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鍼灸理論ノート00「鍼灸理論ノート」

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鍼灸理論ノート全文

第1章 概論
1.鍼灸施術の意義
■1)鍼術の定義
鍼術とは一定の方式に従い鍼をもって身体表面の一定部位に接触、穿刺、刺入し生体に一定の機械的刺激を与え、それによって起こる効果的な生体反応を利用し、生活機能の変調を矯正し、保健および疾病の予防または治療に広く応用する施術である
■2)灸術の定義
灸術とは一定の方式に従い、艾を燃焼させ、またはこれに変わる物質を用いて身体表面の一定部位に温熱的刺激を与え、これによって起こる効果的な生体反応を利用し、生活機能の変調を強制し、保健および疾病の予防または治療に広く応用する施術である

■3)鍼灸治療の特徴
(1)経験療法であること
・原始的には痛い部位を圧したりもんだりなめたり、暖めたりしていた
・古代思想の影響を受けている
☆中国では古代文明の再生期である前漢ごろにさまざまな理論、思想が確立された
☆ヨーロッパでは哲学者、芸術家が解剖学を発展させた
・現代自然科学観に対応している
EBM:Evidence Based Medicine
EBMを体節にする

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第2章 鍼の基礎知識
=====================
■1)用具(鍼、鍼管)
(1)毫鍼の各部の名称
①鍼柄(軸または竜頭)
・弾入、刺入、抜除など、術者がつまんで操作する
・古くは流派により形状や太さ、長さが異なっていたが、太さ5厘、長さ6分ぐらいとされていた
・最近では規格化の中、長さ20mmとされるようになった
②鍼根(脚)
・鍼が鍼柄に組み込まれている部で、操作時に最も折れやすい
・接着にははんだ、電気溶接、カシメなどの種類があるが、カシメ式は熱や引きに最も強い
③鍼体(穂)
鍼根から鍼尖にかけての分
④鍼尖(穂先)
・切皮時に皮膚を切る部で、刺鍼方式や流派により形状が異なる
・滅菌、刺入、その他の操作などで摩滅しやすく、欠損も起こりやすい

(2)鍼の長さと太さ
①管鍼法
ア.長さ(鍼体長)の名称
鍼の規格は国際標準化の流れにのっている
10mm鍼から150mm鍼まで17種類がある
☆鍼の種類
単位はmman()ミリメートルアキュパンクチャーニードル
10、15(5分)20、30(1寸)
40(1寸3分)、50(1寸6分)
60(2寸)、70、75(2寸5分)
80、90、100、110、120、130、140、150、
イ.鍼体径の名称
10号鍼(0.10mm)から50号鍼(0.50mm)まで0.02ミリずつの段階で21種類
従来の1番鍼=0.16mmで16号鍼
3番鍼=0.20mmで20号鍼
例えば1寸6分3番鍼は50mm20号鍼と記載
かすみ鍼は12号鍼、毛鍼は14号鍼

②中国鍼
・中国鍼は日本鍼より太く長い
切皮に際し鍼管を使用せず、撚鍼法で行う
・直径は0.38mm(28号鍼)から0.28mm(34号鍼)程度のものがよく用いられる
☆0.02mmきざみ

③鍼尖の形状
・スリオロシ型
鍼根部より鍼尖部にかけて順次細くしたもので、刺入しやすいが曲がりやすく疼痛をを与えやすい
打鍼法に使用されていた
・ノゲ型
鍼尖の上部約1.5mmのところから細くしたもので、刺入しやすく曲がりにくいが疼痛を与えやすい
・卵型
鍼尖が卵のように丸みをおびているもので、曲がりにくいが刺入しにくく鈍痛を与えやすい
・松葉型
鍼尖の少し上部から細くしたもので、ノゲ型と卵型の中間の形。刺入しやすく疼痛も少ない。管鍼法に用いられる
・柳葉型
松葉型より鋭利にしたもので
撚鍼法に適している

④鍼の材質と特徴
・金鍼
利点:柔軟性、弾力性に富、人体組織へのなじみが良い。腐食しにくい
欠点:高価で耐久性に劣る
☆多くは18金。銅が混ざっていることが多い
・銀鍼
利点:柔軟性、弾力性に富、人体組織へのなじみが良い。金鍼に比べ安価である
欠点:酸化・腐蝕しやすい。耐久性に劣る
☆ニッケル、クロムなどが混ざっている
・ステンレス鍼
利点:刺入しやすく折れにくい。腐蝕しにくい。安価である。耐久性に優れ、高圧滅菌や通電に耐える
欠点:他に比べ柔軟性、弾力性に劣る
☆鉄、ニッケルなどの合金

⑤鍼管の材質と形状
・管鍼法は杉山和一により創始された
・鍼管の材質は古くは鉄にメッキしたものなども使われていたが、現在では滅菌に耐えるステンレス製が一般的である
・また、ディスポーザブル鍼ではプラスティック製も多く見られる
・鍼管の長さは使用針より1分5厘(4mm)短い
・鍼管の形状は円筒形、六角形、八角形などがあり、変形としては無痛鍼管、俵型鍼管、穴(窓)あき鍼管、斜刺用鍼管

(3)古代九鍼
・古代九鍼の奇祭が始めて登場するのは霊枢(黄帝内経)である
①古代九鍼を使用法により分類すると3種類に分けられる
・破ぶる鍼
鍼、鋒鍼、鍼
☆皮膚麺に近いところに膿が溜まっているときなどに使用
☆鋒鍼:瀉血に使用する
☆鍼:へら状
・刺入する針
員利鍼、毫鍼、長鍼、大鍼
☆員利鍼、長鍼、大鍼はかなり太くて大きい
・刺入しない鍼
円鍼、鍼
☆鍼:先に球がついている
・現在一般に使用する鍼は毫鍼から、瀉血に使用する三稜鍼は鋒鍼より変化したものである

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第3章 刺鍼の方式と術式
=========================
■1)刺鍼の方式
(1)撚鍼法
・押手を皮膚にあて、それに沿わせて刺手に持った鍼尖を皮膚に当てる
・押手の形を作り、圧を書けながら刺手をひねって刺入するものである
(2)打鍼法
・安土桃山時代に御薗意斎により始められたもので、主に腹部に用いられる
・押手の示指の爪の上に中指を重ねた中に鍼をはさみ、その鍼の柄の先端を小槌で叩打し刺入する
1から2分でよく、深刺してはならない
☆鍼長は2寸、すりおろし型の鍼を使用
・これに勝ち曳の鍼、火曳の鍼、散ずる鍼、止める鍼、胃快の鍼、吐かす鍼などがある
☆勝ち、火の鍼は瀉法、止めは下痢止め
(3)管鍼法
・杉山和一により創始されたもので、鍼よりやや短い管に入れた鍼のわずかに出た柄を叩打し切皮するものである
・挿管法には片手挿管法と両手挿管法がある

■2)刺鍼の術式
(1)前揉法と後揉法
刺鍼の前または後に刺鍼部位を指頭で押圧(揉圧)する方法である
そのやり方は取穴した部位に押手の示指または母指で皮膚面をこすらずに中心に向かって輪状に深部に達するように揉圧するのが良い
①前揉法の作用
患者の生体に鍼の刺入を予告する
皮膚や筋をやわらげ、刺激にならす
☆前揉捏にも出血の防止作用がある
②後揉法の作用
抜鍼後の鍼の異感覚の防止
小血管からの出血の防止または吸収

(2)押手と刺手
①押手
・押手とは鍼や鍼管を保持し、それらを安定させる
・押手は一般にきき手と反対側の手で行う
・押手の型には半月の押手と満月の押手とがある
・押手のかける圧には左右圧、上下圧、周囲圧の3種がある
ア.左右圧(水平圧)
押手の母指と示指で、鍼体をつまむ圧のことである
イ.上下圧(垂直圧)
押手の母指と示指で刺鍼部位にかける圧のことで刺鍼手技を終えるまで、圧を変化させない
ウ.周囲圧(固定圧)
押手の母指と示指以外の指腹や小指外側、小指球などで患者にかける圧のことで、刺鍼部全体を固定し患者の急動を防ぎ、皮膚や筋が活動して鍼が曲がることを防いだりする
また患者に安心感を与える
②刺手
実際に鍼を持ち、刺入、抜除、刺鍼中の手技などを行う

(3)切皮(穿皮)
切皮とは皮膚に接している鍼尖により、皮膚表面を切ることである
・管鍼法では鍼管より出ている鍼柄を巧打することを弾入という
切皮の方法に、撚鍼法、打鍼法などがある

(4)刺入法
鍼を半回転ずつさせながら行うものを、旋撚刺法と、刺手の重みで沈めるようにしたり、母指と示指で送り込むようにする送り込み刺法とがある

(5)刺鍼の角度
これには直刺、斜刺、横刺(地平刺、水平刺)がある

(6)刺鍼中の手技
①単刺術
鍼を目的の深さまで刺入し、すぐに抜除する手技
きわめて弱い刺激を目的とする
②雀啄術
鍼を刺入する時または、一定の深度まで刺入してから刺手で身体か鍼柄を持って、雀がえさをついばむように上下に進退させる手技
上下動の早さ、深さ(幅)、時間などにより強刺激にも弱刺激にもなる
③間歇術
鍼を目的の深さに刺入し、しばらくとどめ、ある程度抜いてしばらくとどめ、再び前の深さまで刺入ししばらくとどめることを繰り返す手技
強刺激となる
④屋漏術
刺鍼の深さを決定し、その深さを三等分して行う
まず3分の1を刺入し、留置または雀啄を行う。次の3分の1を刺入し、留置または雀啄を行う。最後に残りの3分の1を刺入し留置または雀啄を行う
抜鍼時も3分の1ずつ同様に行う
血管拡張、筋、神経の鎮静作用がある
⑤振せん術
目的の深さまで刺入し鍼の鍼柄を刺手でつまみ振動させる手技
時間の長短により鎮静的にも興奮的にも働く
弱刺激にも強刺激にも働く
⑥置鍼術(留置術)
鍼を刺入下まましばらくの間とどめておき、生体反応を見極めた後抜鍼する方法
穏やかな刺激を持続的に与え、鎮静的に作用する
⑦旋撚術
刺入時または抜鍼時に鍼を左右に半回転ずつ構語に行う方法と、目的組織にまで刺入した後に鍼を構語に半回転ずつさせる方法とがある
⑧回旋術
鍼を1方向に回しながら刺入し、反対方向に回しながら抜鍼する方法と目的の組織に達してから一方向に回し、刺激を与え、その後もとの位置に戻してから抜鍼する方法とがある
強刺激を与える
⑨乱鍼術
一定の方式に従わず、数種の手技を併用する方法
⑩副刺激術(気拍法)
刺入した鍼の周囲の皮膚を鍼管や指頭で叩打したり押さえたりする方法
抜鍼困難時などに応用することが多い
⑪示指打法(軽打術)
鍼を目的の組織まで刺入しその鍼に鍼管をかぶせ、鍼管の両端を弾入のように叩く手技
抜鍼困難時などに応用することが多い
⑫随鍼術
患者の呼吸に合わせ行う手技で、刺入時には呼気時に刺入し吸気時にとめ、抜鍼時は吸気時に抜き呼気時にとめる手技
⑬内調術
刺入した鍼の鍼柄を鍼管で叩打する手技
⑭細指術
弾入を行うが、鍼柄が鍼管内に入る前に刺手で鍼柄を抜きあげ、再び弾入を行う手技
強刺激を与える
⑮管散術
鍼を用いず、施術部位に立てた鍼管の上端を弾入のように叩打する手技
初心者や知覚過敏者などに応用する
⑯鍼尖転移法(術)
弾入ののち、鍼尖を皮下にとどめ、押手と刺手を同時に縦横または輪状に動かす手技
掻破様の強刺激を与える
⑰刺鍼転向法
一度刺入した鍼を皮下にまで引き上げ、別の方向に刺鍼する手技

(7)特殊鍼法
①小児鍼
ア.種類
・接触鍼
集毛鍼、振子鍼、いちょう鍼など
・摩擦鍼
車鍼(ローラー鍼)、いちょう鍼、ウサギ鍼
☆材質はステンレスのものが多いが、以前は洋銀や銀、真鍮など
イ.対象と適応
・生後二週間ごろから小学生ごろまで、または成人でも過敏な人、刺入に抵抗がある人
・成長過程で自律神経のバランスのくずれにより、症状が現れるもの
…疳虫(小児神経症)、夜泣き、夜驚、食思不振、扁桃炎、気管支喘息など
☆食思不振:食欲不振
・藤井秀二(ふじいひでじ)によると小児鍼は皮膚に加わる刺激により交感神経をコントロールすることにより効果があるとされる
②皮内鍼・円皮鍼
ア.皮内鍼
・種類
赤羽幸兵衛の発案によるもので3~7ミリの鍼を皮内に水平に刺入し、長時間留置するもの
竜頭はリング型、板状(平軸型)、丸軸型などがある
☆シワのできる方向に平衡に指すこと
・知熱感度測定法を考案し、経絡の知熱感度を測定した
感度の悪い経絡の原穴に皮内鍼を行う
・適応
疼痛疾患に効果的である
イ.円皮鍼
・種類
画鋲状の鍼で長さ1~2ミリのものを皮膚に垂直に刺入
中国ではきん鍼とも言われる
☆きん:てへんに鉄
・適応
筋疲労や痛みなど、スポーツ競技者によく使われる
また極小のものは耳鍼に使われる
③灸頭鍼
・方法
置鍼した鍼の鍼柄に球状にしたもぐさをつけ、点火することで鍼の機械的刺激と灸の温熱刺激を同時に与えようとするものである
鍼はもぐさの重量を支え、皮膚との距離を保つために必要な太さ、長さのあるものを使用する
灸頭鍼に用いる鍼の鍼柄は金属で、かしめ式のものを用いる
灸頭鍼の熱の伝わり方は、大半が輻射熱である
・適応
肩こり、腰痛、下痢、下肢の冷えなど

④低周波鍼通電療法
・方法
刺入した針に電極を取り付け、0.5~50Hz程度の低周波を流す方法である
使用鍼はステンレス製で、腐蝕を考慮するため3~5番以上の鍼を用いる
・適応
麻痺、神経痛、鍼麻酔など
⑤その他
・イオン鍼
異種金属の電位差を利用するもので金と銀、亜鉛と銅などを使用する
主に奇経治療に使用し、八宗穴に刺鍼する
・レーザー鍼
刺鍼の代わりに波長720nmの低出力レーザーを経穴部位に照射するもの
疼痛疾患や星状神経節ブロックなどに用いられる
・刺絡(絡刺)
三稜鍼を用い井穴などから瀉血する方法

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第5章 灸の基礎知識
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1.灸の材料
■1)もぐさについて
もぐさはよもぎの葉から作られ、燃焼により皮膚組織に適度な温熱刺激を与えることができる
(1)よもぎ
よもぎは山野に自生する菊科の多年生植物である
生産量は新潟県がもっとも多い
☆食用に加工されたり、薬剤に加工されたりする
(2)製法
・5~8月によもぎを採取し、そのみの実を3、4日間直射日光または火力で、含水率1~2%以下にまで乾燥させる
・石臼でひいてふるいにかける
・さらに唐箕(とうみ)で細かな不純物を除去し完成する
(3)成分
もぐさの成分はよもぎの葉の裏側にある茸状と腺毛である
①茸状
菊科植物の葉に密生する白い毛のことで、T字毛とも言われる
②腺毛
腺毛には揮発性の精油が含まれる
精油の主成分はチネオールで、その他テルペン類も含まれ、独特の芳香を発する
もぐさにはこれらの成分のほか、線維、蛋白質などの有機物、類脂質、灰分、ビタミンB・Cなども含まれる

■2)もぐさの品質
もぐさの品質は、製造方法によって異なるが、芳香の良い熱刺激の緩やかなものが両室である
しかし、用途に合わせ粗悪なものなども使い分ける
①両室もぐさ
芳香が良い、手触りがよく軟らかい
淡黄白色、線維が細かい、不純物が少ない
燃焼時のけむりと灰が少ない
燃焼時の熱感が緩やか
②粗悪もぐさ
青臭い、手触りが悪く硬い
黒褐色、線維が荒い不純物が多い
燃焼時の熱感が強い 燃焼時けむりと灰が多い
■3)もぐさの種類
①直接灸用もぐさ
・治療穴にもぐさを直接のせ、施灸するもので、良質もぐさを用いる
・このうち、施灸時に適宜、艾をひねって使用するものを散艾(ちりもぐさ)といい、あらかじめ一定の太さの円柱状にしたものを使用するものを切艾(きりもぐさ)という
②間接灸用のもぐさ
・温灸、隔物灸、灸頭鍼など、間接的に皮膚に熱刺激を与えるもので、比較的火力が強く、経済的な粗悪もぐさが用いられる
・あらかじめもぐさを和紙で巻き、棒状にしたものを巻艾(まきもぐさ)という

2.線香
・線香はタブの樹皮や葉、スギの葉などの粉末を主原料とし、着色料、香料などを加え練り、乾燥させたものである
・太さは3ミリ程度のものを使用する
・施灸には無臭で燃焼後の灰が少なく、折れにくいもので、着火しやすい線香が用いられる

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第6章 灸術の種類
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有痕灸と無痕灸とがある
1.有痕灸
灸痕を残す施灸法のことで、直接皮膚の上に艾しゅを置いて施灸する
強い温熱刺激を与え、それによる生体反応を治療に利用する
■1)透熱灸
良質もぐさを使い、米粒大前後の円錐形の艾しゅにし、直接経穴・圧痛点などの治療点に置き、着火する
艾しゅの大きさには、半米粒大、米粒大、麦粒大、そら豆大、糸状灸などがある
■2)焦灼灸
熱刺激により施灸部の皮膚及び組織を破壊する灸法である
いぼ、魚目などを焼ききり、痂皮が自然に落ちて治癒させるなど
■3)打膿灸
小指から母指頭大の艾しゅを直接施灸し、火傷を作りその上から膏薬を貼付し化膿させる
瘢痕治癒までに1から2ヶ月かかるが、生体の防衛昨日を高めるために行われる
小児や虚弱者には不適である

2.無痕灸
灸痕を残さず温熱刺激を与えるもので、有痕灸を禁忌とする部、小児や女性、虚弱者に用いる
1)知熱灸
有痕灸と同じく、皮膚に直接米粒大、半米粒大の艾を置き、点火した後術者の指で消火するもの、これに八分灸、九分灸がある
■2)温灸
もぐさを患部から離れたところで燃焼させ、、輻射熱による温熱刺激を与える
もぐさを和紙で帽状に巻いた棒灸や、筒状の台座の上でもぐさを燃焼させる温筒灸などがある
■3)隔物灸
皮膚と艾との間にものを置いて施灸する方法
にんにく灸、みそ灸、塩灸、墨灸などがある

■4)薬物灸
もぐさを使用しない灸法
・各種薬物を治療穴に塗布し薬物のみの刺激を与える
・うるし灸、紅灸

3.灸の着火方法
線香を用い、その先が艾の高さより皮膚に近づいたりしないようにする
示指と中指で線香をはさみ、小指球と小指尺側で患者の皮膚に触れ、急な体動に備える
線香を回転させながら着火する

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第7章 鍼灸の臨床応用
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効果的な反応を引き起こすためには、患者の感受性に応じた適切な刺激量を与える必要がある

1.刺激量
■1)鍼の刺激量を決定する条件
・長くて太い鍼
・運鍼速度が急な時
・刺激時間が長い時
・動揺の大きな手技
などでは刺激量が多い

■2)灸の刺激量を決定する条件
・艾の大きいもの
・ひねりの硬いもの
・壮数を多くするもの
・毎回灰を除去しすえるもの
は刺激量が多い

2.感受性
①一般的な固体の感受性
鋭敏なもの 鈍感なもの
年齢 小児、老年 青年、壮年
性別 女性 男性
体質 虚弱、神経質 頑健なもの
栄養状態 不良なもの 佳良なもの
経験 未経験者 経験者
刺激部位 顔や手足 腰や背
②個々の患者持つ感受性
・基礎疾患や精神状態により感受性は変化する
例えば高血圧症、手結血圧症、自律神経失徴症など

3.鍼灸療法の適応症
(1)考え方
・鍼灸は機械的、温熱的刺激を与え、効果的な生体反応を引起し、保健、疾病の予防、治療に用いる
・生体反応は施術部だけでなく遠隔部にも及び、鎮痛、自律神経系、内分泌系、血瘤などを調節したり、免疫機能に変化を及ぼしたりする
・機能的疾患は適応症となるが、器質的疾患であってもこれらの反応により改善が期待できる場合は適応症となる
①WHOによる鍼の適応症(43疾患)
・上気道疾患
急性副鼻腔炎、急性鼻炎、感冒、急性扁桃炎
・呼吸器疾患
急性気管支炎、気管支喘息(特に小児で合併症のないもの)
・眼疾患
急性結膜炎、中心性網膜炎、近視、白内障
・口腔疾患
歯痛、抜歯後疼痛、歯肉炎、急性慢性咽頭炎
・胃腸疾患
食堂・噴門痙攣、しゃっくり、胃下垂、急性・慢性胃炎、胃酸過多症
慢性十二指腸潰瘍(除痛)、急性十二指腸潰瘍(合併症のないもの)
急性・慢性腸炎、急性細菌性赤痢、便秘、下痢
麻痺性イレウス
・神経、筋、骨疾患
頭痛、片頭痛、三叉神経痛、顔面神経麻痺
脳卒中後不全麻痺、末梢神経障害
ポリオの後遺症、メニエル病、
神経因性膀胱、夜尿症、肋間神経痛
頸腕症候群、五十肩、テニス肘
坐骨神経痛、腰痛
変形性関節症
②NIH(米国国立衛生研究所)による鍼が有効な疾病
術後・薬物療法時の悪心嘔吐
妊娠悪阻(つわり)
歯科の術後痛
・補助的ないし、代替的治療としての鍼
薬物中毒
脳卒中リハビリテーション
頭痛、月経痛
テニス肘など

4.鍼灸療法の禁忌
■1)禁忌の部位
(1)鍼施術の禁忌の部位
・新生児の大泉門、外生殖器、臍、眼球、急性炎症の患部など
・臓器付近への刺鍼に注意を要するもの
肺、胸膜、心臓、腎臓、中枢神経系、大血管
(2)灸施術の禁忌の部位
・禁忌部位
顔面部、化膿を起こしやすい部位、浅層に大血管がある部位、皮膚病の患部
■2)禁忌の場合
(1)鍼施術の禁忌の場合
①一般的事項
安静が必要な場合
刺激を与えることで有害作用を起こす場合
免疫能が低下し、感染の危険が高い場合
②WHOによる治療をさける場合
妊娠時(陣痛や流産の可能性)
救急事態
手術を必要とする場合
悪性腫瘍局所
出血性疾患

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第8章 リスク管理
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1.リスク管理の基本
■1)施術上の一般的注意
・鍼灸治療による感染防止対策
・鍼灸治療の適否の判定
・医療過誤や副作用予防のための知識技術の習得
・医療過誤や副作用が生じた時のための対応策をあらかじめ検討する
・診療記録を詳細に記載

2.鍼両方の過誤と副作用
治療過誤および事故には誤診、折鍼、神経障害、感染などがあり、副作用には結節形成、内出血、抜鍼困難、脳貧血などがある
(1)気胸
胸腔内に気体が存在する状態
①原因
前旨部、側胸部、肩背部付近の深刺により胸膜や肺に穿孔が起こる
②症状
胸痛、チアノーゼ、刺激性咳、労作性呼吸困難
③予防
・前胸部、側胸部、肩背部付近の解剖を理解し、刺入深度を調節する
女子では第2、3肋骨が薄い
また、いわゆる聴診三角(第5~9胸椎部の膀胱経第2行線)は気胸を起こしやすい
・刺入方向の検討
・体格の考慮
・痛みにより刺入を中止
・技術の熟練
④処置
・数時間安静に臥床させる
・安静にしても症状が変化しないか増悪するときは、医師の診察を受ける

(2)折鍼
①原因
粗悪な鍼の使用、銀鍼は折鍼事故が多い
オートクレーブの反復使用
鍼通電による腐食
患者の体動による筋収縮や、鍼弯曲時の無理な抜き取り
②予防
オートクレーブの反復使用をさける
ディスポーザブル鍼の使用
鍼の操作で過度の力を加えない
鍼が曲がったら速やかに交換する
鍼柄と鍼体の接合部まで刺入しない(一横指残す)
③処置
患者を落ち着かせ、体動を禁じる
皮膚より断端が出ている場合はピンセットで引き抜く
皮膚表面に断端があれば断端が出てくるまで周囲の皮膚を押さえピンセットで引き抜く
折れた鍼が皮下にある場合、患者に別の体位ををとらせることで断端が現れることがある
抜鍼できない場合は外科的手術が必要である

(3)皮膚反応
抜鍼後、発赤、膨疹、紅斑や皮膚膨隆が現れるもの
①原因
組織損傷に伴う小炎症
血管刺傷による内出血
アレルギー反応
②予防
後揉捏を十分行う
手技の熟練
細鍼の使用
③処置
炎症やアレルギー反応によるものは自然に消失する
内出血によるものは軽く圧迫する

(4)出血、内出血
①原因
毛細血管の刺傷
粗暴な手技
②予防
出血しやすい部位では身長に操作する
細鍼の使用
前後の揉捏を十分に行う
特に顔面部は美容上の問題となるので注意する
③処置
アルコール綿花で圧迫し止血する
止血後は揉捏すると吸収が早まるが、再度出血する化膿性があるので注意する
紫斑は自然に消えるが温湿布や周囲への散鍼は吸収を促進する
④注意
出血素因を有する時は注意する
WHOでは出血性、凝血性の疾患、または抗凝血治療中、抗凝血剤使用中の患者は鍼治療を行うべきでないとしている

(5)抜鍼困難(しぶり鍼、渋鍼)
回線や雀啄ができなくなり、抜鍼困難な状態
①原因
・筋収縮により鍼体が固定
・過度の回線により筋組織が鍼体に巻きつく
・患者の体動により疼痛が起こり、反射的に筋が収縮して鍼体が固定
・筋収縮により鍼体が弯曲
②処置
・患者にリラックスさせる
・原因が回線の場合は逆方向へ回し少しでも緩和させてから抜鍼を試みる
・筋収縮が原因の場合、そのまま鍼を放置し筋が弛緩するのを待つ
・示指打法や副刺激術を行う
・周囲に別の鍼を刺入し、筋を弛緩させる(むかえ鍼)

(6)脳貧血(脳虚血)
☆虚血=局所貧血
阻血=手足の局所貧血
・刺激により小動脈の収縮が起こり脳循環血液量が減少し、顔面蒼白、冷や汗、悪心嘔吐、血圧低下、一過性の意識消失(失神)などを起こすもの
①原因
・坐位や立位で精神的緊張状態にある患者への刺鍼
・心身の状態がよくない患者への粗暴な施術(不眠、脾労、空腹など)
②処置
・患者を仰臥位にし東部を低くして安静をとらせる
・四肢の末端付近(合谷や足三里)に刺鍼して回復させる(返し鍼)

(7)遺感覚
刺鍼時および抜鍼後に発生する痛みや違和感で、治療後数日間残ることもある
①予防
・技術の熟練と最適な刺激量の習得
・刺入器具及び技術の工夫
・後揉法を十分に行う

3.灸療法の過誤と副作用
■1)灸痕の化膿
(1)原因
・水疱の形成
・痂皮または水疱の破壊
・施灸後の不完全な消毒
・発汗、入浴など
・化膿しやすい体質および免疫力の低下
(2)予防および処置
・できるだけ同一部位に施灸する
・艾の大きさを小さくする
・灸痕を掻破しないよう、清潔にするよう指導する
・化膿した場合施灸を中止し、消毒を反復する
(3)灸あたり
施灸直後または翌日に倦怠感疲労感、脱力感を持続的に自覚し、急速に軽減するものをいう
①原因
総刺激量の過剰と生体の過剰反応
②予防
・初診患者、神経質なもの、恐怖感を持つものには、総刺激量を少なくする
・施術前、患者に十分に説明し、精神的安定をはかる
・初診者、しばらく施灸を休んでいたものには、総刺激量を少なくし段階的に増やしていく
③対策
・灸あたりを生じたら安静臥床させ、できればしばらく眠ってもらう
・治療終了後、灸あたりの説明をし、できれば安静にするよう指示する

4.感染症対策
■1)施術者の手指消毒
(1)手の洗浄
①目的
手指に付着している皮刺や汚れを落とすとともに付着雑菌の絶対量を減らすことにより消毒効果を高める
②手の洗浄方法
・手指全体を留水で濡らし、適量の薬液を泡立てる
・手の甲、指の間、指先、爪などをよくこする
・流水で丁寧にすすぐ
・清潔なタオルで水分をふき取り乾燥させる
③手の洗浄に使用する薬剤
・手の洗浄には殺菌作用を有し洗浄効果が高く、皮膚粘膜に対する刺激性の低いものがよい
・一般的に0.1%塩化ベンザルコニウム(逆性石鹸)や0.5%イルガ酸DP300配合の薬用石鹸を用いる
④手指の乾燥
消毒をする際、手指が濡れていると消毒薬の濃度が変化するので十分に乾燥させる

(2)手指の消毒
①手指の消毒方法
・清拭法(スワブ法)
綿球やガーゼに消毒薬を十分しみこませ手指を拭く
・擦式法(ラビング法)
速乾性エタノールローションなどを手指にすり込む
②手指消毒に使用する薬剤
・消毒用エタノール(70~80%)
・イソプロパノール(50~70%)
などが用いられる
察式消毒薬として、エタノールに0.2%グルコン酸クロルヘキシジンや0.2%塩化ベンザルコニウム等を配合したものが用いられる
(ヒビスコールやウェルパスなど)
・察式消毒法は操作が簡便でエタノールによる即効的な殺菌効果、配合剤による持続効果が期待できる

■2)患者の皮膚の消毒
患者の皮膚は洗浄できないので、ある程度の皮脂や汚れがあるものとし、清拭法(スワブ法)で行う
施術部を含む広い範囲を清拭し、その後一定時間消毒薬が残留している必要がある
(1)患者皮膚の清拭方法
・一方向性
・遠心性うずまき
施術部位からうずまき状に少しずつ離れていく
(2)患者皮膚の消毒に使用する薬剤
消毒用エタノール(70~80%)を用いる

■3)器具の消毒法および保管
市販のディスポーザブル鍼はエチレンオキサイドガス(EOG)やγ線により滅菌されている
それ以外の鍼は使用前に滅菌する必要がある
(1)感染リスクに応じた器具の消毒レベル
・消毒レベル…洗浄
患者と密接に接触しないもの
日曜の衣類など
・消毒レベル…消毒
正常な皮膚、粘膜に直接または関節に接触するもの
リネン類、便器、術者の手指
・消毒レベル 滅菌
外皮から貫通するか粘膜に接触あるいは挿入、刺入するもの
内視鏡、手術器具、鍼、注射器など

(2)滅菌法
器具の消毒には降圧蒸気滅菌法が用いられる
①滅菌バッグに洗浄した器具を入れシールし、オートクレーブに入れる
②日本薬局法の基準で適切な温度、気圧、自汗が定められており、それを守る必要がある
115℃、1.7bar(気圧)、30分
121℃、2.1bar(気圧)、20分
126℃、2.1bar(気圧)、15分

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第9章 鍼灸治効の基礎
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1.神経線維の分類
■1)太さ・伝導速度による分類
種類 直径(μm) 速度(m/s) 髄鞘
Aα 12~20 60~120 有髄
Aβ 8~10 30~80 有髄
Aγ 2~8 15~55 有髄
Aδ 1.5~3 6~30 有髄
B 3 3~15 有髄
C 1 0.3~0.8 無髄

■2)感覚線維の数字式分類
種類 起原となる感覚 直径(μm) 速度 対応する線維
Ⅰa 筋紡錘(螺旋形終末) 12~21 70~120 Aα
Ⅰb 腱紡錘 12~21 70~120 Aα
Ⅱ 筋紡錘(撒形終末) 6~12 30~70 Aβ
触圧受容器
Ⅲ 冷・痛受容器 1~6 12~30 Aδ
Ⅳ 温・痛受容器 1以下 0.5~1 C

2.痛み感覚の受容と伝道
1)痛みの種類
(1)痛みの分類
・侵害受容性疼痛、神経因性疼痛、心因性疼痛に分けられる。
①侵害受容性疼痛
・侵害受容線維には体性痛覚線維と内臓痛覚線維がある。
・内臓痛は局在のはっきりしない持続性のうずくような痛みで、
 嘔気などの自律神経反射を伴う。
・内臓痛は近くの骨格筋の収縮を伴うことが多い。
②神経因性疼痛
・痛覚伝達系のどこかに障害があり、侵害刺激がなくても発生する。
・知覚鈍麻、痛覚過敏などを伴いやすい。
・帯状疱疹後神経痛、糖尿病性ニューロパチー、腕神経叢引抜損傷、
 反射性交感神経ジストロフィー、幻肢痛、視床痛などがある。
※腕神経叢引き抜き損傷
・バイク事故などによる上肢の過伸展などで上肢にいっている神経が
 脊髄から引っこ抜かれてしまうもの。
・視床痛に問題があって全身あちこちが痛むこと
③心因性疼痛
・解剖学的あるいは神経学的に問題がないのに起こる痛みで、
 心理的影響により強さや部位が変化する。
2)痛覚受容器の種類と特徴
・痛覚受容器は特殊な構造を示さない自由神経終末であり、
 高域値機械受容器とポリモーダル侵害受容器とがある
・皮膚痛覚の受容器は両方が存在するが深部痛覚や内臓痛は
 ポリモーダル受容器である。
・高域値機械受容器は機械的刺激にのみ興奮し、
 Aδ線維により伝えられる。
・特徴は局在性のはっきりしたさすような痛みで、一次痛という。
・ポリモーダル受容器はすべての侵害刺激に反応し、
 C線維によって伝えられる
・特徴は局在のはっきりしない、にぶくうずくような遅い痛みで、
 二次痛という。また、中枢性修飾を受けやすい
3)内因性発痛物質
・組織損傷により、組織中に放出される発痛性化学物質で
 痛覚受容器を興奮させたり域値を下げる働きがある。
・発痛物質にはブラジキニン、PG、セロトニン、ヒスタミン、
 K+、H+などがある
・この内、PGは直接的発痛作用を持たない。
4)求心性神経線維の種類と特徴
(1)求心性神経線維の種類
・痛覚の求心性一次線維はAδ線維(Ⅲ群)とC線維(Ⅳ群)の
 2種である。
(2)痛覚の伝導路
①外側脊髄視床路
・一次ニューロン、後根、脊髄内、後角、二次ニューロン、
 対側の前外側索を上行、視床、シナプス、大脳皮質に到達。
・新脊髄視床路(外側系)は、脳幹の外側部を通るもので、
 主に痛みの感覚、識別に関与する。
・古脊髄視床路(内側系)は、脳幹の内側部を通るもので、
 情動行動、自律機能と関係が深く、痛みの制御や調節に関与する。
・脊髄内神経伝達物質であるサブスタンスP(P物質)は、
 痛覚1次ニューロン末端から放出され2次ニューロンの興奮を
 引き起こす。
②脊髄網様体路
・脊髄前外側索を上行した2次ニューロンが、延髄網様体において
 多くのシナプスを形成し、視床や視床下部、大脳辺縁系などに
 情報を送り、様々な反応系を形成する。
5)痛覚投射部位
・感覚の成立するのは大脳皮質であるのに、受容器の
 存在部位において感覚が成立しているように感じる現象。
6)熱痛の発生と特徴
・皮膚が45℃以上に熱せられると、組織破壊により
 ポリモーダル受容器の興奮が起こる。
7)関連痛
・内臓求心性ニューロンと皮膚からの侵害性刺激のニューロンは
 どちらも外側脊髄視床路を上行することで、大脳皮質において
 関連痛が成立すると考えられる。

第3節 温度感覚の受容と伝達
温度刺激の種類
・温度感覚には温覚と冷覚があり、極端な場合、
 熱痛、冷痛を引き起こす。
・20~40℃の範囲では、温覚および冷覚の閾値が低い。
・30~36℃(平均33℃)では、温覚も冷覚も起こりにくいので
 無感温度という。
・45℃付近では温覚とともに冷覚を生ずることがあり、
 矛盾冷覚という。
・45℃以上では熱痛を、15℃以下では冷痛を引き起こす。
温度覚受容器の種類と特徴
・これには温受容器と冷受容器があり、いずれも事由神経終末の
 構造である。
・温受容器は40~45℃、冷受容器は25~30℃の範囲で
 最もインパルスを発生する。
求心性線維
・温受容器からの求心性線維は、C線維(Ⅳ群)である。
・冷受容器からの求心性線維は、Aδ線維(Ⅲ群)である。
温度覚の伝導路
①外側脊髄視床路
・後根から入った一次ニューロンは後角で二次ニューロンへ
 シナプスし、交差して、前外側索(外側脊髄視床路)を通って
 視床に行き、ニューロンを変えて体性感覚野に達する。

第4節 触圧感覚の受容と伝達
1.触圧刺激の種類と受容器
・触覚は皮膚表面に軽く触れたときに感じ、圧覚は圧迫または
 牽引刺激によって感じ、いずれも皮膚の変形によって起こる。
・圧受容器にはメルケル盤とルフィニ終末があり(圧メル)、
 順応が遅く、強度検出器の機能がある。
・触受容器にはマイスナー小体と毛包受容器があり、
 比較的順応しやすく、速度検出器の機能がある。
・振動受容器にはパチニ小体があり、最も順応しやすく
 加速度検出器の機能がある。
2.求心性線維の種類と特徴
・触圧覚を伝える求心性線維は、Aβ線維(Ⅱ群)である。
3.触圧覚の伝導路
・これには後索路と腹側脊髄視床路がある。
①後索路‐内側毛帯経
・後索路‐内側毛帯経は、局在が明瞭な精細触圧覚を伝える。
・後根から脊髄に入った一次ニューロンは同側の後索を上行し、
 延髄に達する。延髄後索核で二次ニューロンに変わって交叉し、
 対側の内側毛帯を上行し、さらに視床でニューロンを変えて
 感覚野に達する。
②腹側脊髄視床路
・腹側脊髄視床路は粗大触圧覚を伝える。
・脊髄に入った一次ニューロンは後角でニューロンを変えて交叉し、
 反対側の前外側索(腹側脊髄視床路)を通り、さらに視床で
 ニューロンを変え、大脳皮質感覚野へ伝える。
4.筋の伸張刺激および筋の振動の受容と伝導
・筋の伸張や張力に応答する受容器を固有受容器(深部受容器)と
 いう。
・筋紡錘は筋の伸張に、腱紡錘(ゴルジ腱器官)は筋の張力に
 対応する。
・これらは後索路を上行する。
・筋膜にはパチニ小体があり振動覚を伝える。
・筋中の血管壁、筋線維間、腱結合組織中に自由神経終末があり、
 痛みを伝える。
5.鍼灸刺激と反射
①体性運動反射
・伸張反射…代表的な単シナプス反射で、腱反射のことをいう。
      腱を打腱槌で叩くことにより筋が伸張され、
      最終的に同一の筋が収縮する反射である。
・逃避反射…屈曲反射とも呼ばれ、体性感覚に侵害刺激が加わると、
      屈筋の収縮と伸筋の弛緩が起こる反射で、
      多シナプス反射である。
・交叉性伸展反射…1側の下肢に侵害刺激が加わると同側に
      屈曲反射が起こると共に、他側の下肢が
      伸展される反射である。
②自律神経反射
・内部環境を恒常性に維持するための調節機構の大部分は
 自律神経反射によるものである。
・内臓内臓反射…受容器が内臓にあり、求心路が内臓求心性線維で
        遠心路が自律神経で、効果器が内臓内にある反射。
        頸動脈洞反射、排尿反射、排便反射など。
・内臓体表反射…内臓の病変が体表部の知覚異常として現れるものに
        関連痛やヘッド帯がある。
        脳の感覚受容に際し、内臓病変による求心性線維の        介在によって、皮膚からの求心性線維についても
        皮膚上に痛みという知覚異常を感じてしまうもの。
        その機序は、集束促通説と集束投射説によって
        説明されている。
        デファンスは内臓体性運動反射の1つで、
        内臓に異常があるときに関連する部の骨格筋に
        収縮を起こさせるものである。
・ヘッド帯は、内臓に異常があると一定の皮膚領域に知覚過敏帯が
 現れるというもので、ラングが唱えてロスが研究し、ヘッドが
 これを確証した。
・マッケンジー帯は、内臓に異常があるとき、それに関連する
 深部の筋、結合組織に知覚過敏が現れるというものである。
・ヘッド帯で過敏度の最も強い点を最高点と名づけた。
・各内臓に関与する過敏帯として、心臓はC3C4、T2~T8、
 肺はC3C4、T2~T9、胃はT6~T12(両側、左)、
 肝はC3C4、T7~T10(右)、胆嚢はT7~T11、
 腸はT9~T12、腎尿道はT12L1、子宮はT10~L1、
 前立腺はT2~T8、S1~S3
自律系反射
・皮膚にある汗腺、皮脂腺、立毛筋、末梢血管系を支配する
 交感神経性皮膚分節領域にあらわれる反射である。
・皮脂腺反射は中谷義雄が提唱した良導絡の理論に、
 皮膚血管反射は石川太刀雄が提唱した皮電点の理論に、
 汗腺反射は高木健太郎が提唱した圧発汗反射の理論に用いられた。体性内臓反射
・一定の体壁を刺激すると、その興奮は脊髄後根に伝えられ、
 脊髄の同じ高さの神経支配を受けている内蔵に反射的に影響を
 与える。
・その影響としては、内臓の運動、知覚、分泌、代謝、
 血管運動などである。

鍼灸刺激と反射
体性自律神経反射
・西條一止は、刺鍼と自律神経機能の関連を心拍数を視標として
 研究した。
・鍼刺激は心臓においては交感神経抑制方向に、末梢血管は
 交感神経緊張方向に反応する。
・心臓の収縮力、心拍数は、鍼灸刺激直後で、灸で増加し、
 鍼で減少する。
・刺鍼刺激は交感神経機能抑制、副交感神経機能亢進の両方が
 生じる場合と、どちらかのみの反応が生じる場合、および、
 どちらも起こらない場合が認められ、逆の反応は起こらない。

軸索反射
・皮膚を鍼などで刺激すると紅斑が起こるが、これは受容器からの
 インパルスが求心性に伝達される途中で枝分かれした部分から
 逆行して抹消へインパルスが伝えられ、神経末端からP物質などの
 神経伝達物質が遊離され、血管拡張が生じると考えられる。
・木下晴都は交差刺鍼により、筋疲労が改善されるのは
 軸索反射によって血管が拡張されるものと考えている。

6.鍼鎮痛
1)鍼麻酔
・1958年上海の病院で初めて鍼麻酔による扁桃摘出術が行われた。
・日本では1954年赤羽幸兵衛が鍼による無痛分娩を試みた後、
 産婦人科領域で鍼麻酔の応用が増えた。
・鍼麻酔は特定の経穴を連続的に刺激する必要があり、
 低周波鍼通電が行われるようになった。
・刺鍼の深さは筋肉層に達する必要があり、患者に、
 酸、麻、重、脹などの得気(ひびき)が感じられることが重要で、
 通常10~20分で目的の鎮痛が得られる。
(1)鍼麻酔の適応
・薬剤による麻酔が使えない場合の麻酔。
・頚部より上部の麻酔。
・ショック状態にあるときの麻酔。
・産婦人科領域における麻酔。
・簡易で麻酔科医を必要としない麻酔。
2)鍼麻酔の長所と短所
①長所
・患者の意識がはっきりしているので、手術に積極的に
 協力してもらえる。
・重病患者、体質の弱いものなど麻酔薬の使用が不可能な患者にも
 使用できる。
・術後の痛みが軽く、術中の出欠量も少ない。
・操作が簡単で、経済的である。
②短所
・鎮痛効果の発現が一定でなく、個人差や精神的影響を受ける。
・鎮痛効果が発現するまでに時間がかかる。
・十分な筋の弛緩が得られない。
・皮膚切開が知覚される。
・内臓のけん引痛が除去できない。

2)鍼鎮痛
・一般に鍼麻酔という言葉を使うが、意識レベルは乱れず、
 無痛にもならないことから、鍼鎮痛と呼ぶほうがより適切である。
・鍼通電により反復的に刺激し、特定領域の閾値の上昇が
 起こるものである。
①内因性モルヒネ様物質
・1970年代、脳内にモルヒネと立体特異的に結合する受容体が
 存在すると証明され、さらに脳内モルヒネ様物質も証明された。
・脳内モルヒネ様物質には、エンケファリン、エンドルフィン、
 ダイノルフィンなどがあり、それらは2個以上の
 アミノ酸からなるペプチドである。
②オピオイド受容体(レセプター)
・内因性オピオイド(内因性モルヒネ様物質)や麻薬性鎮痛薬などと
 特異的に結合する受容体をオピオイド受容体と呼ぶ。
・オピオイドレ受容体には3種類あり、エンケファリンはδ受容体、
 βエンドルフィンはμ受容体、ダイノルフィンはκ受容体と
 結合する。
・これらのオピオイド受容体は、脳、脊髄をはじめ、
 消化管などにも存在する。
③オピオイド拮抗物質
・1961年に発見されたナロキソンは、麻薬性作用物質の全てに対して
 拮抗的に作用し、しかも、それ以外の薬理作用はない。
・前もってナロキソンを投与した動物では、モルヒネによる
 鎮痛効果は得られない。
④SPA
・SPAの研究はラットの中脳中心灰白質の電気刺激により
 鎮痛が得られるというものである。
・鍼鎮痛は鍼通電による筋収縮で、鎮痛効果が出現するもので
 両者にはいくつかの類似点がある。
・効果の持続が長い、刺激中止後も効果が持続、ナロキソンによって
 鎮痛効果が起こらないなどがある。
・すなわち、鍼鎮痛は内因性モルヒネ様物質により
 得られるものであるということがいえる。
鍼鎮痛の発現機構
①末梢経路
・ラットの足三里穴と合谷穴に相等する部に、筋収縮を起こす強度で
 1Hzで電気刺激を与えると、徐々に鎮痛が出現し、刺激終了後も
 しばらく持続する。
・この現象はナロキソン投与群では起こらない。
・鍼沈痛に関わる受容器はポリモーダル受容器で、
 神経線維は細径のAδ線維である。
②中枢経路
・経穴部に発生した求心性インパルスは後根を経て脊髄後角に入り、
 反対側の前側索を上行し、中脳中心灰白質背側部を通って
 視床下部に至る。
・視床下部内でインパルスは弓状核中央部を経て弓状核後部に達し、
 個々から脊髄へ下行する下行性痛覚抑制系を作動させる。
・弓状核中央部から上位の情動を支配する大脳辺縁系を経由し、
 弓状核へ戻ってくる経路もある。
・武重は便宜上、経穴部から弓状核中央部までを鍼鎮痛の求心路、
 下行性痛覚抑制系を鍼鎮痛の遠心路といった。
・これらに関与するものには、ドーパミンニューロンや
 下垂体からのβエンドルフィンなどがある。
・求心路の刺激によって起こる鎮痛は発現までに時間がかかること、
 刺激終了後も鎮痛が持続すること、個体差があること、
 ナロキソンにより鎮痛が消失すること、下垂体摘出により
 鎮痛が起こらなくなることなど鍼鎮痛の特徴を有している。
・遠心路を刺激して起こる鎮痛は鍼鎮痛の特徴を有しない。
③下行性痛覚抑制系
・下行性痛覚抑制系は視床下部の弓状核後部から始まり、
 ドーパミンニューロンを介して視床下部腹内側角に至り、
 2つの経路に分かれる。
・縫線核を経て脊髄に下行するセロトニン系と、傍巨大神経細胞核を
 経て脊髄に下行するノルアドレナリン系の下行性抑制系がある。
・両抑制系とも脊髄後索を下行し、脊髄後角で痛覚情報を遮断する。
④鍼鎮痛発現と内因性モルヒネ様物質
・鍼鎮痛発現にはβエンドルフィンニューロンが深く関与している。
・脊髄においては鍼鎮痛の求心路としてメチオニンエンケファリンが
 深く関与している。
⑤鍼鎮痛の有孔性の個体差
・エンケファリン分解酵素の阻害剤であるDフェニルアラニンを
 投与すると鍼鎮痛が有効になることから、鍼鎮痛の発現の個体差は
 脊髄内のメチオニンエンケファリンの分解酵素の活性の違いと
 考えられている。

3)ゲートコントロール説
・1965年、メルザックとウォールにより提唱された学説である。
・脊髄内において、触圧覚を伝える太い神経線維からの入力は
 痛覚を伝える細い神経線維からの入力を調整している。
・太い神経線維からの入力は脊髄後角Ⅱ層の膠様質にあるSG細胞の
 興奮を起こさせ、細い線維からの入力に対しシナプス前性に抑制し
 痛覚からのゲートを閉じるという説である。
・最近の生理学者の実験により、SG細胞の興奮はシナプス前細胞の
 興奮を引き起こし、痛覚の伝達を遮断していることがわかった。

7.刺激と反応
鍼灸施術の治療的作用
①調整作用
・興奮作用、鎮静作用がある。
②誘導作用
・患部誘導作用、健部誘導作用がある。
③鎮痛作用
④防衛作用
・白血球や大食細胞を増加させ、生体の防衛能力を高める。
⑤免疫作用
・免疫機能を高める作用。
⑦消炎作用
・局所の白血球の増加や遊走、血流改善による病的滲出物の
 吸収促進により、生体の防衛能力を高める。
⑧転調作用
・自律神経失調症やアレルギー体質などを改善し、
 体質を強壮にする。
⑨反射作用
・施術により反射機転を介して、組織や臓器の機能を
 鼓舞、抑制する。
特に灸施術の治療的作用
・増血作用、止血作用、強心作用がある。

2.自律神経に及ぼす影響
1)自律神経の概要
(1)自律神経の構成

=================
第11章 関連学説
=================
1。サイバネティックスの学説
後述

2.ホメオスタシス
(1)内部環境の恒常性)
①生体を取り巻く外部の環境を外部環境といい、常に変化しながら生体に種々の刺激を送り続けている
②これに対し細胞を浸している細胞外液(組織液、リンパ液、結晶など)を内部環境という
③細胞外液は細胞に必要な物質を届け、代謝産物を運び出すが、細胞に対し常に一定の環境を与えている
④このように内部環境を一定の状態に保つことを内部環境の恒常性といい、クロードベルナールが提唱した

(2)緊急反応の概略
①キャノンは内部環境が恒常に保たれる機構を恒常性保持機能(ホメオスターシス)と名づけた
②生体が内外の刺激を受けると、内部環境を常に一定の範囲内に保つため、種々のフィードバック機構が働くが、その一つに交感神経アドレナリン系の機構があり、キャノンはこれを緊急反応と名づけた
・ホメオスターシスとは生理的標準状態の保持のことである

(3)恒常性保持機能と理療刺激
①疾病は恒常性保持機能の失調である
②疾病の際、物理的、化学的などの刺激を与え恒常性保持機能を働かせて、その失調を取り戻そうとするのであり、その刺激の一つがあはき刺激である

3.汎適応症候群の学説(ストレス学説)
1)本学説の概要
カナダモントリオール大学のハンスセリエが提唱したもので、種々の刺激が下垂体ー副腎皮質系を介して、内分泌系に特徴的反応を起こすものをいう
(1)ストレスとストレッサー
物理的、化学的など生体に対するあらゆる刺激をストレッサーといい、ストレッサーが作り出す生体のゆがみ、ひずみの状態をストレスという

(2)三つの様相(重要)
ストレスを受けた生体は、以下の三つの様相を示す
・副腎皮質の肥大
・胸腺、リンパ系の萎縮
・胃十二指腸の潰瘍
すなわち、副腎皮質の肥大が生体の防御機構に重要なことが伺える

(3)三つの時期と症候群(重要)
ストレスを受けた生体は三つの時期に分類でき、一定の順序に沿った反応を示す
①第1期:警告反応期
a.ショック相
生体がストレッサーに直面した直後で、生体は何の準備もできていない時期
刺激に対する抵抗性の低下、神経系の抑制、体温、血圧の低下、毛細血管透過性亢進、筋緊張の低下、などの反応を示す
この時期は数分から一日ぐらいである
b.反ショック相(交絡抵抗期)
ショック状態に対し、積極的な防衛反応をていしてくる時期
下垂体前葉よりACTHの分泌
→副腎皮質の肥大
→副腎皮質ホルモンの分泌増加
☆特に糖質コルチコイド
→ショック状態から正常な状態の方向へ戻ろうとし始める時期
この時期はストレッサーとなった刺激以外の 刺激に対する抵抗力も高まっている時期

②第2期:抵抗期(交絡感作期)
☆感作:一度経験することにより学習して何らかの判断ができるようになる
副腎皮質は肥大したままで、副腎皮質ホルモンの分泌はさらにさかんとなっていて、ショック反応は消え、反ショック相より安定した状態にある
この時期は、最初に加えられたストレッサーに対する抵抗力は強いが、他のストレッサーに対する抵抗力は弱まっている時期
この時期を交絡感作という

③第3期:疲憊期
・ストレッサーが長く続いたり、強さが強すぎたりするとストレスに対し、反応する能力が低下し適応反応を維持しきれなくなり、抵抗力を失ってショック相と似た状況になってしまう
・この反応の終局は死である

(4)ストレス反応の機構
生体に刺激が加わると、まず緊急反応が起こり、続いて汎適応症候群の状態に移行していく
刺激が生体に加わると自律神経中枢により、交感神経アドレナリン系が賦活し、ついで下垂体前葉ー副腎皮質系が作動する
その時に糖質コルチコイドの働きにより、汎適応症候群の状態が作り出される

(5)適応病
適応病とは刺激に対し、汎適応症候群の状態を作り出す途中に問題が起こり、うまく行かなかったために生じる疾病をいう
適応病には、下垂体前葉や副腎皮質の疾病である一時的なものと、それに引き続く二次的なものとがある
・一次的なもの
クッシング病、シモンズ病、アジソン病など
・二次的なもの
高血圧症、一部の腎臓病、関節リウマチ、胃十二指腸潰瘍、、心臓病、体質的な慢性疾患、マネージャー病、夜勤病など
☆夜勤病:看護師やCAなど

2)本学説の東洋医学との関連
・西洋医学は解剖、生理、病理学的に分析することにすぐれ、東洋医学は機能上現れる症状を総合的に把握することに優れている
疾病とは刺激に対する異常な生体反応である

(1)適応病を起こす3つの条件
①ストレス刺激の強さと、これを受ける期間の長短
②刺激を受ける生体の適応エネルギー
…生命力
③条件づけ因子
…後天的に鍛えられた体力、生活環境、食事など

(2)適応病の条件と東洋医学との関連
①ストレッサーは内因、外因、不内外因の病因のこと
②適応力は先天の原気
③条件づけ因子は後天の原気である

3)本学説とあはき施術
①刺激を与え治療する方法を刺激療法とか変調療法と呼び、抵抗力をこぶし、治癒機転を促進する療法である
②変調療法は人体の防御作用を高め、生体の抵抗力を促進するために下垂体ー副腎皮質系、自律神経系の反応を利用する
③鍼の機械的刺激と、灸の温熱的刺激、あマ指の触圧刺激は、人為的なストレッサーを量的質的に調整しながら加えると考えられる
④田多井吉之介は刺激療法の効果は交絡抵抗によるものが大部分であると述べ、積極的に防衛反応を起こさせると述べている
⑤芹澤勝助は、鍼は交絡抵抗を人為的に作り出し、灸は交絡感作を利用すると述べている
☆交絡抵抗:全般的な抵抗力
交絡感作:特定の疾病に対する抵抗力

4.サイバネティックスの学説
■1)本学説の概要
①アメリカのノーバート・ウィナーにより、提唱された学説で、通信連絡と自動制御に関する理論と技術の研究である
②サイバネティックスの語源はギリシャ語で舵取りという意味である
■2)サイバネティックスとフィードバック
機械の働きは印刷機を例にとって説明すると、同じ印刷物を能率的に作り出すことには優れているが、出来上がり画鮮明であるか印刷もレがないかということは機械の外のことであり、このようなことを開回路という
ウィナーは人間を取り巻く状態について、二つの変量に分けている。一つは制御できない変量であり、もう一つは我々が制御できる変量である。我々は前者からできるだけ多くの情報を得、後者は前者適合するように制御することになる
例えば船にとって風向きや腸瘤などは制御できない変量であり、それに合わせて舵をとることは制御できる変量である
人間は意識的無意識的にフィードバックし、調節する機構がある
これを閉回路という

■3)フィードバック機構
①生体内のフィードバック機構はブラックボックスであるが、次元の異なる制御機構が多層的に存在し、恒常性を保っているのである
②生体内の自動通信と自動制御の方法は神経系統を通じて行われるものと、体液系統を通じて行われるものとに大別できるが、自律神経の中枢である視床下部は、下垂体に豊富な神経線維を送っており、自律神経性調節と
体液性調節が深く関連しアって恒常性を保っているのである
③神経系を通じて行われる調節機構
知覚神経、運動神経、自律神経を通じ、信号が伝えられ、その結果、骨格筋、平滑筋、腺などの効果器に反応を起こさせるが、これらはすべて閉回路である
④体液系を通じて行われる調節機構
神経性の調節は指向性があるが体液性の調節は、非指向性で行われる
⑤神経性、体液性の調整機構は、正のフィードバック、負のフィードバックにより成り立っている

■4)本学説とあはき施術
①あはき施術は疾病のため、異常な状態にある生体の機構に働きかけ、ゆがんだ平衡状態を調整しようとするものである
②あはきは微細な刺激により、フィードバックの賦活を重要な目標とする治療法である
③間中喜雄も鍼のような少量の刺激が著名な臨床効果を表すのはその刺激自身のエネルギーによる作用と考えるのでなく、フィードバックに対し干渉するためと述べている

■5)圧自律神経反射(圧発汗反射の学説
(1)本学説の概要
・圧発汗反射は高木健太郎による、皮膚圧半側発汗現象の研究によるものである
・中等度の発汗状態で側臥位になると、上側(非圧迫側)の発汗は増加し、下側(圧迫側)の発汗は減少する
・実験は立位で腋窩点(腋窩線上で乳頭の高さ)を片側だけ圧迫すると、非圧迫側の発汗が増加した
・両側の腋窩点を同時に圧迫すると、下半身の発汗が増加し、両側の殿部側点(大転子上部)を同時に圧迫すると、上半身の発汗が増加した
・この反応は交感神経系の反射(体性-自律神経反射の一つ)であり、圧迫側の交感神経抑制と非圧迫側の興奮によるものである
・圧自律神経反応
項目 圧迫側 非圧迫側
・発汗 減少 増加
・腋窩温 低下 上昇
・血圧 下降 上昇
・鼻粘膜毛細血管 拡張 収縮

(2)本学説とあはき施術との関係
①あん摩マッサージ指圧が反対側や離れたところの症状に効果を示すことが説明できる
②鍼では巨刺すなわち「病右にあれば左にとり、左にあれば右にとる」との原理を説明できる

■6)過常刺激症候群(レイリー現象)
(1)本学説の概要
・フランス侵襲論学派のレイリーにより提唱された
侵襲論学派とは、生体反応の主役は交感神経が受け持つという思想に立つものである
・レイリー現象とは、自律神経に直接局所的に加えられる、強い各種刺激が、特殊な性質の反射により特に血管運動性の障害を起こし、次いで二次的に種々の程度の障害を生ずるというものである
・自律神経を侵襲する刺激は、どんな刺激でも同様の効果があるが、一般に生理学的実験などで用いられる刺激に比べ、強くしかも持続的なものである
・このように自律神経を侵襲する刺激が何であっても、非特異的で同一方式の障害が起こるが、諸種の疾患により相違した反応の外関をていする理由は、侵襲を受けた自律神経の解剖学的局所、強度、持続の差によるものと考えた
・レイリー現象、緊急反応、ストレス学説はいずれも非特異的症候群に関するものである
生体内外からの各種刺激に対し、レイリーは自律神経が第一義的役割を演じ、内分泌系が第二義的役割を受け持つとした
すなわち、まず交感神経がすばやく反応し、ついで下垂体(前葉)・副腎皮質系などの内分泌系に反応が移行し、持久体制が整えられるという

(2)レイリー現象の4大特性
①血管運動性の障害
交感神経系に加えられた刺激は、主として血管運動性の障害を起こし、二次的に栄養している臓器、あるいは遠隔臓器に障害を生ずる
②加えられた刺激は非特異的である
過剰刺激であれば、何でも良い
③その結果の病変は非恒常性である
生体の感受性、反応形式により、異なった反応が起こる
④障害の拡散、結果的に起こる反応は、刺激を受けた部位と相関がなく、思いがけないところに障害が現れる





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