近年のパソコンや携帯電話の普及によりたくさんの人が頚肩コリや腰痛に苦しみ、冷暖房や運動不足で足がむくむ…など、マッサージを求める方が増えてきています。
お爺ちゃんやお婆ちゃんはマッサージのことを「あん摩」と呼び、お兄ちゃんやお姉ちゃんは普通に「マッサージ」と呼び、押せば命の泉湧く…は「指圧」と呼んでます。
ここではあまり知られていないマッサージ業界について、簡単に説明させて頂きます。
あん摩・マッサージ・指圧の違い
▼詳細を開くあん摩 | マッサージ | 指圧 | |
発祥 | インド | ヨーロッパ | 日本 |
揉み方1 | 衣服の上から | 地肌に直接 | 衣服の上から |
揉み方2 | 揉む | さする・なでる | 押す |
揉み方3 | 心臓付近から 手先・足先へ |
手先・足先から 心臓付近へ |
心臓付近から 手先・足先へ |
考え方 | 健康な血液を 全身へ送る |
悪い血液やリンパ液を 心臓へ戻す |
健康な血液を 全身へ送る |
※書籍、文献によって意見・考え方が異なることもあります。
現在のあん摩・マッサージ・指圧の使い分け
▼詳細を開く「あん摩」という言葉には視覚障碍者を差別するものであるという考え方もあるようで、最近ではほとんど使われなくなりました。
あん摩(按摩)には「手で摩ることにより安らぎを与える」という字義があり、私としては好きな言葉なんですけど…。
国家資格について
▼詳細を開くその国家資格を取得するには、厚生労働省の認可を受けた学校(専門学校等)に3年間就学し、その卒業が国家試験の受験資格となり、さらに国家試験に合格すれば、国家資格が発行されます。
就学中には、西洋医学として、解剖学、生理学、病理学、臨床医学、リハビリテーション医学、心理学、衛生学、公衆衛生学、関係法規、理療理念、社会福祉を学び、東洋医学として、経絡経穴、東洋医学概論、東洋医学臨床論、中医学を学び、さらに、あん摩理論、マッサージ理論、指圧理論、はり理論、きゅう理論、物理療法を学びます。
アタマがパンクするかと思うぐらい勉強しましたねぇ。
技術面では、基礎技術として、あん摩、あん腹、乳房マッサージ、パウダーマッサージ、オイルマッサージ、アロママッサージ、リンパマッサージ、指圧、リハビリテーション、物理療法、はり、きゅうを習得し、2年生と3年生では学校で患者様を受け付けて、あん摩マッサージ指圧の臨床実習、はりきゅうの臨床実習を繰り返し、種々の症状や疾患と向き合います。
早かったような…、長かったような…。
そして専門学校等の卒業と同時に国家試験を受験し、合格すると『あん摩マッサージ指圧師』という国家資格が与えられます。
鍼(はり)や灸(きゅう)については、よく「鍼灸師」というふうにいわれますが、それぞれ『はり師』『きゅう師』という国家資格があります。
※各専門学校によって、カリキュラムが異なる場合があります。
※上記のカリキュラムは私が通った学校の話です。
マッサージに国家資格があるの?
▼詳細を開く国家資格を取得せずにマッサージ行為をすると、医師法、あん摩マッサージ指圧師及びはり師きゅう師等に関する法律(略称:あはき法)で罰せられます。
街中を見回すと、リラクゼーション、リフレ、ボディケア、ボディトリートメント、揉みほぐし、整体、カイロプラクティックなどという名称を使い、あらゆるところでマッサージ行為が行われておりますが、そのほとんどは国家資格を持たない人たちです。
人体に触れるという事は危険も多いため、一定の知識や技術が必要であるからこそ、厚生労働省が管轄する国家資格があるのですが、マッサージ行為をしている人のほとんどは国家資格を持っていないという現実があります。
病気や怪我の名前はおろか、骨や筋肉の名前すら知らず、数週間の研修を受けただけの人たちがマッサージを行っている現状は、同じ業界に身を置く私たちも問題と感じております。
また、人体のことを何も知らずにマッサージをするなんて、私どもは怖くてできません。
理美容業界や飲食業界、飛行機や電車、バスやタクシーなどの旅客機業界?は必ず免許を持っているとは思いますが、マッサージ業界は、「営業している」というだけでは、「ちゃんと資格を持っている」という訳ではありませんので、マッサージをしてもらうお店を探す時には十分にご注意ください。
国家資格・民間資格(認定証)の業務分類
▼詳細を開く国が認める国家資格、民間団体が認める民間資格、会社独自が認める認定証など、庶民を惑わす資格がたくさんありますので、簡単な分類と業務範囲を説明させて頂きます。
あん摩マッサージ指圧師(厚生労働省が認める国家資格)
主に、術者が患者に対して体重をかけて「揉む」「押す」「摩る」「叩く」などの行為全般を行うための資格です。
はり師・きゅう師(厚生労働省が認める国家資格)
それぞれ、「鍼(はり)」や「灸(きゅう)」を用いた行為を行うための資格です。
柔道整復師(厚生労働省が認める国家資格)
整骨院の院長が取得しているもので、「骨折」「脱臼」「捻挫」「打撲」「挫傷(肉離れ)に対して、整復・固定を行うための資格です。
整体・カイロプラクティック(民間資格・認定証)
整体やカイロプラクティックとは「骨格の矯正」を行うもので、あん摩マッサージ指圧の業務とは異なるとされておりますが、日本では法制化されておりませんので、誰でもすぐにでも名乗ることができ、実際に業務を行うこともできます。
また、民間で団体を作り、民間資格や認定証などを発行していることもありますが、その基準は不明瞭で、4万円の通信教育で取得できるものまであります。
カイロプラクティックに関してはアメリカなどの諸外国では法制化された国家資格として存在しており、渡米してカイロプラクティックを学んだ方もおられるようです。
その他の民間資格・認定証
○○式マッサージやアロマオイルマッサージなども民間団体が民間資格を発行しておりますが、法的には、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得していないとその業務を行うことはできないのですが、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得していない人にも民間資格は発行されています。
また、ボディケアやリフレ、揉みほぐしなど、自社が独自に研修を行って会社独自の認定証などを発行していることもあります。
各国家資格の健康保険の適応傷病
▼詳細を開くマッサージも鍼灸も健康保険が適応される傷病はありますので、各国家資格に認められている健康保険が適応される傷病を説明させて頂きます。
あん摩マッサージ指圧師
筋麻痺(筋肉が動かない)、関節拘縮(関節が動かない)などの症状がある場合、医師の指示があればマッサージ料金は健康保険の適応となります。
はり師・きゅう師
神経痛、リウマチ、五十肩、頚腕症候群(肩こり)、腰痛症、頸椎捻挫後遺症(むちうち後遺症)、その他、慢性的に痛みがある傷病は、医師の指示があれば鍼灸料金は健康保険の適応となります。
柔道整復師(整骨院の資格)
原因が明らかな急性・亜急性の新鮮外傷の治療のみ、健康保険の適応となります。
捻挫、打撲、挫傷(肉離れ)に対する治療は柔道整復師の判断で健康保険の適応となります。
骨折と脱臼は応急処置のみ柔道整復師の判断で治療が行うことができ、健康保険の適応となりますが、継続した治療に関しては医師の指示が無ければ健康保険が適応となりません。
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師(整骨院)に与えられている健康保険が適応となる傷病は、上記のようになっています。
簡単にいうと、マッサージは「筋肉や関節が動かない人」、鍼灸は「長い間、痛みがある人」、柔道整復師(整骨院)は「最近、怪我した人」という風に、完全に業務が分担されています。
マッサージや鍼灸は健康保険は使えないというのは間違いで、健康保険を使うには病院でお医者さんに書類を書いてもらわないとダメというのが正解です。
整骨院は肩こりでも保健が使えるけど15分ほどしか揉んでもらえないというのも間違いで、肩こりなどの症状には健康保険が使えないというのが正解です。
でも整骨院に行ったとき、捻挫とか打撲はしていないし、肩こりって言っただけでも健康保険が使えていますよね。
それはなぜかといいますと、不正請求をしているからです。
肩こりや慢性的な腰痛、加齢による膝の痛み、五十肩などで整骨院に行っても健康保険が使えているのは、捻挫や打撲をしていることにして健康保険を使っているからなんです。
何カ月も何年も整骨院に通っておられる方もおられますが、柔道整復師(整骨院)は新しい怪我(捻挫や打撲)しか健康保険は適応となりませんので、毎月毎月、新しい所を捻挫や打撲していることにしないと、何カ月、何年にも渡って健康保険を使うことはできないんです。
整骨院が勝手にしていることだから知らない…、整骨院が不正請求で捕まっても関係ない…と思われる方も多いかと思いますが、そういうわけにもいかないんです。
月初めに用紙に「署名」か「捺印」しておられるかと思いますが、あの用紙は何の用紙かご存知ですか?
「私(患者)はここに書かれている怪我を受傷し、○○日間の通院で治療を受けました。間違いありません。」という用紙であり、その用紙の確認欄にご自身の署名か捺印がされています。
月初めには白紙だった用紙が付き終わりにはそういう用紙に変身しているんです。
整骨院の不正請求は、整骨院と患者の共同作業で成り立っていますので、ご自身にも責任を問われる可能性があります。
白紙の用紙にサインしないとダメと言われた場合には、治療費とは別に郵便代を支払い、完成した書類のコピーを郵送してもらうようにしてください。
もちろん、マッサージや鍼灸で健康保険を使用した場合も同じです。
高齢者のご自宅まで訪問してマッサージや鍼灸治療を行うサービスでも、このような不正請求は後を絶ちません。
このページの前半で「マッサージをしている人のほとんどは無資格」という説明をしましたが、そんな人たちよりも「健康保険詐欺」を行なっている国家資格取得者の方が大変な在任です。
悪い施術者に騙されないで欲しい、ご自身の身をしっかりと守って欲しい、そういった啓蒙活動を行うことくらいしか私にはできませんが、健康保険は国民全員の血税で成り立っておりますので、犯罪に加担するようなことはなさりませんよう、一国民としてお願い致します。