シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ノート・テスト科目一覧

東洋医学臨床論ノート07「鼻汁・鼻閉」

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク
★コスパ最強の美容メニュー導入に最適!
家庭用高性能フラッシュ式脱毛器【ケノン】
これ1台で脱毛メニュー+美顔メニューに対応。
購入特典はケノン公式HPがイチバンお得♪

■1)現代医学的な考え方
1)注意を要するもの
(1)症状
① 片側の鼻閉で血液の混じった鼻漏が持続。または鼻出血・悪臭鼻漏・頬部痛・上歯痛を伴う
悪性腫瘍など。
→顎下リンパ節の腫脹を伴いやすい。
② 小児期から思春期にかけて鼻閉を自覚、または閉塞感が増して持続する
鼻中隔彎曲症など

2)適応となるもの
① 鼻過敏症(アレルギー性鼻炎・血管運動性鼻炎)によるもの
② 程度により鼻炎・副鼻腔炎によるもの
A)鼻過敏症
(1)病態
アレルギー反応や自律神経機能異常により誘発される。
(2)症状
① 主要症状はくしゃみ発作・多量の水溶性鼻汁・鼻閉塞。
② 症状に時間的特徴がある。(鼻内掻痒感→くしゃみ発作→鼻汁・鼻閉)
③ アレルギー疾患(アレルギー性結膜炎・気管支喘息・アトピー性皮膚炎など)の合併または既往がある場合もある。
(3)治療方針
① 自律神経機能を調整し、恒常性保持機能の向上を図る。
② 鼻の各症状を改善する。
(4)〔治療法
①マッサージ
・ 後頚部・肩背部・前胸部に一般的施術を行う。
・ 前頭部正中線上に軽く指頭圧迫を施す。
・ 上位胸椎両側への圧迫も効果的である。
②鍼灸
・鼻部の経穴や後頸部の反応部に刺鍼する。
・迎香、印堂、攅竹、風池、天柱、星状神経節刺鍼など

■2)東洋医学的な考え方
東洋医学では鼻閉・鼻汁・嗅覚減退を主要症状とするものを「鼻淵」と称している。なお、『内経』には「脳滲」・「脳漏」の記載がある。
1)分類
① 肝胆の鬱熱による鼻淵
平素からの辛いものの偏食や飲酒の習慣は湿熱が体内にこもりやすい。また、情志失調により肝胆の疏泄機能が失調すると気が鬱し化熱する。これが肝胆の鬱熱となり脳を犯し、脳汁が漏れると鼻淵が起こる。
② 脾胃の湿熱による鼻淵
 平素から甘いものや油っこいものの偏食は、体内に湿熱がこもり脾胃に影響する。このために脾の運化機能が悪くなり、清気が昇らず濁陰が降りなくなって、陽明経脈にそって鼻に影響すると鼻淵が起こる。
③ 肺気虚による鼻淵
 肺気虚のために衛外機能が低下すると感冒にかかりやすい。また、肺気の不足のため治節機能も悪くなり、邪毒が停滞しやすくなり、それが鼻に影響すると鼻淵が起こる。
④ 脾気虚による鼻淵 
飲食不節や過労、思慮過度などにより脾胃を損傷し、気血の生成が不足すると、鼻が気血の栄養を充分に受けられなくなる。また清陽が頭顔面部に昇らなくなり、邪毒が停滞して鼻淵が起こる。

2)鑑別
① 肝胆の鬱熱による鼻淵
頭痛、または片頭痛、めまい、耳鳴り、難聴などの症状を伴いやすい。
② 脾胃の湿熱による鼻淵
腹部膨満感、食欲不振、身体の重だるさなどの脾と関係のある症状を伴いやすい。
★①②は、ともに実証である。
③ 肺気虚による鼻淵
衛外機能の低下と気虚による症状を伴いやすい。
④ 脾気虚による鼻淵
脾と関係のある症状と気虚の症状を伴いやすい。
★③④は虚証なので、脈象は弱を呈する。
☆①③の病証については教科書を参照。

3)参考症例
脾胃の湿熱による鼻淵 (実証)
(1)病態
甘味・油っこいものの偏食→体内に湿熱→脾胃に影響→脾の運化機能の低下→清気が昇らず、濁陰が降りなくなり、湿熱が陽明経に沿って鼻に影響する。
(2)主要症状
鼻汁は黄色で濁って粘く量が多い・臭いがする。鼻閉、嗅覚減退
(3)随伴症状
腹部の膨満感、食欲不振、身体倦怠感
(4)舌脈所見
舌質紅、舌苔黄、数脈
(5)治療方針
湿邪を除き、清熱を図る。
(6)治療法
上星、印堂、迎香、合谷、脾兪、足三里、豊隆、中
(7)取穴理由
・脾兪・足三里・豊隆・中で脾胃の機能を促進させ湿熱  の除去をはかる。
・上星は諸陽の会である督脈のツボで、ここに刺鍼し清熱を図る。
・印堂は鼻閉を改善し、邪熱を除く。
・迎香は鼻炎治療の局所特効穴であり、陽明の経気の疎通を図る。
・合谷は頭部・顔面部の諸竅の邪熱を除く。

◎第19節 肩こり
■1)現代医学的な考え方
A)注意を要するもの
 緊急の処置を要する器質的疾患の存在が疑われるもの、例えば、胸痛と左上肢に放散痛がある場合 … 狭心症

B)適応となるもの
① 日常的な身体的・心理的疲労に起因する肩こり。
② 頸椎症、いわゆる不定愁訴に伴うもの
③ 内科疾患、耳鼻科・眼科・歯科疾患に伴うものでも、原因疾患が軽症のもの。

1)日常的な身体的、心理的疲労に起因する肩こり
(1)病態
過剰使用による筋疲労、精神的緊張、自律神経の影響など機序は複雑である。
(2)症状
頸肩部や肩甲間部に強ばった不快感を感じるものから、痛みにいたる症状を訴える。強くなると頭痛・顔面痛・上肢痛などを生じる。
(3)所見
愁訴部の圧痛や筋硬結以外に特徴的な所見はない。
(4)施術対象となる筋肉
僧帽筋、胸鎖乳突筋、菱形筋、肩甲挙筋、板状筋、棘上筋、棘下筋、斜角筋など
(5)治療方針
頸肩部、肩甲間部の圧痛・硬結を目標に施術すると共に、精神的安定や自律神経機能の調整を図る。
(6)治療法
①マッサージ
・ 頸肩部・肩甲部・肩甲間部の硬結・圧痛・筋緊張部位(天柱・風池・肩井・肩中兪・肩外兪・天宗)に対して軽擦・揉捏・圧迫法を施す。
・上肢の筋疲労の回復と循環促進を図るため、上肢にも施術する。
・頸部へのストレッチもよい。
・ 併用療法として、施術前に頸肩背部に対して、温熱・水治・電気療法を加えると効果的である。
・施術後は運動療法として、肩部の上下運動、頸部の前屈・後屈・側屈・回旋運動、肩関節の自・他動運動を行う。

②鍼灸
・ 頸肩部・肩甲間部の圧痛や硬結部。
・ 天柱、風池、肩井、膏肓、身柱など

■2)東洋医学的な考え方
1)分類
① 風寒の邪による肩こり
風寒の邪が太陽、陽明経に侵襲し、そのために営衛の運行が悪くなり、頸肩部の経脈が拘急すると肩こりが起こる。
② 肝陽の亢進による肩こり
陰虚のために肝陽が亢進し、頭頸部に上衝すると肩こりが起こる。
③ 肝血の不足による肩こり
病後、産後により血虚となり、そのために頸肩部の経絡がうまく栄養されず、拘急すると肩こりが起こる。
④ 寒飲による肩こり
平素から胸膈部に寒飲が停滞していて、そのために胸部の陽気がうまく動かないと背部に重圧感や拘急が起こり、頸項部にも波及する。
⑤ 気滞血による肩こり
情志の失調などにより肝の疏泄 機能が悪くなり、そのために肩部の血行が悪くなると肩こりが起こる。また長時間の不良姿勢や外傷などにより肩 部局所に気滞血が生じて起こるものもある。

2)鑑別
① 風寒の邪によるもの…風寒の邪による悪寒などの表証を伴う。
② 肝陽の亢進によるもの…陰虚がベースとなるもので、肝陽の亢進による高血圧、めまい、口苦、目の充血、顔のほて りなどの症状を伴う。
③ 肝血虚によるもの…眼精疲労や目の乾き、めまい、心悸などの血虚による症状を伴う。
④ 寒飲によるもの…胸悶、喘息、めまい、軽度の浮腫などの症状を伴う。
⑤ 気滞血によるもの…気滞による胸脇苦満・疼痛、よく溜め息をつく、気滞血による月経不順などの症状を伴い、情緒の変化や月経前後に増強するものもある。

※③は虚証、②は虚実挟雑証で、その他は全て実証

*②、⑤は教科書に症例があるので参考にすること。

3)参考症例
・風寒の邪による肩こり
・病態
風寒の邪が太陽・陽明経を侵襲→栄衛の運行が悪くなる→頸肩部の経脈が拘急
・主要症状
肩こり
・随伴症状
悪寒、頭痛、関節痛、温めると軽減
・舌脈所見
舌苔薄白、浮脈・緊脈 
・治療方針
風寒の邪を除去し、栄衛の運行を改善する。
・治療法
大椎、至陽、天柱、列缺、後谿、合谷、風池、
 頸・胸部の夾脊穴
・取穴理由
大椎、至陽は督脈の通りをよくし陽気をめぐら せ、気血の運行を促進させる。天柱で膀胱経の経気を改善 させて頭項痛を鎮静する。列缺、後谿は頸項部の疾患の要 穴である。合谷・風池で太陽経・陽明経の風寒の邪を除く。 頸・胸部の夾脊穴は局所取穴である。

◎第20節 頸肩腕痛
A)注意を要するもの
① 発熱などの全身症状を伴うもの … 結核等炎症性疾患
② 腫瘍の既往、自発痛、夜間痛を強く訴える … 悪性腫瘍
③ 障害レベルより下位に中枢を持つ深部反射の亢進、病的反射の出現、または膀胱直腸障害を持つもの … 後縦靭帯骨化症、頸椎症や頸椎椎間板ヘルニアによる脊髄症
④ 原因によらず筋萎縮・麻痺症状が強いもの

(1)参考
・頸椎症について
頸椎症とは、加齢的退行性変化が頸椎支持機構に生じた慢性かつ進行性の変性疾患で、主として椎間板、椎間関節、ルシュカ関節、椎体縁などの変化と、それに伴う神経・血管障害をしばしば合併する疾患である。
髄核や骨棘が脊髄を圧迫すれば脊髄症が、神経根を圧迫すれば神経根症が発現する。

B)適応となるもの
① 頸椎症性神経根症
② 胸郭出口症候群、その他絞扼性神経障害(上肢痛の項参照)

1)頸椎症性神経根症
(1)病態
頸椎周辺の退行性変性による神経根への機械的刺激、循環障害→上肢の痛み
(2)症状
頸肩に強いこり・痛み・手指のシビレ感、筋力低下、 障害レベルに一致した上肢デルマトームへの放散痛
(3)所見
神経に沿った圧痛所見、根刺激誘発テスト陽性、上肢深部反射減弱、知覚異常など
(4)神経根障害にみられる神経学的所見の特徴
① C5神経根障害(障害レベル C4/5間)
 筋力:三角筋、上腕二頭筋の筋力低下
 反射:上腕二頭筋反射減弱
 知覚:上腕外側の鈍麻
②C6神経根障害(障害レベル C5/6間)
 筋力:上腕二頭筋などの筋力低下
 反射:上腕二頭筋反射・腕橈骨筋反射減弱
 知覚:前腕外側、母指、示指の鈍麻
③C7神経根障害(障害レベル C6/7間)
 筋力:上腕三頭筋などの筋力低下
 反射:上腕三頭筋反射減弱
 知覚:中指の鈍麻
④C8神経根障害(障害レベル C7/Th1間)
 筋力:指の屈筋群、手内筋の筋力低下
 知覚:前腕内側、薬指、小指の鈍麻
(5)治療方針
障害のある神経根周囲の血流改善、炎症の消退、神経根機能の回復を図る。
(6)治療法
①マッサージ
・頸肩背部の圧痛・硬結・筋緊張部位(風池・肩井・天鼎・肩貞など)に対して軽擦・揉捏・圧迫・叩打法を施す。
・上肢の反応点(曲池・手三里・合谷・四涜・少海・神門等)に一般施術を行う。
・併用療法として、施術前に温熱・水治・電気療法を加え、更に施術後は頭頸部、肩背部、上肢に自・他動運動を粗暴にならないよう注意しながら行うと効果的である。
・施術時の患者の姿勢は、側臥位か坐位が適切である。
伏臥位では施術がしにくいだけでなく頸椎の後屈(伸展)が強制されるため注意を要する

②鍼灸
風池、大椎、天鼎、肩貞、曲池など

2)参考
・頸肩腕痛の原因、関連する徒手検査法など
(1)原因
① 頸髄の病変 … 頸髄腫瘍、頸髄空洞症など
② 頸椎・軟骨・靱帯のいわゆる脊柱部の病変 … 変形性頸椎症、頸椎椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、頸椎カリエス、鞭打ち損傷等
③ 胸郭出口の病変 … 頸肋症候群、斜角筋症候群、肋鎖症候群、過外転症候群(小胸筋症候群)など
④ 末梢神経の病変 … 肘部管症候群、尺骨神経管症候群、手根管症候群等

(2)徒手検査(~テストは~Tと略す)
① 変形性頸椎症、頸椎椎間板ヘルニア:スパーリングT、ジャクソンT、肩押し下げT、イートンT、頸椎叩打法
② 斜角筋・頸肋症候群:アレンT、アドソンT、モーレイT、 ハルステッドT
③ 肋鎖症候群:エデンT
④ 過外転症候群の検査法:ライトT

(3)深部反射の中枢
上腕二頭筋反射 … C5.6
上腕三頭筋反射 … C7中心
腕橈骨筋反射 … C6中心
膝蓋腱反射 … L2-4
アキレス腱反射 … S1.2

(4)病的反射
 上肢 … ホフマン、トレムナー、ワルテンベルグ
 下肢 … バビンスキー、チャドックなど

◎第21節 上肢痛
■1)注意を要するもの
①前胸部痛、胸内苦悶を伴うもの
狭心症など
②麻痺症状が強いもの
重度の末梢神経障害
③症状が頑固なもの

■2)適応となるもの
①胸郭出口症候群
②上肢絞扼性神経障害
 (注) ①と②はエントラップメント症候群にあたる。
③テニス肘(スポーツ障害の項参照)
④腱炎、腱鞘炎

1)胸郭出口症候群
(1)病態
胸郭出口部の組織肥厚・筋スパズム・異常形成による血管神経束の圧迫
①斜角筋症候群
斜角筋三角部
②肋鎖症候群
肋鎖間隙部
③過外転症候群
鎖骨下筋か小胸筋と胸郭との間隙部
(2)症状
上肢の疼痛・冷感・シビレ感・脱力感
(3)治療方針
神経血管束が絞扼されている部位の筋緊張の緩解、頸肩部の筋のスパズムの緩解
(4)治療法
①マッサージ
頸肩腕痛同様の施術をする
前頸部・側頸部は神経・血管束 があるため、変調を起こしやすいので注意を要する。
②鍼灸
天鼎、屋翳、中府、天柱、肩井など

2)上肢絞扼性神経障害
(1)病態
上肢の神経が走行中に圧迫される。
(2)病型分類
①手根管症候群
正中神経
②肘部管症候群
尺骨神経
③ギオン管症候群
尺骨神経
(注)ギオン管:豆状骨と有鈎骨とその上に張る靱帯でつくられたトンネル。
④円回内筋症候群
正中神経
(3)症状
神経支配領域の痛み・シビレ感
(4)所見
絞扼部位の圧痛、支配領域の手指の知覚鈍麻
(5)治療方針
絞扼部位の疼痛の緩解
(6)治療法
絞扼部位を中心に施術する。

3)神経痛と疼痛部位
・橈骨神経痛
上腕の後外側部、前腕の後外側部、手背の橈側半分
・尺骨神経痛
上腕の後内側部、前腕の前内側部、手掌と手背の尺側半分
・正中神経痛
上腕の前内側部、前腕の前側部、手掌の橈側半分

4) 圧痛点
・橈骨神経痛の圧痛点
大腸経の経路
橈骨神経溝上点(消)、橈骨神経溝下点(五里)、橈骨頭点(曲池)、母指球背点(合谷)
・尺骨神経痛の圧痛点
心経、一部小腸経
尺骨神経溝点(小海)、豆状骨点(神門)、豆状骨上方点(霊道・通里・陰の三穴)
・正中神経痛の圧痛点
心包経
前腕前側中央点(門)、手関節掌側中央点(大稜)、手関節掌側上方点(内関)

◎第22節 肩関節痛
■1)注意を要するもの
① 全身発熱、局所熱感・腫脹、自発痛を伴う
化膿性関節炎
② 明白な外傷が誘因で、自発痛に伴い骨の転位、関節の輪郭の異常を伴うもの
骨折、脱臼
③ドロップアームテスト陽性のもの
腱板断裂

■2)適応となるもの
①腱板炎、肩峰下滑液包炎
②上腕二頭筋長頭腱炎
③いわゆる五十肩

1)いわゆる五十肩
(1)病態
加齢による退行性病変が肩関節の一部の組織に限局することなく、周囲軟部組織に広汎に及んでくるいくつかの病態を総称する臨床的な症候名である
臨床的には炎症と痛みの強い急性期と、拘縮が現れる慢性期に分けられる。
(2)症状
肩関節の疼痛・運動制限、慢性期には外旋障害など の拘縮症状があらわれる。
(3)治療方針
 急性期:障害組織の消炎・鎮痛
 慢性期:消炎鎮痛を図ると共に拘縮の進行防止のための血行改善
(4)治療法
①マッサージ
・肩関節周囲の諸筋や肩関節を通過する腱(棘上筋腱・上腕二頭筋腱など)に現れる疼痛・圧痛・硬結・筋緊張などの反応点(肩・巨骨・肩・臂臑・肩貞など)を中心に  軽擦・揉捏法・圧迫・叩打法を施す。
・上肢から頸肩背部の広範囲に施術する。
・併用療法として、施術前に温熱・水治・電気療法を加え、施術後に運動療法を施すと効果的である。
・運動療法としてコッドマンまたはアイロン体操、棒体操、壁上行運動などがある。

②鍼灸
肩、肩、巨骨、肩貞、臂臑

2)経穴と筋
肩貞(三角筋・小円筋)
臑兪(三角筋・棘下筋)
天府(上腕二頭筋)
侠白(上腕二頭筋)
曲垣(棘上筋)
秉風(棘上筋)
雲門(大胸筋)

3)備考
(1)天津中医学院では・・・
・急性期:椅子に腰掛けさせたまま患側の条口から承山に 向けて透刺し、肩関節の運動療法を行っていた(条山)。
・慢性期:必ず外関穴を取穴する他、七星鍼(台)といって肩貞、臑兪、秉風、天宗、曲垣、肩外兪、肩中兪の7穴に、約20分間置鍼していた。また、肩内陵・肩外陵も常用。
(2)木下の3点治療
木下晴都氏は、巨骨(垂直刺)に、肩棘 (肩峰外端より約3㎝内方の肩甲棘直下)、肩鎖(鎖骨外端 より約3㎝内方の鎖骨直下)の2穴(何れも水平刺)を加え、 都合3点を五十肩の特殊治療点として、深刺(2~3㎝)・ 置鍼で成果を上げている。

4)肩関節痛に関する徒手査法
①ダウバーン兆候
三角筋下滑液包損傷(肩回旋筋腱板損傷)
②ペインフルアークサイン
棘上筋腱損傷、肩峰下滑液包炎
③スピードT、ヤーガソンT、ストレッチT
上腕二頭筋 長頭腱の腱鞘炎
④ドロップアームサイン
棘上筋腱断裂。
患者の上肢を他動的に90度外転させ手を離す。断裂があれば手がストンと落ちる。

5)肩関節の参考可動域と関連筋群
①屈曲(前方挙上)
180°… 三角筋(前)、大胸筋。補助が烏口腕筋、上腕二頭筋
②伸展(後方挙上)
50°… 三角筋(後)、広背筋、大円筋。補助は上腕三頭筋
③外転(側方挙上)
180°… 三角筋(中)、棘上筋。補助は上腕二頭筋長頭、上腕三頭筋長頭
④外旋
60°… 棘下筋、小円筋。補助は三角筋(後)
⑤内旋
80°… 肩甲下筋、大円筋。補助は三角筋(前)、大胸筋、広背筋。
⑥水平屈曲(水平内転)
135°… 外転90度までは外転筋の働きによる。ここから前方への屈曲は三角筋(前)、大胸筋、烏口腕筋、肩甲下筋。
⑦水平伸展(水平外転)
30°… 外転位からの伸展は三角筋(中後部)、棘下筋、小円筋。

◎第23節 腰下肢痛
■1)参考
腰痛の原因、関連する徒手検査法など
(1)原因
①内臓疾患によるもの:原因臓器の病変による症状を合併
ア.急性に出現するもの
 腹部大動脈瘤、尿路結石、胆石、子宮外妊娠など
イ.慢性に経過するもの
 胃・十二指腸潰瘍、肝硬変、遊走腎など
②感染性のもの
ア.急性:化膿性脊椎炎
イ.慢性:脊椎カリエス
③腫瘍によるもの:転移性悪性腫瘍、原発腫瘍
④腰椎および腰部の支持機構に起因するもの
ア.急性腰痛
 a)筋・筋膜性腰痛
 b)椎間関節捻挫
 c)腰椎椎間板ヘルニア
 d)脊椎圧迫骨折
 e)スプラング・バック
 下位腰椎の棘間靭帯が損傷
 下位腰椎の正中に疼痛・圧痛
イ.慢性腰痛
 a)いわゆる腰痛症
 特に原因を明確にできない腰痛の症候学的診断名
 b)筋・筋膜性腰痛
 c)変形性脊椎症
 d)椎間関節症
 e)椎間板変性症
 f)腰椎分離症・分離すべり症
 g)変性すべり症
 h)腰部脊柱管狭窄症
 i)骨粗鬆症
⑤仙腸関節の病変
⑥梨状筋症候群
⑦股関節疾患
 変形性股関節症、大腿骨頸部骨折、ペルテス病など
⑧神経疾患に由来するもの
⑨心因性のもの

(2)問診のポイント
①安静時痛…炎症性のもの、腫瘍によるものを疑う。
②悪性腫瘍の既往
③転倒など外傷の有無
④痛みの性状・部位・経過
⑤増悪・軽快因子
 例)脊柱管狭窄症では、後屈で増悪、前屈で軽快。
⑥間欠性跛行…さらに神経性・血管性・脊髄性を鑑別
⑦膀胱直腸障害…脊髄や馬尾が圧迫されると起こる。

(3)徒手検査
①坐骨神経の伸展…SLR、ラセーグ徴候、ブラガードT
②大腿神経の伸展…FNST
③椎間関節部の病変、神経根の圧迫、脊柱管内の狭窄…ケンプ徴候
④股関節の病変…パトリックT
⑤仙腸関節部の病変…ニュートンT
⑥梨状筋症候群…ボンネットT
⑦股関節の屈曲拘縮…トーマステスト

(4)その他他覚的所見
①腱反射
②下肢動脈拍動の有無
③筋力低下
④知覚異常
⑤病的反射
⑥階段変形の有無

■2)注意を要するもの
① 発熱、るい痩など全身症状を伴うもの … 炎症性疾患、悪性腫瘍
② 安静時痛、夜間痛が著しく強いもの … 悪性腫瘍
③ 生殖器・消化器症状を伴うもの … 内臓性腰痛の疑い
④ 膀胱直腸障害・中枢神経症状を伴う … 脊髄腫瘍など
⑤ 原因に関わらず運動麻痺が強いもの

■3)適応となるもの
①急性腰痛
 ア.筋・筋膜の急性炎症
 イ.椎間関節の捻挫
 ウ.腰椎椎間板ヘルニア(但し、軽症のもの)
②慢性腰痛
 ア.筋・筋膜性腰痛
 イ.椎間関節性腰痛
 ウ.椎間板性腰痛
 エ.変形性腰椎症
 オ.姿勢性腰痛
 カ.腰椎分離症、腰椎すべり症
 キ.腰部脊柱管狭窄症
③末梢性坐骨神経痛

1)筋・筋膜性腰痛
(1)病態
① 急性:急激な動作で筋筋膜に過伸展や部分断裂が生ずることによって起こる。
② 慢性:筋疲労や炎症の繰り返しによる組織の瘢痕化が起こる結果、循環障害や刺激が原因となって起こる。
(2)症状
① 急性:患部に限局した痛みが強く、疼痛性の側彎が診られることもある。主として前屈動作の障害が強い。
② 慢性:急性ほどの強い痛みはない。
(3)所見
いずれも、腎兪、志室、大腸兪付近に限局した圧痛や硬結が診られる。それ以外の目立った所見はない。

2)椎間関節性腰痛
(1)病態
椎間関節の障害に起因するもので、急性では急激な動作によって関節組織が損傷されて起こる。一方、慢性では他の老化変性と同様に、関節症性変化が椎間関節に現れる結果である。
(2)所見
・疼痛部位:多くが下位腰椎部(L4~L5間、L5~S1間) 
・圧痛:椎間関節部(棘突起の高さで正中より約2㎝外方)の深い押圧で検出されるのが特徴。
・脊柱の運動:いずれの方向へも困難であるが、特に捻転と後屈が強く障害される。→ケンプ徴候

3)変形性腰痛
(1)病態
老化変性に起因するもので、痛みの発生には椎間板や骨棘による刺激や、椎間関節刺激、更には筋筋膜に由来するなど複数の因子が考えられる。
(2)症状
腰部が重い、だるいなど漠然とした一定の腰部症状を示すことが多い。但し、起床時や運動開始時に腰部の痛みや強ばりがあり、それが運動と共に改善されるという特徴的な症状がある。
(3)所見
変形が進行すると、腰椎後弯の増強や階段現象などが診られる。

★上記1~3の治療方針・治療法
(1)治療方針
局所の血流改善、筋スパズムの緩解
(2)治療法
①マッサージ
・疼痛部位およびその周囲の腰背部・殿部の諸筋に現れる 筋緊張・圧痛・硬結に対して軽擦・揉捏・圧迫・叩打法を施す。
・ 筋筋膜性腰痛で、多少の腫脹がある場合、軽擦法程度に とどめておく。
・慢性腰痛では、疼痛性硬結や筋緊張が下位胸椎~腰椎の 棘突起の外方約3~5㎝の部(脾兪・胃兪・腎兪・志室・大腸 兪)、腸骨稜の下約3㎝(小野寺殿点)の部位に軽擦・揉捏・ 圧迫法を行う。更に、仙骨後面部およびその側縁(大殿筋起 始部)、大腿後側部(殷門)などに軽い揉捏・圧迫法を施す。
・併用療法として、施術前に温熱・水治・温泉療法のほか、施術後に腰痛体操(ウイリアムス体操)を加えると効果的である。

②鍼灸
脾兪、胃兪、腎兪、志室、大腸兪、小野寺殿部点

4)根性坐骨神経痛
(1)病態
一般に腰椎の変性は、L4~L5間、L5~S1間の椎間板レベルの椎間孔付近で最も多く起こる。この部の変化によって、この部を通過する坐骨神経の神経根が障害されることによって坐骨神経痛が起こる。従って、腰椎椎間板ヘルニアをはじめ、変形性腰椎症、腰部脊柱管狭窄症、腰椎分離症、腰椎辷り症のいずれかが本症の原因となる。
★参
ヘルニアの好発部位:頻度の高い順にL4-L5間、L5-S1間、L3-L4間。

(2)症状
神経の走行に沿った下肢への放散性の痛みやシビレ感が特徴的。なお、腰部脊柱管狭窄によって馬尾神経に影響が及ぶと、これに間歇性跛行を呈して、馬尾神経症状が加わる。
(3)所見
神経走行に沿った圧痛点、知覚異常、アキレス腱反射減弱、SLRなどの陽性が診られる。但し、脊柱管狭窄症によるものではSLRは陽性とはならない。

(4)神経根障害にみられる神経学的所見の特徴
① L4神経根障害(障害レベル L3-4間)
 筋力:前脛骨筋の筋力低下
 反射:膝蓋腱反射減弱
 知覚:下腿内側、足部内側の鈍麻

② L5神経根障害(障害レベル L4-5間)
 筋力:中殿筋、長母指伸筋、長・短指伸筋の筋力低下
 知覚:下腿外側、足背の鈍麻

③ S1神経根障害(障害レベル L5-S1間)
 筋力:大殿筋、長短腓骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋筋力低下
 反射:アキレス腱反射減弱
 知覚:外果、足部外縁、足底の鈍麻

5)梨状筋症候群
(1)病態
坐骨神経の経路中に、坐骨結節と梨状筋の狭い間隙を通過する。その際、梨状筋の緊張や外傷があれば、この部で坐骨神経に傷害を受けて本症を発症する。
(2)症状・所見
根性坐骨神経痛と同様であるが、ボンネットテスト陽性、梨状筋部の圧痛が診られる。

★上記4、5の治療方針・治療法
(1)治療方針
障害部周辺の循環改善、殿部・下肢の疼痛部位の鎮静を図る。
(2)治療法
①マッサージ
・ 侵された神経の分布領域である殿部・下肢に現れる筋緊張・硬結・圧痛を中心に施術する
・ 圧痛点(大腸兪・承扶・殷門・委中・承筋・崑崙・太谿・足三里・陽陵泉等)に対し持続的圧迫法または圧迫振顫法を行う。
・ 坐骨神経伸展法を施す。
・ 腹直筋強化を図る。
・ 併用療法は腰痛治療に準ずる。

②鍼灸
下部腰椎の直側(大腸兪・小腸兪など)、承扶、殷門、委中、承筋、足三里、陽陵泉、崑崙、太谿

■4)付録
腰神経叢からの神経には次のようなものがある。
① 腸骨下腹神経、② 腸骨鼠径神経、③ 外側大腿皮神経
④ 大腿神経:a.前皮枝、b.伏在神経、⑤ 閉鎖神経
(1)主症状
①腰・大腿部痛
・ 外側大腿皮神経痛では、大腿外側
・ 大腿神経痛では、大腿前側から下腿内側(伏在神経)への領域に多くは持続性の鈍痛が発現する。
②ワレー圧痛点
 ・外側大腿皮神経痛-大腿外側中点(風市)・外側上顆点(陽関)など。
 ・ 大腿神経痛-大腿前内側中点(箕門)・膝内上角上方点(血海)、下腿内側中点(地機)・内果上方点(三陰交)など。
③特異的所見
 ・ 外側大腿皮神経痛-知覚障害(鈍麻ないし脱失)を伴うことが多い。
 ・ 大腿神経伸展法が陽性となる。

◎第24節 膝痛
1.注意を要するもの
① 患部に強い自発痛・夜間痛があり、経過が進行性 … 悪性腫瘍
② 膝関節部の著明な腫脹、発赤・熱感ある場合 … 化膿性膝関節炎
③ 嵌頓症状を繰返す … 半月板障害、離断性骨軟骨炎
④ 受傷直後に著明な腫脹が出現するもの … 関節内骨折、靱帯損傷、半月板損傷
⑤ 関節の動揺が強い … 膝周囲の靱帯断裂
⑥ 関節リウマチ

2.適応となるもの
① 変形性膝関節症
② 運動性膝関節痛(スポーツ障害の項を参照)
③ 滑液包炎 … 膝周囲には多くの滑液包がある。例えば半膜様筋と腓腹筋の内側頭との間、膝蓋靭帯と脛骨粗面の間などに存在する。膝まづいて作業をする人には後者の滑液包炎が起こりやすい。

■1)変形性膝関節症
(1)病態
膝関節部の退行性変化
(2)症状
運動時・体動時(歩行時、階段昇降等)、正座時に痛む。
(3)所見
膝関節腫脹、膝蓋跳動、膝蓋骨圧迫テスト(クラークスサイン)、外反内反テスト陽性。進行すると内反変形、大腿四頭筋萎縮
(4)治療方針
関節周囲の消炎・鎮痛・血液循環の促進を図る。
(5)治療法
①マッサージ
・膝関節を中心にその周囲の筋・腱・靱帯・血管神経をはじめ、膝関節の障害で疲労した腰殿部の筋を対象に施術する。
・大腿部諸筋の筋力増強・伸張を目的に、自動運動を行わせる。
イ.鍼灸:梁丘・血海・委中・犢鼻・その他関節周囲の圧痛点

1)膝関節の徒手検査法とその陽性の病態
① マクマレーT … 外側・内側半月板の損傷
② アプレーT
押し下げ(圧)アプレーT:外側・内側半月板損傷
引き上げ(引)アプレーT:外側・内側側副靭帯損傷
③ 内反・外反動揺T … 外側側副靱帯損傷→内反時動揺
内側側副靱帯損傷→外反時動揺
④ 前方・後方引き出しT … 膝十字靱帯の損傷
前十字靱帯損傷→前方引き出しT陽性
   後十字靱帯損傷→後方引き出しT陽性
⑤ ラックマンテスト … 前十字靭帯損傷
⑥ 膝蓋跳動 … 膝関節腔内の貯留液
⑦ 膝関節圧迫テスト(クラークスサイン) … 膝蓋骨関節軟骨の変性
⑧ ステインマンの圧痛移動サイン … 患者をベッドに腰掛けさせ、膝を屈伸させる。屈伸に伴い圧痛の移動があるかどうかを調べる。変形性膝関節症では、圧痛部は移動しないが、内側半月板損傷では、膝を伸ばした時は圧痛は前方に、曲げた時は内側側副靱帯方向(後方)に移動する。

2)膝関節の参考可動域と関連筋群
① 屈曲:130°…大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋。補助が膝窩筋、薄筋、縫工筋、腓腹筋など
② 伸展:0°…大腿四頭筋、大腿筋膜張筋

◎まとめ 整形外科関連疾患の東洋医学的な考え方
1.脾証
■1)概要
①頸肩腕痛、肩関節痛、上肢痛、腰下肢痛、膝痛の多くは「脾証」に属する。
②「脾」とは詰まって通じないの意で「脾証」は風寒湿の三気が混ざって肌表・経絡に侵襲し、経脈が閉塞して気血の運行が悪くなり、「通じざれば則ち痛む」状態になり、筋や関節の酸痛や重だるさ、屈伸不利が起こるものである。
③風寒湿のうち、風邪が勝っているのを行脾、寒邪が勝っているのを痛脾、湿邪が勝っているのを着脾という。
④脾証にも、急性・慢性がある。発病初期は実証が多く、病の後期になると気血を一層損傷し虚が主となる。臓腑に波及することもある。

■2)分類
(1)風脾= 行脾
① 症状:風邪の特徴で遊走性の疼痛がおこる。初期は頭痛、発熱、悪風を伴いやすい。
② 治療方針:「血めぐれば風おのずと滅す」という考えから、血行を改善することによって風邪の除去を図る。
③ 治療穴:風池・膈兪・血海・太衝など。他に疼痛局所及び循経取穴。

(2) 寒脾= 痛脾
① 症状:寒邪の凝滞性、収引性により疼痛が強い。温めると疼痛が軽減する。
② 治療方針:陽気を補って寒邪の除去を図る。
③ 治療穴:腎兪・関元を補って腎陽を強める。他に疼痛局所及び循経取穴。

(3) 湿脾= 着脾
① 症状:湿邪の粘滞性、重濁性のため固定性で重だるい疼痛。悪天候で増悪。
② 治療方針:脾胃の運化機能を改善し湿の除去をはかる。
③ 治療穴:豊隆、陰陵泉、足三里など。他に疼痛局所及び循経取穴。

2.頸肩腕痛の主な分類
(1) 脾証型
外邪や労損などにより頸部の経絡気血の流れが悪くなるとおこる。
(2) 肝腎不足型
脾証型が長期化するとおこる。
(3) 原因や症状により治療方針は異なるが、経絡気血の流れの改善を図ることを目的に、阿是穴や循経取穴を用いる。

3.肩痛の主な分類
(1) 経絡型
経絡の気血の流れが悪くなり気滞血となって起こる。気滞の段階での疼痛は運動時痛が主で、血が加わると夜間痛が著明になる。運動制限は内旋と外転が主で、患部に多くの圧痛点を伴う。
(2) 経筋型
運動制限が中心で、結帯(伸展・内旋)や結髪(外転・外旋)が制限される。長期化し筋萎縮がおこるものがある。
(3) 治療は主として手陽明、手太陽、手少陽経の経穴から取穴する。

4.膝痛の東洋医学的な考え方
膝は肝との関連が深く、膝は筋腱があつまっている。膝の内側の痛みは肝血不足により厥陰肝経をとおして膝を栄養できなくなって起こる虚証の疼痛である。

5.腰痛の東洋医学的な考え方
■1)概要
① 腰は腎の精気が注いでいるところで、腎と膀胱は表裏関係にある。
② 腰は足太陽経が走行し、任・督・衝・帯の諸脈も分布している。
③ 外寒性腰痛は風寒湿の邪によるものが多く、内傷性は腎虚によるものが多い。

■2)分類
1) 気滞血脾による腰痛(急性タイプ)
(1)病態
捻挫、打撲などの外傷→腰部の経絡、経筋の損傷→ 気血の阻滞→腰痛
(2)主要症状
腰部の刺痛、固定性の疼痛、圧迫すると増悪(拒按)
(3)随伴症状
昼間は軽く、夜間に増強(夜間になり寝ると気血の運行がさらに悪くなるから)、局所の筋緊張、著明な圧痛点、牽引痛、挫傷の場合には局所に血腫
(4)舌脈所見
舌質紫暗、沈、脾脈
(5)治療方針
経脈の気血運行を改善する。
(6)処方例
腎兪、委中、環跳、大腸兪、中封、阿是穴

2)寒湿による腰痛(慢性タイプ)
(1)病態
寒湿の邪の停滞 → 腰部の経絡の気血に阻滞
(2)主要症状
腰部の重だるさ・冷え・疼痛、雨天や寒いときに増悪。じっとしていると増悪し、動くと軽減する。
(3)随伴症状
腰部にシビレ感、運動不利、次第に増悪または時々増悪、温めると軽減
(4)舌脈所見
舌苔白膩、脈沈遅
(5)治療方針
陽気を強めて寒湿の邪を除去し気血運行を改善する
(6)処方例
太陽型:腎兪、大腸兪、環跳、委中、崑崙
少陽型:大腸兪、環跳、風市、陽陵泉、飛陽

3)腎虚による腰痛(慢性タイプ)
(1)病態
房事過多・疾病の慢性化に伴う疲労、老化→腎虚による腎精不足
(2)主要症状
腰部の無力感・だるさ・疼痛、足の無力感(腎精が不足し骨髄を充足できないため)、疲労すると増悪
(3)随伴症状
腰部の鈍痛は経過が長い、押すと気持ちがよい、横になると軽減
・陽虚:精神疲労、腰部の冷え、滑精(精液を漏らす)、小便清
・陰虚:虚煩(悶々として気が重い)、不眠、小便黄、手足心熱、口・咽喉の乾き
(4)舌脈所見
陽虚:舌質淡、舌苔薄白、脈沈無力
陰虚:舌質紅、舌苔少、細・数脈にして無力
(5)治療方針
腎を補い、気血循環の改善を図る。
(6)処方例
腎兪、委中
 腎陽虚:命門、陽関、崑崙、陽池など
 腎陰虚:関元、太谿、志室、陰谷など





シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

Copy Protected by Chetan's WP-Copyprotect.