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臨床医学総論ノート03「視診」

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■1)意義と方法
・意義
患者を見て観察する診察法である
・方法
まず全身観察を行い、のちに局所観察を行う

■2)注意事項
・診察室の環境に注意する
照明、室温
・患者が診察室に入ってきたときから始める
・視診部位はできるだけ濾出させる

■3)全身の観察
(1)病的顔貌(顔つき)
①ヒポクラテス顔貌
やせて、高度の貧血があり、眼がくぼみ、頬がおちて鼻がとがる
死相ともいう
・出現する疾患
消耗性疾患や癌の末期など(重篤な疾患)
☆消耗性疾患:高熱の続く疾患、癌など
②仮面様顔貌
こわばった顔で能面のように表情に乏しい
・出現する疾患
パーキンソン病、パーキンソン症候群
☆パーキンソン病
錐体外路の障害によって発症する
全身の筋肉が緊張する
③満月様顔貌
顔全体が丸く、赤みをおび、多毛となる
・出現する疾患
クッシング症候群(副腎皮質の機能亢進症、糖質コルチコイドの過剰分泌)
ステロイド剤の過使用
★ステロイド剤:抗炎症剤
☆ステロイド剤=糖質コルチコイド
④無欲状顔貌
顔の表情や眼に活気がない。周囲に対して関心を示さない
・出現する疾患
髄膜炎、腸チフスなど、高熱や意識障害を伴う状態
☆髄膜炎:脳脊髄膜の炎症
⑤苦悶状顔貌(重要でない)
しかめ顔
⑥粘液水腫顔貌(重要でない)
顔がはれぼったい(顔に水がたまっている)
・出現する疾患
粘液水腫:甲状腺機能低下症によって出現(成人性の)
⑦蒙古人様顔貌(重要でない)
内眼角贅皮、両眼隔離、鞍鼻などを示す顔貌
・出現する疾患
ダウン症候群
☆ダウン症候群:染色体疾患、身体、知能の発育不全

(2)顔色
・顔面蒼白
貧血の疑いがある
☆唇や眼瞼結膜をチェックする
・顔面潮紅
精神的な高揚
発熱
血圧上昇
赤血球増多症

(3)体型の異常
病理学参照

(4)体格の異常
①巨人症
・診断基準
身長が同性、同年齢の標準身長に比較して、プラス2標準偏差以上に高いもの
ア.疾患
・家族性巨人症
・下垂体性巨人症:成長期の成長ホルモンの過剰分泌によって引き起こされる
・甲状腺性巨人症:甲状腺ホルモンの過剰分泌により引き起こされる
・脳性巨人症:ソトス症候群
☆ソトス症候群:原因不明で、乳幼児期に過剰な成長を示す
・マルファン症候群:別名クモ指症、遺伝性の秒
・ホモシスチン尿症:代謝異常
②小人症
侏儒症ともいう
ア.疾患
・原発性小人症(真性侏儒):遺伝による
☆原発性:他に原因がないこと
・下垂体性小人症:成長ホルモンの分泌不全
・甲状腺性侏儒:甲状腺ホルモンの分泌不全
★ホルモン性の小人症は、成長期におけるホルモン異常による
★クレチン病は下垂体性小人症と異なり、知能障害を伴う
・ダウン症候群
・ターナー症候群:性染色体異常による疾患
XO症候群とも呼ばれる
・フレーリッヒ症候群
間脳腫瘍による小人症、肥満、性腺発育障害

(5)栄養状態
皮膚の状態、皮下脂肪の量、標準体重との比較により判断する
①標準体重
標準体重=(身長センチー100)×0.9
②判定基準
肥満 :+20%以上
肥満傾向 :+10~20%
普通 :-10~10%
やせ傾向 :-10~20%
やせ :-20%以上
☆ブローカの提唱した標準体重
身長-100
現在の標準体重はこのブローカの標準体重をもとに作られたので、ブローカの変法と呼ばれる
③肥満
<分類>
・単純性肥満(本態性肥満)
食べすぎと運動不足による肥満
☆本態性:その他の疾患などの原因が見られない
生活習慣病につながりやすい
・症候性肥満
二次性肥満ともいう
<肥満を引き起こす疾患>
*内分泌疾患:
クッシング症候群
中心性肥満が見られる(体幹に脂肪が蓄積される)
粘液水腫
*フレーリッヒ症候群
*ローレンスムーンビートル症候群
☆遺伝病、肥満、網膜色素変性症、知能発育障害、性器発育不全などを伴う
④やせ(るいそう)
<分類>
・体質的なやせ
・病的なやせ
<病的なやせが見られる疾患>
*糖尿病
*肝硬変
*悪性腫瘍(癌)
上記のような疾患を「慢性消耗性疾患」と呼ぶ
下痢をきたす疾患も慢性消耗性疾患に含まれる
*内分泌疾患
アジソン病(副腎皮質機能低下症)
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
*神経性食欲不振症
*アルコール中毒
ア.悪液質
慢性消耗性疾患の末期で、極度の栄養不良状態をいう
(ヒポクラテス顔貌をともなったり)

⑤身長体重指数
相対的な発育の度合いを見るための指標
ア.BMI(体容量指数、Body Math Index)
・計算式
体重(kg)/(身長(m))^2
・判定
25以上を肥満とする
イ.カウプ指数
主に生後3ヶ月から2歳までの乳幼児の栄養状態の判定に用いられる
・計算式
(体重(g)/(身長(cm))^2)×10
・判定
15~19が普通
13以下がやせ
22以上が肥満
★学童に用いる指数にローレル指数がある

(6)姿勢と体位
①良い姿勢
☆脊柱は生理的に胸椎で後彎、腰椎で前弯
②異常姿勢
ア.脊柱の彎曲の異常
前弯、後彎、側弯
☆良い姿勢からみて
イ.前かがみ姿勢
パーキンソン病が疑われる
ウ.ウェルニッケ・マン肢位
上肢:屈曲拘縮(肩関節内転、肘関節屈曲、前腕回内、手関節屈曲、手指屈曲)
下肢:伸展拘縮(股関節伸展、膝関節伸展、足関節底屈)
脳梗塞の後遺症に表れる
③体位の異常
・鬱血性心不全や喘息発作時にとりやすい姿勢
起坐位
☆上体を起こしていた方が呼吸がしやすい
・気胸、乾性胸膜炎で見られる体位
患側を上にした側臥位
・湿性胸膜炎で見られる体位
患側を下にした側臥位
☆湿性胸膜炎:胸膜内に水がたまるような状態
正常な側の肺で呼吸しようとする
★患側の逆側=健側
・激しい腹痛がある場合(参考)
側臥位で海老状になる
・破傷風(参考)
後弓反張
☆破傷風:傷口から入った破傷風菌による感染症、末梢神経をおかし、伸張反射を亢進させる

(8)意識状態
①意識水準を示す用語
・感情鈍麻
無欲で無関心な状態
・傾眠
刺激により覚醒し、放置すると眠ってしまう
・昏迷
強い痛みにだけ防御反応を示す
・昏睡
意識が完全に消失して、強い痛みにも反応しない
②意識障害の数量化
・Ⅲ群3段階方式(3-3-9度方式、Japan Coma Scale)
・グラスゴーコーマスケール
(資料参照)
ア.Ⅲ群3段階方式
意識水準の程度をⅠ、Ⅱ、Ⅲ群に評価して、さらに各群の中で意識水準の程度の重篤な順に3、2、1と三段階に評価する。
・Ⅲ群:刺激をしても覚醒しない状態で、3桁で表現する。
・Ⅱ群:刺激すると覚醒するが、刺激をやめると眠りこむ状態で、2桁で表現する。
・Ⅰ群:刺激なしでも覚醒している状態で、1桁で表現する。
・評価における注意点
乳児の場合は成人と異なった判断基準をする。
・意識障害時の強い痛み刺激とは
大胸筋を強くつまんだり
乳様突起前方で茎状突起の上を指で強く圧迫したり
眼球を強く圧迫する
イ.グラスゴーコーマスケール
 意識レベルをE(開眼)、V(言葉による応答)、M(運動反応)のそれぞれの項目で判定する。
③見当識
現在の自己および自己がおかれている状況についての認識を言う
例)現在の時間や場所、自分の名前などについての認識、

(9)精神症状
①もうろう状態
軽い意識混濁と強度の意識狭窄が見られる
例)てんかん、ヒステリー
②せん妄(譫妄)
覚醒しているが認識がなく、幻覚、錯覚、妄想から過行動を起こす状態
例)アルコール中毒、薬物中毒、脳疾患、高熱

(10)不随意運動
後述

(11)皮膚の異常
①皮膚色の異常
ア.チアノーゼ
末梢血の還元ヘモグロビンが5グラム/デシリットル以上に増えた状態で、皮膚や粘膜が紫色または暗赤色に見える
☆還元ヘモグロビン:酸素と結合していないヘモグロビン
酸化していない鉄は黒っぽい
・チアノーゼを招く疾患
慢性肺疾患(肺気腫など)
慢性心疾患(鬱血性心不全)
肝硬変
イ.色素沈着
・メラニン
メラニンの多量沈着症により、青色から黒を示す
☆メラニンの沈着が少ないと青っぽく見える
*メラニン色素沈着症を引き起こす疾患
アジソン病(副腎皮質ホルモン機能低下)
・ビリルビン
黄疸 :ビリルビンの皮膚の色素沈着
・カロチン
黄色
甘皮症:カロチンの色素沈着(黄色くなる)
・ヘモジデリン
褐色
鉄の代謝異常によって沈着症
☆ヘモジデリン:ヘモグロビンの分解産物
ウ.色素脱失
・メラニン色素が減少した状態
白皮症(アルビノ)
白斑
エ.黄疸
血中ビリルビン濃度が2ミリグラム/デシリットル以上に増加して、組織が黄色くなった状態をいう
ビリルビン=胆汁色素
黄疸が起こっているかどうかを確認するときには眼球の白め(眼球結膜)を見ることが多い
a.黄疸の原因による分類
・溶血性黄疸
…赤血球(ヘモグロビン)が破壊されてビリルビンが増加する
例)新生児黄疸
・肝細胞性黄疸
…肝臓の機能低下により、胆汁生成の不足によって起こる
例)肝炎、肝硬変
・閉塞性黄疸
…胆道の一部がつまることで十二指腸から胆汁が排出されなくなり、抱合型ビリルビンが血中に流出する
例)胆石症
★関節ビリルビンと直接ビリルビン
・関節ビリルビン:非抱合型ビリルビン
溶血性黄疸で増加
・直接ビリルビン:抱合型ビリルビン
閉塞性黄疸で増加
*肝細胞性黄疸では法則性はない
オ.貧血
血液中の赤血球数、血色素量、ヘマトクリット値が正常より減少した状態をいう
皮膚色が蒼白になる
例)鉄欠乏性貧血(鉄欠乏)
悪性貧血(ビタミンB12、葉酸欠乏)
再生不良性貧血(赤血球の賛成の減少)
溶血性貧血(ヘモグロビンの破壊が過ぎる)
白血病(骨髄が傷害されて赤血球が不足する)
カ.紅潮
皮膚が赤くなること
発熱、炎症、高血圧、赤血球増多症(多血症)、精神興奮

②発疹(皮疹)
・発疹とは
皮膚に現れる肉眼的な限局的病変
ア.発疹の分類
a.原発疹(げんぱつしん)
健康な皮膚に出現する発疹
・斑
健常皮膚面と同じ高さの限局性の色調の変化
例)紅斑、出血斑(紫斑など)、色素斑、白斑など
・水疱
表皮が隆起し、その内部に漿液をもつ発疹
・小水疱
小さな水胞
・膿疱
水胞が化膿して膿液でみたされた発心
・丘疹
針頭大で円形または楕円形の発疹
・結節
くるみの実ぐらいの大きさの限局した病巣
・腫瘍
体細胞が過剰に増殖する病変
・膨疹(じんましん)
皮膚の一過性の限局性浮腫
Ⅰ型アレルギー反応

b.続発疹
原発疹の形が変形するか、続発して出現したもの
・鱗屑
皮膚の角層が肥厚し、はがれやすくなった状態
・びらん
上皮が欠損歯、結合織面が露出した状態、瘢痕を残さない
・潰瘍
さらに深部に及ぶ欠損、瘢痕性に治癒する
・膿瘍
局所に膿汁が蓄積する化膿性炎の一種
・瘢痕
皮膚面の傷などが治癒した後に残るあと
イ.発疹と疾患
・蝶形紅斑
鼻を中心に顔面に現れる蝶形の紅斑
疾病:全身性エリテマトーデス(SLE)
☆30代から50代の女性に好発する、膠原病
・手掌紅斑
手掌全体に生じる紅斑(赤く細かな斑点)
疾病:肝硬変
(妊娠、慢性肺疾患でも出現することがある)
・コプリック斑
口腔粘膜に見られる境界明確な斑点(青白色、やや膨隆、輪郭が充血)
疾患:麻疹
・バラ疹
多発する小型の紅斑(ほぼ全身に発生)
疾病:腸チフス、梅毒

③出血
出血性素因(出血傾向)の診断では皮下出血の有無の確認が重要
ア.分類
・点状出血 :直径が2ミリ以下のもの
・紫斑 :直径2~5ミリ
・斑状出血 :直径5ミリ以上
☆紫斑という語が重要、その他のサイズなどは重要でない
ウ.出血傾向の原因
・血小板の障害
例)血小板減少性紫斑病
血小板無力症(血小板はあるが能力が低い)
・血管壁の障害
血管壁が弱くなり出血しやすくなる
例)壊血病(ビタミンCの欠乏による)
・血液凝固因子の異常
例)血友病(伴性遺伝病)

④毛細血管拡張(クモ状血管腫)
クモ状血管腫瘍とは、中央部に隆起した点状血管と放射状にのびた細い血管でつくる血管腫である(クモの形に似ている)
顔面に多発し、頸部や前胸部でも見られる
慢性肝障害(肝硬変)や妊娠時にも見られる
肝硬変ではエストロゲンの不活性化が障害されるため女性化乳房や手掌紅斑が見られる
⑤母斑
先天的な原因によって皮膚に現れる限局性病変
ア.黒子(ほくろ)
イ.ポートワイン母斑:扁平淡赤色の血管腫で生涯にわたって見られる
 症例):スタージ・ウェーバー症候群(三叉神経第1枝,2枝の領域に)
⑥浮腫
皮下組織に液体が溜まった状態
局所は腫大し、指圧により圧痕が残る
浮腫の有無は骨が皮膚のすぐ下にある部で診るとよい
…脛骨の内側面、前額部など
★水腫とは
液体が組織に溜まった状態
水腫には腹水、胸水、浮腫などがある
ア.浮腫の分類
a.局所性浮腫
血管が拡張して透過性が高まって起こる浮腫
例):炎症、クインケの浮腫、循環障害
★クインケの浮腫
自律神経の異常によって現れる浮腫
(血管神経性、アレルギー性)
  一過性で無痛性、発赤はない
b.全身性の浮腫
・心臓性浮腫
心疾患の時に見られる浮腫で、循環障害による
立位では下肢、仰臥位では背部や腰仙部からはじまり、全身に広がる
・腎性浮腫
腎障害で見られる浮腫で、低たんぱく血症による
ネフローゼが代表的
☆膠質滲透圧の低下により、組織内の水分が血管に戻りにくくなる
顔面、特に眼瞼に始まり、全身に広がる
・肝性浮腫
肝疾患で見られる浮腫で、低たんぱく血症による
下肢に多く見られ、腹水を伴うことが多い
★肝臓ではアルブミンなどの血漿タンパクを生産しているので、その機能が衰えると低蛋白血症(=低アルブミン血症)となる
・飢餓浮腫(栄養不良性浮腫)
長期間の栄養不足によって起こる浮腫で低蛋白血症による
☆蛋白の接種不足により、体を構成する蛋白を使ってしまう
イ.粘液水腫
甲状腺機能低下症に見られる浮腫で、指圧による圧痕を残さない
⑦その他の皮膚症状
皮下気腫や発汗の異常
川崎病に特徴的な落屑など
☆皮下気腫
外科手術後に起こることがある(皮下組織に空気が入り込んだ状態)

(12)毛髪の異常
・脱毛症(禿髪症)
頭髪の数が少なくなる、あるいは短く細くなる現象
粘液水腫でも見られる

(13)爪の異常
後述

(14)リンパ節
頚部、顎下部、鎖骨上窩部、腋窩部、鼡径部など、表在性のリンパ節を視診、触診する
リンパ節腫脹を観察する
その腫脹が、全身性のものか局所性のものかを観察
☆全身性のリンパ節腫脹が見られる疾患
悪性リンパ腫、白血病など
大きさ、型さ、皮膚の性状など

(15)その他
食欲。睡眠、便通、排尿について観察

■4)局所の観察
1)頭部
①頭囲と頭蓋の形
・頭囲の測定
眉間の中心点と後頭結節を通る最大周径で測定する
・評価のポイント
年齢別の正常値との比較
経時的変化
②頭部の異常と疾患
ア. 小頭症
年齢別の標準頭囲より、マイナス2標準偏差以上小さい場合をいう
脳の発育不全による知能障害を伴う
・一時性小頭症
出生前に原因があるもの
ダウン症、妊娠時の母体の疾患など
母体の疾患の例:糖尿病、風疹、放射線被爆
・二次性小頭症
生後に原因があって起こる小頭症
外傷、低酸素症、脳炎、髄膜炎など
イ.大頭症
年齢別標準頭囲よりプラス2標準偏差以上
・水頭症
頭蓋内に脳脊髄液が貯溜している状態
・脳性巨人症(ソトス症候群)
ウ.頭蓋の形の異常
・前額部の突出
→水頭症、軟骨痙性不全
・短頭
→冠状縫合の早期癒合
・長頭(舟状頭)
→矢状縫合の相期癒合
・塔状頭
→冠状縫合、矢状縫合の相期癒合
エ.大泉門の異常
・大泉門の早期閉鎖
環状縫合と矢状縫合の早期癒合
・大泉門の閉鎖遅延
クレチン病、くる病、脳腫瘍、水頭症
☆骨の性腸不全や脳内からの圧迫があるような疾患
・大泉門陥凹
脱水症
・大泉門膨隆
水頭症、脳腫瘍、髄膜炎

2)顔面
(1)顔面全体
皮膚の色、対称性、浮腫や腫脹の有無
①皮膚の色
貧血:蒼白
チアノーゼ:紫色
黄疸:黄色
②対称性
浮腫、腫脹、顔面神経麻痺
☆麻痺:神経の障害
(2)眼瞼結膜と眼球結膜
☆眼瞼、眼球結膜は透明な膜
①眼瞼結膜
結膜の下の組織が透視できる
・貧血:赤みが少なくなる
・結膜炎:潮紅
②眼球結膜
血管を透視できる
出血、黄疸
(3)眼瞼下垂
まぶたがあまり上がらない状態
上眼瞼挙筋や上瞼板筋の麻痺によって起こる
・上眼瞼挙筋:動眼神経支配、上瞼の挙上
☆瞼が閉じられないのは、眼輪筋の麻痺
・上瞼板筋:瞼の中にある平滑筋、交換神経支配
・疾患
*動眼神経麻痺
*ホルネル症候群
…頚部交感神経の傷害による眼瞼裂狭小、縮瞳、眼球後退
*重症筋無力症
…神経筋接合部のアセチルコリン伝達傷害による筋力低下を主とする疾患
☆眼瞼下垂は初発症状、片側ずつ現れる
疲労によって増強する
*先天性眼瞼下垂
マーカスガン現象などの症状が見られる
☆マーカスガン現象:
下顎を動かすと眼瞼の挙上反応が見られる
(4)眼球突出
①両側性の眼球突出が見られる疾患
バセドウ病
②片側性の眼球突出が見られる疾患
眼窩腫瘍、眼窩筋炎
☆眼窩筋炎:筋が炎症を起こして腫れるため

(5)瞳孔
大きさ、形、左右差、瞳孔反射(対光反射、輻輳)
①縮瞳の原因
薬物中毒、ホルネル症候群(多くは一側性)
②散瞳の原因
バセドウ病、ショック、散瞳剤(アトロピンなど)
③アーガイル・ロバートソン徴候
対光反射が消失し、輻輳反射、近見反応が正常な状態をいう
この徴候が見られる疾患:神経梅毒
☆神経梅毒:神経症状のある梅毒

(6)その他の眼の異常
①水晶体脱臼
マルファン症候群
ホモシスチン尿症
☆脱臼:位置の異常
②白内障
水晶体が混濁した状態
・白内障を引き起こす疾患
先天性白内障
糖尿病の合併症
ステロイド剤の過使用
先天性風疹症候群
…母体の風疹ウィルスが胎児に影響を与える
ロウ症候群
…伴性遺伝病で知能障害、白内障、発育障害などを見る疾患
ガラクトース血症
…常染色体性劣性遺伝病、血中、尿中のガラクトースが増加する
③カイザー・フライシャー環(輪)
角膜輪ともいう
角膜周辺に見られる緑褐色の色素輪で、銅の沈着症による
・疾患
ウィルソン病(肝レンズ核変性症)
…銅の代謝異常

(7)眼球運動の異常
①眼球振盪(眼振)
眼球の一定方向への不随意的、律動的な往復運動で、一点を注視できなくなる
・眼振の見られる疾患
生理的眼振
眼疾患
小脳疾患
脳幹疾患
②落陽現象
両側の眼球が下を向く現象
・疾患
黄疸をきたす疾患
☆溶血性黄疸、肝細胞性黄疸、閉塞性黄疸
水頭症
③メビウス徴候
輻輳障害のため視軸が合わず、目の前のものを注視できない状態
・疾患
バセドウ病
④斜視
目標を両岸で見つめたとき、1眼の視線が目標から外れた、眼位異常をいう
・疾患
眼球運動に関する、筋や神経の麻痺
・特に斜刺を起こしやすい神経麻痺
末梢性の外転神経麻痺
⑤複視(二重視)
一つの物体が二つに分かれて見える状態をいう
眼筋麻痺などで起こる

(8)眼底所見
網膜、視神経、血管の状態を見る
①うっ血乳頭(乳頭浮腫)
視神経乳頭のうっ血
脳圧亢進症状の一つ
★脳圧亢進を伴う疾患
脳腫瘍、クモ膜下出血、髄膜炎など
②血管の細小化(細小血管症)、脆弱か
・疾患
糖尿病、動脈硬化症
③視神経萎縮
④網膜色素変性
色素沈着が観察できる
⑤チェリーレッドスポット(桜赤色斑点)
中心窩に赤い斑点ができる
・疾患
テイ・サックス病
…ガングリオシドが蓄積する常染色体性劣性遺伝病

(9)鼻
・鼻の観察のポイント
形、鼻出血、鼻翼呼吸
①鞍鼻
鼻背が陥凹した状態をいう
・疾患
ダウン症候群
梅毒
多発性軟骨炎
②鼻出血
・疾患
出血傾向をきたす疾患
…壊血病(ビタミンC欠乏)
血友病
血小板減少性紫斑病、白血病
高血圧
肝疾患
外傷

(10)口
・観察のポイント
口唇の色、歯、歯肉、口腔粘膜、口臭
①口唇の色の変化
チアノーゼ:紫色
②口腔粘膜の異常
開口状態で観察
・アフタ性口内炎
円形白色の丘疹
☆中心が白く、周囲が充血して赤い。もっともポピュラーな口内炎
・コプリック斑
麻疹の特徴的症状
③口臭
・口臭の原因
口内炎
歯槽膿漏
糖尿病:ケトン臭(アセトン臭)
アルコール中毒
④歯の異常
・齲歯
・ハッチンソンの歯
短く樽状をなし、咀嚼面が半月状に陷凹する
・ハッチンソンの歯が見られる疾患
先天性梅毒
⑤歯肉出血
・出血傾向をきたす疾患

(11)舌
形や大きさ、舌苔の有無、舌乳頭の変化を観察
☆舌乳頭が腫れると光沢が出てくる
・舌苔が増える疾患
口内炎
熱性疾患
…感染症など発熱する疾患
猩紅熱
・イチゴ舌
舌乳頭が腫大し、発赤舌状態
猩紅熱で出現
・ハンター舌炎
疼痛と舌の光沢とが特徴の舌炎
舌乳頭が萎縮する
悪性貧血で出現
・地図状舌
無症状の舌炎状態
・巨大舌
ダウン症候群
末端肥大症
アミロイドーシス
☆末端肥大症:成人における成長ホルモン過剰
☆アミロイドーシス:アミドイドが全身に沈着する原因不明の疾患
アミロイド=類澱粉質(でんぷんに似た物質)
・舌の偏位
舌下神経麻痺

(12)咽頭
炎症の有無、扁桃肥大、軟口蓋麻痺を視診
①嚥下障害
=嚥下困難、嚥下痛
・疾患
咽頭炎、扁桃炎、アンギーナ
食道炎
★アンギーナ:嚥下時に狭窄感を起こす病状のこと
②軟口蓋麻痺
★軟口蓋:校外の後方3分の1
★軟口蓋麻痺には口蓋垂の麻痺も含む
・軟口蓋麻痺の視診法
あ」と発音したときに口蓋垂、軟口蓋が挙上しない
片麻痺の場合は健側だけが挙上
・疾患
迷走神経の傷害

(13)耳
大きさ、形、耳疾患の有無を視診
①通風結節
耳介軟骨にできるしこりで尿酸結晶の沈着症による
・疾患
通風(高尿酸血症)
②小耳
・疾患
ダウン症

3)頚部、項部
リンパ節、コマ音、甲状腺、唾液腺などを視診
(1)頚部の異常
①頚部のリンパ節腫大
・疾患
感染症(扁桃炎、咽頭炎など)
結核
…るいれき(頚部のリンパ節が腫脹して数珠状になったもの。無痛)
白血病、悪性リンパ腫(全身性のリンパ節腫脹が見られる)
②項部強直
仰臥位で頭を前屈させたときに異常な抵抗をみとめるもの
髄膜刺激症状の一つ
★髄膜=脳脊髄膜
・疾患
(脳脊髄膜に異常な刺激が加わったときに起こす)
クモ膜下出血
③翼状頚
乳様突起から肩峰へ薄い膜を形成するものをいう
・疾患
ターナー症候群

(2)コマ音(独楽音)
鎖骨上窩で聞かれる連続性の静脈雑音
・疾患
発熱、妊娠、貧血、バセドウ病
正常小児でも聞かれる

(3)甲状腺
腫脹や圧痛の有無
左右差
甲状腺は嚥下運動にともなって上下する
・甲状腺腫大
バセドウ病
橋本病
…橋本病:自己免疫性の慢性甲状腺炎、30~50歳代の女性に好発
甲状腺癌

(4)唾液腺
腫脹の有無
・唾液腺腫脹
流行性耳下腺炎
唾石
耳下腺腫瘍
☆癌:上皮性の悪性腫瘍

3)胸部の視診
大きさ、形、
呼吸運動
心尖拍動
(1)大きさや対称性の異常、(2)形の異常
①扁平胸
扁平で細長く前後径が短い胸郭
無力性体質で見られる
②ロザリオ胸(数珠状今日)
胸骨と肋軟骨の接合部が突出し、ビーズ球が並んでいるように見える胸郭
・疾患
ビタミンD欠乏症(くる病)
…骨端部の異常増殖
ビタミンC欠乏症
…胸骨の亜脱臼による

③樽状胸
太短くて、前後径が長い胸郭で肋骨の走行は水平となる
・疾患
慢性肺気腫(肺気腫が両側性の場合)
④鳩胸
胸骨下半部が前方に突出した胸郭をいう
・疾患
くる病
先天性心疾患など
⑤漏斗胸
胸骨下部が陥没した胸郭
・疾患
マルファン症候群

⑥左右の非対称
・一側性の拡大
湿性胸膜炎
一側性の肺気腫
・一側性の縮小
肺の萎縮
⑦翼状肩甲
肩甲骨の内側縁から下角が胸郭から離れる
・疾患
長胸神経麻痺(前鋸筋麻痺)

(3)異常呼吸
後述

(4)心臓の視診
心尖拍動の位置や強さを観察する
★成人:左第4~5肋間の高さ。鎖骨中線のやや内側
①病的移動
・左方移動
左室肥大
右気胸
右の胸水
縦隔腫瘍
・右方移動
左の気胸
左胸水
縦隔腫瘍
右室肥大
・下方移動
肺気腫
…左右の肺に圧迫されて心臓が細長く変形する(滴状心)
・上方移動
腹水
妊娠

②心尖拍動の強さの異常
・増強
左室肥大
胸壁が薄い
・減弱
心衰弱
胸壁の暑い人

5)腹部の視診
皮膚の変化、膨隆や陥凹、蠕動運動などの観察を行う
(1)腹壁皮膚の変化
①皮膚線条
皮膚が一度伸展して弛緩した際にできる白色から灰白色の線状の瘢痕をいう
・疾患
妊娠
肥満
クッシング症候群
…赤色の皮膚線条が見られる
(2)腹壁静脈の怒張
①メズサの頭(メデューサの頭)
浅腹壁静脈が臍を中心として放射状に怒張する現象をいう
☆静脈怒張:静脈が膨らんだ状態
・疾患
門脈の通過障害(門脈圧亢進症)
…肝硬変など
②下大静脈の閉塞による静脈怒張
主に側腹部に見られる

(3)腹部の陥没
・疾患
消耗性疾患
…癌、糖尿病の末期、熱性疾患、下痢
神経性食欲不振症
(4)腹部の膨隆
①全体的な膨隆
・疾患
肥満
妊娠
宿便
腹水の貯溜
鼓腸
②局所的な膨隆
・心窩部の膨隆
胃拡張、胃癌
・右季肋部
肝腫大
・左悸肋部
脾臓の腫大
☆悸肋部:肋骨弓の下縁あたり
・右腸骨窩
盲腸部の腫瘍
・左腸骨窩
下行結腸、S状結腸の腫瘍

(5)鼓腸
消化管内にガスが貯留して、お腹がはっている状態をいう
・疾患
腸閉塞(イレウス)

(6)腸の蠕動運動
正常では観察できない
蠕動運動不安(不穏)
…腸管の蠕動運動が亢進し、腹壁を通して見えるものをいう
・蠕動運動不安の見られる疾患
腸管の通過障害(腸閉塞など)
下痢

6)四肢の視診
 左右の比較、皮膚、筋、神経系、関節の状態、血行障害の有無をみる。
1)上肢
(1)大きさの異常
・巨大な手:末端巨大症
・著名に細長い手指:マルファン症候群
(2)変形
①猿手
母指球が萎縮し、四指腹と母指腹が平面上に並ぶ。
正中神経麻痺
②鷲手(鉤手)
手指の基節骨が強く背屈し,中節・末節骨が屈曲する。手背の骨間溝が著明となり、鷲の足のようにみえる。
尺骨神経麻痺
③下垂手(垂れ手)
手がだらりと手掌側に垂れて伸展できない。肘関節・手関節が屈曲しやや回内する。
橈骨神経麻痺
④〔太鼓〕ばち指
指趾の末節が球状や紡錘状に膨大している状態。
心疾患、慢性肺疾患、肝機能障害
③匙状爪(スプーン状爪)
爪甲の両側縁が上方に反り、中央が凹んでスプーン状を呈する。爪が薄くもろい。
鉄欠乏性貧血、甲状腺機能亢進
④デュプイトレン拘縮
指の屈曲拘縮で、慢性に経過する。
⑤ヘバーデン結節
DIP背側にみられる結節様の変形。手指は屈曲位に変形する。
変形性関節症(頻度は低い)
⑥オスラー結節
手足の指の掌側に生じる有痛性の小結節で、紅斑様あるいは青みがかっている。
細菌性心内膜炎(ただし30%以下にしかみとめない)
⑦関節リウマチに伴う変形
・尺側偏位
手指列が尺側に傾く。
・ボタン穴変形
PIP関節屈曲、DIP関節過伸展位を呈した変形
・スワンネック変形
MP関節屈曲、PIP関節伸展、DIP関節屈曲位をとる変形
・オペラグラスハンド
骨破壊が進行し、オペラグラスを畳み込んだような外観を呈する。

(3)振戦
①指の振戦
甲状腺機能亢進症(細かい振戦)
②羽ばたき振戦
上肢全体を鳥が羽ばたくように動かす。
ウィルソン病、重症肝疾患

(4)色の異常
①レイノー現象
手足の母指を除く両四指が発作性に蒼白となり、皮膚は間欠的に冷感としびれ感をきたし、回復時に発赤する現象。皮膚色は蒼白→チアノーゼ→発赤
レイノー病、関節リウマチ、SLE、バージャー病、斜角筋症候群
☆バージャー病:閉塞性血栓血管炎(足に多い)

②柑皮症
 手掌、足底、鼻唇溝などの黄色色素沈着。
 柑橘類やカロチンの過剰摂取
③クインケの拍動
手指の爪甲の先端を圧迫し爪床の一部を蒼白にしたとき、残りの赤色調の部分との境界が動静脈叢の血管拍動として触れたり見えたりするもの。
大動脈弁閉鎖不全症、発熱、貧血、甲状腺機能亢進
④手掌紅斑
手掌全体にび漫性に生じる紅斑。
肝硬変、妊娠、慢性肺疾患、ピル長期内服

2)下肢
(1)変形
①尖足
アキレス腱の拘縮により足関節が底屈位をとる変形。
腓骨神経麻痺(下垂足)、片麻痺、脊髄性小児麻痺
★前脛骨神経麻痺
②踵足(鈎足)
足関節が背屈位をとる変形。
脊髄性小児麻痺
③内反足
足が内反(回外・内転)位に固定された変形で、足部の外縁で歩行する。
先天奇形、腓骨神経麻痺、外傷
④外反足
足が外反(回内・外転)位に向いた変形で、扁平足を伴うことが多い。
先天性、静力学性、外傷性、麻痺性
⑤扁平足
足部の足アーチ(長軸弓隆)が低下して土踏まずがない変形。足アーチを構成している足根骨群,足底靱帯・筋群の障害により生じる.静力学的扁平足が最も頻度が高く,長時間立位作業者にみられる。
⑥O脚(内反膝)
両下肢が膝部で外方凸,内側凹面の弯曲をなす状態.片方のみを内反膝という。
生理的内反膝、くる病、姿勢性
⑦X脚(外反膝)
下肢軸が膝以下で外側方へ向かった状態。
生理的X脚、くる病、内分泌疾患、骨端形成異常

(2)循環障害
①間欠性跛行
歩行時に下肢が痛み、歩行を続けることができなくなるが、歩行を中止すると回復してまた歩行が可能となる。
バージャー病、下肢の動脈硬化、脊柱管狭窄症(馬尾神経性)
・馬尾神経性の間欠性跛行
脊柱管狭窄症
・循環障害性の間欠性跛行
バージャー病
下肢の動脈硬化
②静脈瘤
限局性に静脈が拡張した状態で、膝窩や下腿後側にできることが多い。

(3)関節痛
変形性関節症、スポーツ障害、外傷、膠原病、感染症、ペルテス病、先天異常など

(4)その他の所見
①痛風結節
尿酸塩が沈着してできる結節。耳介軟骨、第1MP関節の底面に好発する。
痛風、高尿酸血症
②オスラー結節
③スプーンネイル
④太鼓ばち指
⑤クモ指
⑥末端肥大
⑦腓腹筋の偽性肥大
進行性筋ジストロフィー症





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