があり、指が入らないもの。
 鍼灸では、感胆の病病変として捉える。
・小腹不仁は、下腹部に力がなく、ふわふわとしており、
 知覚鈍麻があるもの。
・小腹急結は、下腹部の中でも左下腹部(左腸骨窩)に
 抵抗や硬結のあるものは、血の証とされる。
・腹裏拘急は、腹部の筋が引き連れることで、
 虚損労傷(虚労)にみられる。
・虚里の動は、心尖拍動のことで、動高ぶるものは上に迫っており
 注意が必要である。

切経
・切経とは、経絡を切診することをいう。
・切経は、異常のある経絡の反応点を見つけ出せるので、
 治療穴の選定ができる。
設計の方法
①撮診(擦診)
・経絡上の皮膚をつまみ、痛みの過敏性や抵抗の有無を診る。
②背診
・背診では、背部の皮膚の状態、筋緊張、隆起、陥下、
 圧痛、硬結などの有無を診る。
③圧痛
・圧痛は経穴の異常変化として捉え、診断の根拠としたり、
 治療点として用いる。
・圧痛には、実痛と虚痛がある。
④硬結
・硬結も経穴の異常変化として捉える。
⑤陥下
・経絡上を押圧すると、力なく落ち込む所がある。
・虚の状態を現し、陥するときはこれに灸する。
⑥細絡
・皮下静脈のうっ滞により、青紫色や暗紫赤色に色調が
 変化したもの。
・血絡、血として刺絡(瀉血)する。

第2節 証の立て方
証について
・証とは病の本質を示し、治療の指針となる。
・証に従って治療することを随証療法といい、
 湯液や鍼灸の領域で用いられている。
・同じ病名であっても、東洋医学の場合は人によって
 違った証がつくこともある(同病異治)。
・異なった病気であっても、
証の立て方
①湯液の証の立て方
・特定の処方が定めている症状に患者の症状が似通っていれば
 その処方を用いる。
②鍼灸の証の立て方
・経絡や臓腑などの虚実で現す。
証の基本的な関係
①本証と標証
・本証とは、疾病の根本になっている証のことである。
・標証とは、疾病の末梢的な証である。
・治療においては、標本同治とする。
・標証の症状が激しいときには急則治標とする。
②主証と客証
・主証とは、病の発病から引き続き変わらない症状の証をいう。
・客証とは、発病の経過中に現れたり消えたりする症で、
 主証から派生したものをいう。
・標本は病の本質を知り、主客は症状の連絡性を知る。
証決定の手順
・望診、聞診により神気(生命力)を診る。
・問診により病証を推定する
・切診により証の確認をする。
・最終的に総合的な判断で病証を決定する。
・治療を行いその結果を四診によって確認する。
※中医学における弁証論治
・中医学の弁証では、八綱弁証から決定し、病院を判断し、
 気血津液のいずれの病理変化であるかを決定する。
・さらに、どの部に病変が存在するかを臓腑弁証や経絡弁証を
 用いて決定する。
・中医学の論治は施治ともいわれ、弁証によって導かれた証によって
 治療原則(治則)に基いて治療方法(治法)を選択し、
 治療を実施する。

第5章 治療論

古代鍼灸法
古代九鍼
・約2000年前の中国で治療に用いられていた9種類の鍼である。
・九鍼は、破る鍼、刺入する鍼、刺入しない鍼に分けられる。
①破る鍼
・破る鍼には鍼、鋒鍼、鍼(鍼)がある。
・鍼は、頭身の皮膚に熱があるとき、陽の熱を瀉す。
・鋒鍼は三稜鍼ともいい、頑固な痛みや痺れに対して
 刺絡して瀉血する。
・鍼は、瘍や大膿を切り開く。
②刺入する鍼
・刺入する鍼には、毫鍼、員利鍼(円利鍼)、長鍼、大鍼がある。
・毫鍼は生気を補い、痺をとり、現在最も多く用いられている。
・員利鍼は、急激な痺に深く刺してこれをとる。
・長鍼は、深部にある慢性の邪や痺をとる。
・大唇は、関節に水がたまっているときに水を抜き取る。
③刺入しない鍼
・刺入せずに接触、摩擦する鍼として、円鍼(員鍼)、鍼がある。
・円鍼は、分肉の間のごく浅い所をこすって、気を瀉す。
・鍼は、手足の末端近くの穴所の脈を按じて、気を補ったり
 邪を出したりする。
古代九鍼の刺法
・古代の刺法には、九刺、12刺、5刺、3刺などがある。

九刺(九変に応ずる刺法)
・古代九鍼のうちの幾種類かを用いる九種の刺法があり、
 それらの刺鍼、取穴の原則が定められている。
・輸刺、遠道刺、経刺、絡刺、毛刺、大瀉刺、分刺、巨刺、刺の
 9種類がある(ゆえんけいらくもうだいぶんこさい)。
①輸刺
・五臓の病のとき手足の末端近くの栄穴、兪穴、原穴を刺すもので、
 毫鍼、鍼を用いる。
②遠道刺
・病が上にある時は下に刺し、下合穴に刺すこともある
・下合穴(六腑の合穴)とは、胃は足三里、大腸は上巨虚、
 小腸は下巨虚、膀胱は委中、三焦は委陽、胆は陽陵泉である。
③経刺
・経脈に病がある時には、経脈に刺す。
④絡刺
・絡脈に病があるときには、血絡を瀉して刺絡する。
⑤分刺
・分肉の間を刺す
⑥大瀉刺
・大膿を鍼で瀉す。
⑦毛刺
・表在性の知覚異常や神経痛に対してごく浅く刺す
⑧巨刺
・経脈に病がある時、右にあれば左に、左にあれば右に刺す。
⑨刺
・筋がひきつるとき、大鍼を熱したもの(ばん鍼)を用いて刺す。
・その変法として灸頭鍼がある
※ばん鍼:火へんに番

十二刺(主に豪信を用いる刺法)
・偶刺、報刺、斉刺、恢刺、揚刺、直鍼刺、輸刺、短刺、
 陰刺、浮刺、傍刺、賛刺がある
①偶刺
・心痺のときには、前後から二本刺す。
・前後配穴、兪募配穴へと発展した
②報刺
・痛む所を追いかけて次々刺していく方法。
・痛みを追いかけて煮付けると前の鍼を抜いて次に刺す。
③恢刺
・筋の病に対して刺鍼転向法を行う方法。
④斉刺(三刺)
・寒邪が入ったとき、一直線上に3本並べて刺す方法。
・中心部に1本刺し、その両直側にも刺鍼する。
⑤揚刺
・寒邪が入ったとき中心部に1本刺し、さらに四方から
 中心部に向けて水平刺する方法。
⑥直鍼刺
・寒邪が浅いときに、皮膚を摘み上げて浅く刺す方法。
⑦輸刺
・深部に熱があるとき、真っ直ぐ深く刺して直ちに抜く方法。
⑧短刺
・骨痺に深く刺して骨に達する方法。
⑨浮刺
・肌肉の病に傍らに浅く斜刺する方法。
⑩陰刺
・冷えに対して、両太谿に刺鍼する方法。
⑪傍鍼刺
・慢性の病に痛む部に直刺し、傍らに斜刺する方法。
⑫賛刺
・出来物や腫れ物に浅く刺して出血させてしぼませる方法。
五刺(五臓に応ずる刺法)
・五刺には、関刺、豹紋刺、合谷刺、半刺、輸刺がある。
・それぞれは、五主(筋、血脈、肌肉、皮毛、骨髄)に対して刺す。
①関刺
・肝の病に用い、関節部の筋に深く刺す。
②豹紋刺
・心の病に用い、血の滞りに対して浅くたくさん刺す。
③合谷刺
・脾の病に用い、肌肉に3本の鍼で谷間を作るように斜刺する。
④半刺
・肺の病に用い、皮膚表面に浅く素早く刺す。
⑤輸刺
・腎の病に用い、最も深く刺して骨に至らせるように刺す。
三刺
・陰陽の邪気を出し、水穀の気のめぐりを浴する方法である。
・初めは浅く刺して陽邪を出し、次に深く刺して陰邪を出し、
 さらに深く刺して水穀の気を招く。
反対側の刺法
・反対側刺法で経絡に対する刺を巨刺という。
・反対側刺法で絡脈に対する指法をびゅう刺という。
※びゅうは、いとへんに膠の右

補瀉法
・補とは、不足している人体の正常な気を鍼灸を用いて補い、
 充実させることである。
・瀉とは、邪気や余分な気血を漏らしたり、あるいは
 他の箇所へ移すことである。
・補瀉の方法には、用鍼の補瀉、手法の補瀉、取穴の補瀉がある。
用鍼の補瀉
・補瀉の目的にあった九鍼を用いる。
手法の補瀉
①呼吸
・補法は患者の呼気時に刺入し、吸気時に抜鍼する。
・瀉法は患者の吸気時に刺入し、呼気時に抜鍼する。
②迎随
・補法は鍼を経絡の流注方向に沿って刺入する。
・瀉法は鍼を経絡の流注方向に逆らって刺入する。
③提按・開闔
・補法は経穴を良く按じてから刺鍼し、抜鍼後は鍼孔を閉じる。
・瀉法は経穴を良く案じてから刺鍼し、抜鍼後に鍼孔を開く。
④除疾・出内・遅速
・補法は徐々に刺痛なく刺入し、徐々に抜鍼する。
・瀉法ははやく刺入し、はやく抜鍼する。
⑤細太
・補法は細い鍼を用い、瀉法は太い鍼を用いる。
⑥浅深
・補法は浅く刺入した後に深く刺入する。
・瀉法は深く刺入した後に浅くする。
⑦寒熱
・補法は刺入した鍼下が熱し、瀉法は刺入した鍼下が寒する。
・補法は熱するまで待ち、瀉法はすぐに抜く。
⑧さ転(さは手偏に差)
・補法は、患側の左側では右回転、患側の右側では左回転させ、
 瀉法はその逆とする。
⑨揺動
・補法は、鍼を刺入した後に刺し手を震わせて気を促す。
・瀉法は、鍼を刺した後に押し手を揺るがせて気をもらす。
取穴の補瀉
①難経六十九難
・虚すればその母を補い、実すればその子を謝す。
②難経七十五難
・東方実し西方虚せば、南方を瀉し北方を補う。

灸法
・陥下、つまり虚している所へ灸をすれば効果がある。
灸法の補瀉
①艾質
・補法は良質艾を用い、瀉法は粗悪艾を用いる。
②硬軟
・補法は軟らかく捻り、瀉法は硬く捻る。
③密着度
・補法は皮膚に軽く乗せ、瀉法は皮膚に密着させる。
④底面
・補法は底面を小さくし、瀉法は底面を大きくする。
⑤燃焼
・補法は火を吹かずに自然に燃やし、瀉法は火を吹いてよく燃やす。
⑥熱さ
・補法は熱さを緩やかにし、瀉法は熱さを激しくする。
⑦艾の大きさ
・補法は艾を小さくし、瀉法は艾を大きくする。
⑧続行
・補法は灸灰の上に重ね、瀉法は灸灰を取り除いて置く。

治療原則
・現在、重要視されている治療原則には、虚実に応ずる原則、
 寒熱に応ずる原則、本標に応ずる原則、病位に応ずる原則の
 4つがある。
①虚実に応ずる原則
・先補後瀉の原則で、虚に対して補を行い、実に対して瀉を行う。
・虚実は全体的な現れでもあるが、部分的な気や脈の現れでもある。
・補瀉を行うには、患者の年齢や体質を考慮しながら、
 経絡の虚実や症状の虚実を捉えて行う。
②寒熱に応ずる原則
・気が実すると発熱しやすくなり、気が虚すと冷えやすくなる。
・暑いときは速刺速抜して熱気を発散させ、冷たいときは
 鍼をしばらく留め、気を集めて刺入部が熱するのを待つ。
③本標に応ずる原則
・病人の証には本と標があり、まず本の治療を行う(治病求本)。
・生命に関する症状であるときは、標の治療を先に行う。
④病位に応ずる原則
・病位とは、病邪が主として存在する部位であり、
 陰陽、経絡、臓腑、五支などがある。
・病位を陰陽で分けると、陽の部(体表)に刺すときは浅く刺し、
 陰の部(体内)に指すときは深く刺す
・経脈に対しては、経脈や絡脈の虚実をみて補瀉する。
・臓腑においては五臓の病には原穴を取り、六腑は下合穴を取る。
・五支は、皮膚、肌肉、血脈、筋、骨で構成され目的の深さに刺す。

※太極療法
・太極療法は全体調整を目的としたもので澤田健が命名した。
・基本穴は、百会、身柱、肝兪、脾兪、腎兪、志室、次、
 中、気海、曲池、左陽池、足三里、照海である。





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